小説から漫画までジャンルを問わず、本好きとして知られる女優 多部未華子さんの連載「多部未華子がBOOKコンシェルジュ!」。読者からの本選びの相談や質問に応えて、オススメ本をご紹介します。
vol.37 もっと視野を広げたいです
《読者からのリクエスト》
テレビでニュースを見ているだけではわからない、今の世界について学ぶべきことってたくさんあると思います。しっかりインプットしてもっと視野を広げたい。これ読んでみて、という1冊があれば教えてほしい!
《多部さんのオススメは・・・》
「日本だったらこうなのにな」ではなく、様々な人の立場や環境を理解して、考えたい
世界で起きている出来事を知ることは、とても大切ですよね。私も出来る限りいろんな国の現状について興味を持とうとしたり、海外で報道のお仕事をしている友人に、気になるニュースの詳細を教えてもらったりしています。
いつも小学生レベルの疑問しか浮かばないのですが、気になることはたくさん質問して、自分のなかに落とし込んだり、自分なりの意見を持つようにすることを心がけています。ですが、その友人と話す度に、物事の考え方は細かく人それぞれだということ、宗教・文化・生活習慣や環境で捉え方が違ったりするので理解することに時間がかかり、なかなか自分のなかに落とし込めない問題が世界中にはたくさんあると感じます。
ブレイディみかこさんの著書『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は、1人の息子を育てながらも英国で保育士として働いていた、ご自身の経験に基づいたものです。
母親と元・底辺中学校に通う息子が感じる英国と日本の差、アイデンティティ、人種差別、格差。その全てが、一つの学校内で生まれる問題や議題であり、難しい言葉が並べられているわけでもなかったので、他人事ではないんだなと私でも身近に感じることができました。
ただ、アフリカや中東、アジアの一部の国では未だに行われている“FGM”と呼ばれる女性器切除の儀式を授業のなかで教えたり、階級・人種・女性差別のいじめがある学校という現実は、日本にずっと住み、周りのほとんどが日本人という環境で育った私からすると、驚きや衝撃もありました。そして、私にはまだまだ知らないことがあるし、知らなきゃいけないこともたくさんあるのだなと、当たり前ながらに痛感したのです。
ついつい私も「日本だったらこうなのにな。日本と違うな・・・」と日本の習慣をベースに読んでしまいます。ですが、それはあまり良いことではなく、一つの視点からだけではないいろんな声に耳を傾けたり、様々な人の立場や環境を理解して、世界中で起こっている問題について考えていかなければならないのだなと思います。
学校で感じた素直な疑問や率直な意見を口にするしっかり者の息子と、その母との会話にほっこりしながらも、自分も考えさせられる素敵な一冊でした。
今回のオススメ本はこちら!
優等生の「ぼく」が通い始めたのは、人種も貧富もごちゃまぜの、世界の縮図のような「元・底辺中学校」。生きていくうえで本当に大切なことは何か。私的で普遍的な親子の成長を綴った落涙必至のノンフィクション。
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