週末の過ごし方で、来週の気分はきっと変わる。だからこそ、観る映画にはちょっとこだわりたい。気分転換にも、インスピレーションにもなる一本をピックアップ。今回は、6月19日(金)公開の『ダイヤモンド 私たちの衣装工房』をお届け!
至高の一着のために

美しいものには、理由がある。そうわかっていても、その理由のほとんどは、表面的な美しさだけに目が向けられ、その背景は見過ごされてしまう。映画『ダイヤモンド 私たちの衣装工房』は、その“見過ごされている部分”を、丁寧に、愛情深くすくい上げていく。
舞台は1970年代のローマ。衣装工房で働く女性たちは、それぞれに事情や痛みを抱えながらも、ひと針ひと針、布と向き合っている。豪華なドレスの裏側にあるのは、きらめきなんかよりずっと地道な、やり直しと忍耐の積み重ね。この映画がユニークなのは、“完成された美”ではなく、“そこへ至る過程”にこそ光を当てているところ。針を進める手のリズムや、ミシンの振動、ビーズが転がる音――そういうディテールが、まるで登場人物たちの鼓動みたいに感じられてくる。

そしてこの映画でいちばん目が離せないのは、そんな作業をしている女性たちの生きざま。夫からのDVや引きこもりの子供――みんなそれぞれの事情を抱えていて、決して順風満帆ではない。けれど、どこか逞しくてパワフル。愚痴も言うし、転びそうにもなるけど、絆で結ばれた彼女たちは立ち直る。しかも、ずっと強いだけじゃないのがいい。ふと弱さを見せたり、感情が揺れたりする。その揺れ方がしなやかで、“人として生きてる感じ”がする。だからこそ、彼女たちがまたミシンに向かう姿に、妙に説得力があるのだと思う。
最後、完成された赤いドレスがスクリーンに現れたとき、その美しさに息をのむ。と同時に、その裏側にある時間や手仕事の精緻をもう知っている私たちは、美しさの舞台裏にも思いを馳せることになるのだ。1ミリのズレをやり直し、納得するまで手を止めない。――いわゆる“イタリアのものづくり”という言葉を、感覚ではなく実感として私たちに伝えてくれる一本。
【6月19日公開】『ダイヤモンド 私たちの衣装工房』

監督/フェルザン・オズペテク
原案/フェルザン・オズペテク カルロッタ・コッラーディ
出演/ルイーザ・ラニエリ ジャスミン・トリンカ ステファノ・アコルシ
配給/チャイルド・フィルム
※新宿ピカデリーほか全国順次公開
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