美術を面白おかしく、わかりやすく解説する“アートテラー”として活躍するとに~さんによる連載。読者の皆さまからの質問も随時受け付けています! 今回は、アートにまつわる漫画をご紹介します。
こんばんは。アートテラーのとに~です。先日、どうしても欲しくて、伊藤若冲の《鳥獣花木図屏風》をモチーフにしたシャツを購入してしまいました。さらに、その数日後、どうしても欲しくて、ジャクソン・ポロックの抽象画をモチーフにしたVANSのスニーカーを取り寄せてしまいました。探してみると、アート作品をデザインに取り入れたアイテムは意外とあるもの。アートは観るだけでなく、身につけても楽しめるものですね。
さてさて、本日は、芸術家を主人公にした漫画をご紹介したいと思います。芸術家の人生を知りたい! でも、文章を読むのは面倒くさい…そんな方にオススメの3作です。
あまりにギャグすぎる史実に驚き
《ダヴィデ像》や《最後の審判》といった名作の数々を残したルネサンスを代表する巨匠で、“神のごとき”と称されるミケランジェロ。その生涯を描いた漫画が『神のごときミケランジェロさん』です。
自他ともに認める天才芸術家であるものの、偏屈で自信家、仕事に一度のめりこむとほかのことがまったく見えなくなる。独身を貫き、88歳という当時としてはかなりの長寿を全うしたミケランジェロ。そんな、人としてはいろいろ問題のある彼の半生を、史実に基づきコメディタッチで描いた漫画です。紹介されているエピソードのなかには、あまりにギャグっぽくて、それはさすがにフィクションだろうと疑いたくなるものありますが、基本的にはほぼ史実通り。天才や神と何やらは紙一重なのです。
ミケランジェロの最大のライバルであるレオナルド・ダ・ヴィンチや、彼を慕う女性大好きラファエロなど、個性豊かなキャラも続々登場。彼らも魅力的に描かれていますが、やはりこの漫画を読むと、愛すべきめんどくさいオッサン、ミケランジェロのことが一番好きになります。イタリアに行って、彼の作品が観たくなること必至です。
史上最強の弟テオ
『月刊フラワーズ』(小学館)にて2012年10月号から2013年10月号まで連載された穂積さんによる漫画『さよならソルシエ』。「このマンガがすごい!」2014年オンナ編にて堂々1位に輝き、2016年にはミュージカル化もされています。
時は19世紀のパリ。主人公は、一流画廊「グーピル商会」の支店長テオドルス・ファン・ゴッホです。顧客のニーズを完璧に把握しており、行動を先読みすることから「ソルシエ(=魔法使い)のようだ」と一目置かれるも、ブルジョワジーを相手とする画廊の人間としては行動に品格がないと非難されています。そんな彼の兄は、まだ無名の画家フィンセント・ファン・ゴッホ。愛憎混じった複雑な感情を持ちながらも、兄を支えるテオドロス。
史実のイメージとは違って、テオドロスが俺様キャラ感強めなのは気になるところですが、画商で弟という立ち位置から見たフィンセント・ファン・ゴッホを描くストーリーは新鮮です! 実写化するなら、テオドロス役は佐藤健で決まりでしょう。
描かずにはいられない
昨年12月に出版された中原たか穂さんの『ジェリコー』。19世紀初頭の画家テオドール・ジェリコーの生涯を描いた漫画です。《民衆を導く自由の女神》で知られるあのドラクロワを弟子に持ち、ロマン主義、印象派などに先駆けて「近代絵画の先駆者」と称されたジェリコー。32歳という短い人生のなかで、彼が残した最大の代表作が《メドゥーズ号の筏》です。
1816年。西アフリカの植民地に向かっていたメデューズ号が、アフリカ西海岸のセネガル沖で海難事故に見舞われました。150名近い乗客が救命筏で逃れるも、生存したのは結局15名ほど。漂流中の筏では、生き残りをかけた人々が『バトルロワイアル』さながらの攻防を繰り広げたことがのちに判明し、当時、大スキャンダルとなりました。
絵とは崇高なもの。絵とは美しいもの。そんな時代に、ジェリコーはこの悲惨な事件を真っ向から描くことに決めました。金持ちの家に生まれ、暮らしに何一つ不自由がなく、その上、自他ともに認めるほどのイケメンだったジェリコー。そんな勝ち組人生だった彼が、なぜ、そんな絵を描こうと思ったのか?!
芸術家の“業”というものを痛感させられる作品です。
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