女性医療ジャーナリストの増田美加さんによる連載。人生の基礎になる“健やかな体”を手に入れるための最新知識をお届けします。
日本の食文化は、発酵で培われました。しょう油、味噌、納豆、かつお節、みりん、日本酒、焼酎……。海外にもチーズ、ヨーグルト、ワインなどの発酵食品がありますが、日本の発酵食品の中でも、麹菌を使ったものは日本だけでしかつくれないもの。なぜなら麹菌は、日本の風土でしかできない“国菌”だからです。麹菌の発酵食品は、日本人の腸にも合っているはず。麹菌を使った食品で、美味しく腸を健やかにしませんか?
日本食を豊かにして、健康に良い発酵の力!
定住し農耕を基本とする生活で生まれた保存技術である「発酵」という日本文化は、生活の知恵として今も受け継がれています。
発酵による恩恵は、食材の保存性を高めるだけにとどまらず、健康にもよい作用が期待できます。さらに、味や香りを変化させることで、さまざまな美味しい食品をつくり出し、食生活を豊かにしています。
発酵食品に利用されている微生物は、大きくわけて3種類。カビ、バクテリア、酵母です。
麹菌、乳酸菌、酵母、3種類の微生物こそ発酵の源です!
カビは、約7万種類存在します。そのうちのひとつが「麹菌」。しょう油、みりん、味噌、日本酒、焼酎、甘酒が、国菌である麹菌です。
あとは、チーズなどの「アカカビ」、「シロカビ」も微生物のカビですね。
もうひとつの微生物、バクテリアも星の数ほどの種類があります。「納豆菌」「乳酸菌」「酢酸菌」がバクテリアです。
納豆菌からは、納豆。乳酸菌のうち動物性乳酸菌はヨーグルト。植物性乳酸菌は漬物、しょう油。酢酸菌は、酢、ナタデココなどです。
3つめの微生物、「酵母」も約500種類存在します。「パン酵母」からはパン。「ワイン酵母」はワイン。「しょう油酵母」はしょう油。ビール酵母はビールに。
ここで気づいた方もいるのでは? しょう油は、麹菌、乳酸菌、酵母、3種類の微生物のすべてが使われ、働いている食品なのです!
国菌である麹菌はもちろん、乳酸菌、酵母も働いているしょう油。ところが、今、しょう油よりさらに風味が濃厚で、複雑な味をもち、麹菌、乳酸菌、酵母の3種類が働く食品が話題です。
「しょう油もろみ」で美味しく健やかに
その食品は、「しょう油もろみ」。発酵と熟成を終えて搾る前の「しょう油もろみ」には、深い味わいと香りがあります。この美味しさは、しょう油蔵の造り手だけが知っていたことだったそう。
しょう油もろみは、しょう油をつくる過程で生まれます。しょう油は、大豆、小麦に麹菌を入れて麹をつくり、そこに食塩を加え、乳酸菌と酵母を加えたのが、もろみです。このもろみを熟成させたものが「しょう油もろみ」。しょう油もろみを圧搾し、火入れをして製せいしたものが、しょう油です。
しょう油としょう油もろみの違いは、何なのでしょうか?
しょう油もろみには、原料の固形分を分離させていないため、大豆や小麦のさまざまな成分が残っているため、風味が濃厚で、複雑な味わいがあるところが特長です。
日本には、まだ出会ったことのない美味しい食がたくさん眠っているのです。毎日美味しくいただけて、心と体を整えられたらいうことなし!です。
麹菌が働く 発酵調味料『しょうゆもろみ』の使い方
『しょうゆもろみ』は、大豆・小麦に麹菌を混ぜ合わせてつくったしょう油麹に、水と塩を加え、発酵熟成させたもの。『しょうゆもろみ』は、発酵熟成されたうま味をそのまま味わえます。しょう油蔵の造り手だけが知っていた美味しさを、一度味わってみたいものです。
『しょうゆもろみ』【コクとうま味】しょう油として搾られる前のしょう油もろみをそのまま。発酵熟成されたうま味が味わえます。肉にからめて焼いたり、煮魚、汁物にも。メニューの幅が広がります。
味噌汁に。味噌の代わりにもろみを使えば、だしにサッと溶けるので手軽に汁物が完成。時短になります。
『もろみ花椒』【香りひろがる】しょうゆもろみに、花椒とレモンの皮を加え、風味を楽しめる調味料。ひき肉を炒めて味付けに加えたり、焼いたお肉にかけたり、そのまま豆腐にかけても美味しい。
麻婆豆腐にも。もろみ花椒と豆板醤だけで、簡単で味が深まります。花椒のしびれる味わいがクセになります。
『白ごまもろみ』【味わい濃厚】しょうゆもろみをベースに、練りごまとすりごま、みりんが加わった調味料。練りごまのコクと、すりごまの香りが特徴。野菜にかけたり、焼いた肉にも。麺にからめても美味しい。
にんじんシリシリに。使う調味料は、白ごまもろみだけで完成できます。簡単に美味しい味が決まります。
発酵のある暮らし「こころダイニング」
https://cocoro-dining.co.jp/
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