女性医療ジャーナリストの増田美加さんによる連載。人生の基礎になる“健やかな体”を手に入れるための最新知識をお届けします
ペルシャ料理に多用されているのは香り高いハーブやフルーツ
数千年にわたって繁栄を続けてきたイラン。悠久の歴史のなかで長く「ペルシャ」と呼ばれてきたこの国では、多様な食文化が育まれました。イランの食文化は、ペルシャ絨毯のように彩り豊かで、さまざまな創意工夫が積み重ねられているといわれます。
長い歴史が育んだペルシャ料理には、ハーブやスパイス、フルーツが驚くほど多用されています。ほかの中東諸国に見られる香辛料たっぷりのスパイシーな味つけではなく、ハーブやフルーツ、香り中心のスパイスや塩を中心としたマイルドでナチュラルな味わいです。
たとえば、サフラン、デーツ、ミント、ザクロ、オレンジ、ヨーグルト、ローズの花びらなどは、米料理や肉料理などにたくさん使われています。
5000年以上前から食べられてきた女性のための果実とは?
今回ご紹介したいペルシャの美容食材は、2つあります。そのうちの1つが「神様の贈り物」と呼ばれているザクロです。
ザクロは9月~11月が旬の果物。皮は赤く、熟すと自然と裂けます。中にはルビーのように真っ赤で美しい果粒が詰まっています。
原産地イランでは5000年以上前から食用とされ、古代エジプトやギリシア、ローマの時代から薬用としても使われてきました。その宝石のような美しさと栄養価の高さから「女性の果実」と称され、美と健康に欠かせない食材として大切に受け継がれてきているそうです。
イラン中部の砂漠都市サーヴェは、ザクロが育つのに適した風土や気候のため、皮が薄く種の柔らかい良質なザクロを生産することができます。その人気は、ザクロの花が咲く段階で買い付けが終わってしまうほど。
イランでは美しくなりたければザクロを!
イランの街には、ザクロ専門のジューススタンドが数多くあり、「血液のスタンド」と呼ばれているほど。
毎年、ザクロの収穫時期には「ザクロフェスティバル」が行われ、街が賑わい、さまざまな品種のザクロが販売されます。
このフェスティバルには、独身女性が安産祈願のために、手にザクロを持って参加。また、妊婦さんへのお見舞いにはザクロをプレゼントする風習も。これは、ザクロにホルモンバランスを整える作用があるのでは、との言い伝えがあり、その作用が期待されているからです。
イラン女性は、「美しくなりたければザクロを食べなさい」と言われて育ちます。イラン女性は、ザクロをはじめ、ハーブやフルーツを食べることで、自然とインナーケアができるので、美しい女性が多いのかもしれません。
ザクロの栄養成分には、抗酸化物質であるポリフェノールの一種、アントシアニンを豊富に含んでいて、紫外線による活性酸素を除去し、血管を柔らかくする働きがあります。
またアントシアニンには、体内で発生する活性酸素の増加を抑える働きや、血行促進の効果が期待できると言われています。
ダマスクローズとバラ蒸留発祥の地ペルシャ
ペルシャ美容食材で、欠かしてはならないもう1つは、ローズウォーターです。
イラン北中央部のカシャーン地方は、自然のままオーガニック栽培されている原種のダマスクローズがある土地。昼夜の寒暖差が大きく、湿気の少ない高原の気候と澄んだ空気、肥沃な大地。バラを育てるのに最適な環境で、バラ栽培やローズウォーターの一大産地です。
一方、古代ペルシャ帝国の頃から栄えていた古都・シーラーズはバラ蒸留の発祥の地です。今も高品質のローズウォーターが並びます。
10世紀ごろから天然の「芳香蒸留水」を飲む文化のあるイランでは、バラの産地や濃度の異なる種類のローズウォーターが数多く売られていて、香りの好みや飲用するシーンによって飲み分けるほど浸透しています。
今もローズウォーターは、水で希釈したり、チャイに入れたり、料理に使ったり、さまざまな使い方で生活に欠かせないものになっています。
芳香蒸留水こそがローズウォーター
芳香蒸留水とは、ハーブウォーター、フローラルウォーターとも呼ばれ、ハーブ(芳香植物)の水蒸気蒸留によって、得られる芳香成分を含む水と定義されています(ガレノス薬学概論、1880年)。
天然水に香りを添加した飲料とは、異なるものです。
水蒸気蒸留法という製法が確立したのは、10世紀になってから。イランの哲学者で医学者のイブン・スィーナが発明し、ダマスクローズからローズウォーターとローズオイルを抽出することに成功しました。
それ以降、ローズウォーターは、抗菌作用や鎮静効果が強いとされ、イランの医療分野で使用されたほか、飲用やスキンケア、モスクのお清めなどに用いられてきました。
イランの農家が大切に育てたバラが開花するのは5月~6月。収穫は夜明け前。1枚1枚丁寧に手摘みして、瑞々しい花弁を天然水とともに釜に入れます。そこに水蒸気をあて、蒸気にします。
それを再び冷やして液体にすると、オイル層と液体層に分かれます。
オイル層は、ローズオイルとして用いられますが、この液体層こそがローズウォーターです。
美容、リラックス、デオドラント作用も期待!
ローズウォーターは、ペルシャの古代医療で、皮膚や胃腸の病気、目の炎症などの治療に用いられてきた歴史があります。また、メンタルの安定などにも重宝され、民間療法として使われてきました。
現在、香りの研究が進み、バラがもっている芳香成分にさまざまなリラックス作用、美容作用があることもわかってきています。
なかでもデオドラント作用は、科学的にも認められています。ローズウォーターに含まれる芳香成分、ゲラニオールは香気成分で、口から摂取すると血中に入り、汗として出てくるので、体臭や加齢臭の改善に役立ちます。
ゲラニオールには、加齢臭のもとであるノネナールを抑制する働きもあるといわれています。また、ゲラニオールとともに含まれているネロールという芳香成分には、気持ちをリラックスさせ、女性ホルモンの分泌を促す働きがあるともいわれています。
いかがでしょうか。悠久の歴史の国、ペルシャの美容食材、植物の力を試してみませんか?
ザクロとローズのパワーを取り入れてより美しく
Premium ザクロペースト
無農薬、有機栽培の農場で育てられ、品質を見極めるプロのザクロ職人が厳選したサーヴェ産マラス種のみを使用。イラン中部の砂漠都市サーヴェは、ザクロが育つのに適した風土や気候のため、皮が薄く種の柔らかい良質なザクロを生産できると言われている土地柄。
ザクロのなかで最も健康や美容に良い成分が含まれているのは、種の部分。貴重なマラス種のザクロを種や皮を含めて丸ごと細かく砕き、美容・栄養成分を損なわない低温濃縮製法でペースト状に。
水やお湯に溶かしてザクロティーとして、炭酸水で割ってカクテル風にも。甘さを活かしてジャムの代わりや、まろやかな酸味を活かして、サラダのドレッシングやお肉のソースとしても。白身魚との相性も良く、刺身につけて食べるのもおすすめ。100%イラン産ザクロのみ。保存料・添加物不使用。
PREMIUM ROSE WATER
高品質のイラン産ペルシャダマスクローズ100%の花弁から抽出した無添加の飲む芳香蒸留水。ローズウォーターの生産が始まったといわれるイラン南西部の山岳地域シーラーズで作られた、蒸留濃度30%の高濃度ローズウォーターで、まるでバラ園にいるような力強い香りが特徴。
ローズウォーターの生産が始まったといわれるイラン南西部の山岳地域シーラーズで無農薬、自然栽培されたペルシャダマスクローズ100%を手摘みし、山の雪解け水で水蒸気蒸留した芳香蒸留水。添加物を一切加えず、歴史あるバラ畑の香りとエネルギーをそのままにまるでバラ園にいるような力強い香りが特徴。ローズの芳香成分が、不安な気持ちをケアして幸福感を与えてくれる。汗の臭いが気になる季節にも。20~30倍に水などで希釈して飲む。炭酸水で割っても美味しい。
Beaute-Beaute(ボーテボーテ)
https://www.beaute-beaute.jp/
参考文献
「イラン古代医療を振り返って」(Dr. Mohsen Naseri 他, 2009)
「イランと東カリフ地の医療歴」(Siril Algoud, 1992)
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