近年サンマの不漁をはじめ、天然物の出荷が鈍っていることに危惧し、大阪のスターシェフたちが持続可能な食を求めて立ち上がった。仏のシャンパンメーカー「テルモン」もそれに賛同。未来へ繋ぐ食の在り方とは?(ライター/和多亜希)
日本の食に未来を!スターシェフたちの想いとは?
乱獲による漁獲量の減少などにより、世界の水産資源の約35%が生物学的に持続不可能な状態に陥っている(2019年国連食糧農業機)。そこで、大阪で3ツ星を獲得している「柏屋」をはじめとする日本料理の料理人たちが中心となって「リレーションフィッシュ」という会社を立ち上げ、環境配慮型養殖魚及び未利用魚の活用という解決策を提案。環境配慮型というのは、養殖の際に天然の稚魚を使わないこと、魚粉の使用量削減を示す。
これまでの天然魚至上主義から脱却するべく啓発活動をはじめ、未利用魚を使用した魚料理の開発、大学などと共同で養殖魚介類の開発や支援を行うなど、環境保護と美味しい食文化の両立を目指して取り組んでいる。
アイゴは次世代のノドグロになり得る?
これまで国内の一部地域でしか食していなかったアイゴに注目。アイゴは海藻などをエサにする草食の魚で、和歌山や九州、沖縄など暖かい地域に生息。中東などではポピュラーな魚で、これまで足が早いことや品質維持にコストがかかるため、利用されていなかったという。そこで産地と連携して丁寧に下処理することで、生食可能な品質を実現。
今後は長崎産天然アイゴの漁獲高年間1トンを見込むほか、近畿大学の水産研究所と連携した養殖アイゴで入手ルートを確保。美味しいアイゴの魅力が伝われば、食の選択肢がひとつ加わる。生でも焼きものとしても美味しいことを料理人たちは料理を通して発信していく。
サスティナブルな取り組みを継続し、アクション!
アイゴだけでなく、漁獲量やサイズ、扱いやすさの観点から活用されていない未利用魚は数多くあるという。そうした魚を活用して選択肢を増やすことで、特定の魚にかかっていた負担を軽減。また味だけでなく、安全性や環境に配慮した養殖方法によって、養殖魚も大いに活用していくという。
先日行われた「サスティナブルなペアリング会」というイベントでも、アイゴはもちろん、未利用魚のウツボ、ASC認証(責任ある養殖により生産された水産物)を得たホタテ貝、8割が養殖で天然物はかなりの高級品だというクルマエビなどが使用された。
オーガニックシャンパンをリードするテルモンも参加
1912年創業の仏のシャンパンメゾン。職人による伝統的な製造での少量生産と、所有する葡萄畑のみならず周辺環境の保護にも重点を置くという徹底したサスティナビリティが信条。シャンパーニュ地方全体ではわずか4%なのに対し、テルモンでは収穫する葡萄畑の約83%をオーガニック認定受けているという(2022年)。
環境保護活動家であり、俳優のレオナルド・ディカプリオも2021年からテルモンに出資。日本では取り扱いを始めて3年目とはいえ、製造本数の約1割を出荷。葡萄そのもののピュアな味わいを一度は口にしたい。
テルモンは、リレーションフィッシュの取り組みに共感して活動に賛同。ペアリングとして、イベントに参加している。
私たち消費者もサスティナブルな行動を起こすとき!
リレーションフィッシュはまずは人脈を活かして、高級店から一般店へとアイゴの利用を推進していくそうだ。アイゴをきっかけに、生産者から料理人、消費者へと連携を広げ、具体的な行動を起こす仕組みを作って、サスティナブルな社会作りを進めていくという。
私たち消費者も天然の水産資源の枯渇のリスクに気づき、生態系や環境保護について高い意識を持ってASC認証マークがついた水産物を選ぶなど、環境に配慮したものを選ぶ目を持ちたい。まずはリレーションフィッシュのHPでイベントをチェックしたり、リレーションフィッシュのメンバーのお店でアイゴをいただくのもいいかもしれない。
リレーションフィッシュ
www.relationfish.com
※メンバー/日本料理 雲鶴、浪速割烹 㐂川、日本料理 子孫、法善寺 浅草、貴重、日本料理 柏屋