快感を求めることは自分自身を慈しみ、向き合うことの第一歩。満たされるためのアプローチは、感じ方を深めるメンタルケアから、ボディメンテナンスにいたるまで多種多様。今回は、女性による、女性のための人「性」研究所として、女性向けのアダルトコンテンツを制作している「SILK LABO」のプロデューサー 牧野江里さんに話を伺った。
SILK LABOの作品で、女性の性生活をハッピーにしたい
「SILK LABO(シルクラボ)」は、2008年に設立された女性向けAVメーカーです。当時はまだ「女性向けAV」というジャンルが確立されておらず、従来のAVは女性の体と心に負担をかける内容やプレイも多く見られました。女性が傷ついたり悲しい思いをしたりすることを問題と考え、受け身になりがちな女性が「セックスを心から楽しむためにできることはないか?」という思いから女性スタッフが中心となって、女性のニーズに沿った動画を作成したプロジェクトが原型です。
2009年に雑誌『an・an』のセックス特集の付属DVDを制作し、以降は女性の声が反映された作品をリリースするメーカーとして、本格的に作品作りがスタートしました。
現在は、テイストの違う4つのレーベルを軸として、女性視聴者に求められるAVを制作しています。SILK LABOの作品は、「AVに興味があるけれど手が出せない」初心者の女性向けといった、実はピンポイントの層に向けて作っているんです。作品を観てくださるお客様の反応を見ていると、キスが始まってからがセックスではなく、ドラマ部分が前戯になっているんですよね。セックスにいたるまでの過程が前戯で女の人が胸キュンする=濡れることに通じる、ということなんだなと。
ファンの方のリクエストを見ていると、女性のファンタジーにかける熱量や妄想力は本当にすごいんですよ(笑)。何気なくネクタイを外すシーンが「エロいことをしている最中でもスマートさを忘れない一面にテクニックを感じてグッとくる」、時計を荒々しく外すシーンでは「ガツガツしている感じがいい」とか、すごく細かいところまで観てくださっていて(笑)。それがあるからこそセックスも良く見えてくるので、起爆材的な萌えポイントを点在させています。
AVを観たことがないというGINGER世代の皆さんには、ドラマを観るくらいのライトな気持ちでSILK LABOの作品を観ていただきたいですし、SILK LABOの作品が女性にとって自分の性や男性にされてうれしいことを知る糸口になれたらいいな、と思っています。
今推したいのは女性向けVR!リアルに抱かれる擬似体験を
現状、アダルトVR作品を観ている女性は、出演する男優のファンという人がほとんどだと思います。性的な行為だけでなく、好みの男性とイチャイチャできる、見つめ合えるという理由でVRを選んでくれているのかなと思います。
従来のAVは、基本的に第三者の視点から俯瞰して見るものですよね。だからこそ、何が起こってもどこか客観的な感覚になるんですけど、VRはそこを超えてくるんです。言うなれば、「リアルに抱かれている」という感覚しかなくて、男優さんが、自分めがけてズンズン迫ってくるわけですよ。一度体験していただけたら、その良さがよくわかると思います。
さらに、映像はもちろんですが、あたかもその場に居合わせているかのような臨場感を再現できる録音方式を採用しているので、音もすごくリアルなんです。耳元で囁かれるシーンでは、吐息が吹きかかる感覚や温度を実際に感じるという方もいるくらいです。
VRだからこそ、妊娠や病気の心配もなく、安全にエロに没入できる。パートナーを裏切ることなく、理想のイケメンに理想のシチュエーションで抱かれる気分をリアルに罪悪感なく味わえるなんて、ノーリスク・ハイリターンでなんだかお得な気持ちになりませんか(笑)? ぜひ一度試してみていただきたいです。
牧野江里(まきのえり)
SILK LABOプロデューサー。2008年に女性向けアダルトDVDメーカー「SILK LABO」を立ち上げる。現在はプロデューサーとして、制作、イベント等に携わるほか、「KINO」名義で自ら監督も務める。著書に『女子の保健体育』(宝島社)がある。