日々言葉について思考を巡らせている書画家・夏生嵐彩の連載「言葉の森」。日本語の新しい側面を発見しながら、一緒に探険してみましょう。
夏のような暑さが続くなか、各地でにわか雨が目立ってきましたね。今日はそんな雨をもたらす夏の雲の名前についてお話ししようと思います。
夏の雲と言えば、積乱雲ですよね。一度は乗って遊んでみたいと思えるくらいモクモクと立ち昇っているので、小さな頃、ドラえもんの雲固めガスが欲しくてたまりませんでした。同じ積乱雲でもそれぞれの名前から日本人が夏の雲をどのように見てきたかを知ることができます。
雷雲
その名のとおり、雷を発生する雲なので「かみなりぐも・らいうん」と呼びます。
「かみなり」の語源は「神鳴り」からきています。神様が鳴らすものと考えられていたのですね。これは日本に限ったことではなくギリシャ神話ではゼウス、ローマ神話ではユピテル(ジュピター)、バラモン教ではインドラが雷神であり最高神として崇められていました。
たしかに雷のインパクトは人知の至るところではありませんよね…。
かなとこ雲
積乱雲の中でも、雲が発生できる限界(対流圏と成層圏の境目)まで成長したものは、それ以上昇れないので、てっぺんが平らにひろがる「かなとこ雲」といいます。面白い形でずっと見ていたいくらいですが、その真下は、落雷やひょう、突風などが起こるキケンな状態なので、近くにある時はそんなに悠長には眺めてもいられないんですよ。
「かなとこ雲」の名前は、鍛造(たんぞう)で加熱した金属をのせてハンマーで叩くための作業台のことを「金床(かなとこ)」といって、その形に似ていたことからつけられています。
少し前に新海誠監督の『天気の子』が話題になりましたが、そこでもかなとこ雲が描かれています。見上げることしかできない「かなとこ」のてっぺんの部分はどんな世界が広がっているのか、想像するとワクワクしますね。
入道雲
一般的なモクモクとした大きな積乱雲を入道雲と呼んでいます。入道とはお坊さんのこと。
お坊さんといっても、ただのお坊さんではなく「大入道」という大きな妖怪のことで、それに似ているから「入道雲」と呼んだそうです。
私が小学生のとき「なんで入道なの?」と先生に聞いたら「お坊さんの頭に似ているからじゃない?」と説明され、どこが似ているのかさっぱりわからず「むしろ真逆のアフロヘアでは?」と思いました。文字的に「道に入る」だし、お坊さんの修行の道のりが厳しい様子でも表しているのかな?と、勝手に解釈していたのですが…。大きなお坊さんの妖怪だったんですね。
これらの他にも、積乱雲に巻雲というモヤモヤした薄い雲がついているものは「多毛雲」、ないものを「無毛雲」と呼んだりします。雲の名前って科学的名称と神話や文化に基づいた呼称とがたくさんあって、楽しいですよね!
「雲」の美文字ポイント
では、雲という字を書くときのポイントです!
1. 雨冠のたて線は長めに
2. 点は丸く、長く打つ
3. 二本の線の間隔は冠と同じ
4. 折れたあとは払い上げる
以上の4ヵ所に気をつけて書くと、整った印象に。ぜひ意識して書いてみてください。
夏生嵐彩の【言葉の森】をもっと読む。