日々言葉について思考を巡らせている書画家・夏生嵐彩の連載「言葉の森」。日本語の新しい側面を発見しながら、一緒に探険してみましょう。
こんにちは。雨の日が続いていますね。晴れの日でも蒸すようになってきました。ところで昔から何気なく「梅雨入りした」「梅雨が明けた」などと言っていますが、なぜ「梅」という字を使うのでしょうか? 梅の花が咲くのは初春のもっと寒い時期のはずですよね。
ジメジメ感満載の「バイウ」
由来は中国。もともとのこの季節の長雨のことを「黴雨(バイウ)」と呼んでいたそうです。
「黴」とは「カビ」のこと。いろんな物にカビが生えるようなジメジメした雨の季節っていう意味だったようですね。ものすごいイヤなイメージですよね…。
それは昔の人にとっても同じ感覚だったようで、のちになって同じ読みの「梅」の漢字があてられたようです。さらに6月というと、梅の実が収穫を迎える時期であることもあって、こちらの方が使われるようになってきました。
もちろん日本でも梅は和歌にもたくさん詠まれるくらい、なじみ深いものなのでこちらの漢字が普及したと考えられています(諸説あるようです)。でも不思議なことに、中国では「バイウ」(メイウ)と発音し、その漢字がそのまま伝わっているのに、日本では梅雨前線などの熟語で使うとき以外、「つゆ」と発音する方が一般的ですよね。いったいどうしてなのでしょう。
露?ついゆ??いろいろ説
日本語の語源は曖昧なものが多いのですが、「つゆ」と呼ぶようになったのにもたくさんの説があるようです。
・木々に滴る「露(つゆ)」から連想
・ものがカビてしまってダメになる…「費ゆ(つひゆ)」から転じて
・梅の実が完熟して地面に落ちて潰れている様子…「潰ゆ(つひゆ)」から転じて
・梅の実が熟すころ…実が「つはる」(=芽などが現れて芽ぐむ意味の古語)から転じて
などなど…。いったいどれが正しいのか分かりませんが、江戸時代にはすでに「梅雨」と書いて「つゆ」と呼んでいたようです。皆さんはどの説が好きですか? 私は木々のつゆ由来の説が日本らしくて好きです。
梅のもとの字は?
梅は「楳」という字から来ています。今でも「楳」は梅を意味しています。漫画家の楳図かずおさんの字もウメと読みますよね! この字は木に神への祈りの文を結んで神意をはかっていたという説もあり、そこから
・神意などを謀る(はかる)
・結婚のなかだちなどをする媒介役…媒(なかだち・なこうど)
という字にも変わっていきます。もうここまでくると梅関係ないですけどね…。
梅の美文字の秘訣
さてここまで梅の話ばかりしたので、梅って字をきれいに書くコツをお伝えいたしましょう!
1. 「へん」はいつでも左が長く!2:1の割合で。
2. つくりの一画目、ハライの頭が長く見えるように。
3. 「母」は縦長の平行四辺形に。
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