恋愛、仕事、結婚に家族や病気…。30歳前後は、常にたくさんの悩みがつきまとい決断することも多いタイミングです。それぞれのテーマで、「する前」と「してから」を取材。今回は、榊原華帆さん(24歳/スペースエンターテイメント代表社員)に、起業について聞きました。
File.7 起業、する前としてから
2021年の2月に、24歳にして会社を立ち上げた榊原華帆さん。その会社「スペースエンターテイメント」では、「宇宙でエンターテイメントを興す」というプランを持ち、宇宙を舞台にした仕事をしている。
「今目指しているのは、アーティストの作品を宇宙に打ち上げ、地上で楽しめるアート衛星をさまざまな人に届ける事業です。宇宙をアートのキャンバスのようにしたいんです」
起業するまで2年間は、大手商社で働いていた。幼いころから『スタートレック』が大好きで宇宙とエンタメの仕事をしたいと思ってはいたものの、社会人になって最初のキャリアとしては家族が断固反対。そこでまずは商社で社会人としての力をつけることに。
「商社の仕事も好きだったけど、宇宙もエンタメも遠い世界の話になってしまった。これではいけないと、副業で宇宙系企業で働かせてもらいました。本業の仕事が終わってからなので体力的には確かに大変でしたが、好きなことができることが何よりうれしかった」
そのころから、人脈を着々と広げ、「宇宙でエンターテイメント」の構想を具体化するように。と同時に商社は1年で辞め、自分で会社を作りたい…という思いも募った。
「起業準備が整ったら辞めよう、とか考えていたら、あっという間に2年経ってしまい、その期間、商社の方も居心地がよくなっていたのも事実でした。起業してから起こったどんなことよりも、最初の一歩を踏み出すことがとにかく大変でした」
「準備が整わなくてもいい!」と一念発起して退職。そこから起業準備に本腰を入れる。
「まず何がしたいか、プランを明確にすること。ひとりで考えていても限界がありますから、多くの人に会いアドバイスをもらって回りました。宇宙企業に飛び込んだり、オンラインコミュニティに集まる人と知り合ったり」
「宇宙を遊び場に」という会社のテーマが決まり、投資家から援助も得て、起業。研究機関のエンジニアや大学教授の協力も決まった。
「もう“できなかった”ではすまされない。一刻も早く利益を出すことを目標に進めています。プレッシャーはありますが、やりたいことにすべての時間を使えるわけではなかった会社員時代の方がよっぽど大変でした。日曜日の昼過ぎからもう憂鬱で、本当の自分でいられる時間は1日に数時間しかなかったような気がします。でも起業してからは、自分さえ動けば、何でもできる。今は自分の時間が1日30時間あるような、そんな気持ちです」
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