小説から漫画までジャンルを問わず、本好きとして知られる女優の多部未華子さん。読者からの本選びの相談や質問に応えて、オススメ本をご紹介します。
vol.10 物事を大きな視野で捉えることができたら。偉人の人生などに学びたいです
《読者からのリクエスト》
お給料が上がらないとか、婚活が面倒くさいとか・・・そんな日々の悩みを笑い飛ばせるような、どーんと構えた女になりたい。歴史に名を残す女性たちの生きざまを知って、器の大きい人間になりたいです。
《多部さんのオススメは・・・》
常識というものは、世界レベルで見れば、
あってないようなもの
ジャーナリストである池上彰さんがお茶の水女子大学の学生の前で行なった集中講義がそのまま文章としてまとめられている『世界を変えた10人の女性』。
ナイチンゲールやキュリー夫人、そして今もなおご活躍されている緒方貞子さんなど、さまざまな時代を生きた女性の人間像を池上彰さんがとても丁寧に講義しています。
小学生の時に、子供向けにわかりやすく書かれている偉人伝や漫画はよく学校の図書館で読んでいましたが、池上さんは彼女たちの素晴らしい功績だけでなく、生身の人間としてどのように人と関わり、周りの評価を受け止め、どのような決断をして生きていたのか、それぞれの時代背景とともに説明されていて非常にわかりやすく、とても勉強になりました。
私が幼い頃に子供向けの偉人伝を読んで、とても印象的だった女性はアンネ・フランクとナイチンゲールとマザー・テレサでした。アンネ・フランクみたいに過酷な状況下でも純真無垢な気持ちで生きたいと思ったり、ナイチンゲールみたいに人を救う人になりたいと思ったり、マザー・テレサのように神様のようなどこまでも広い心でさまざまな国の貧しい人と向き合いたいと幼心に思ったこともありました。今現在ひとつもできてないのですが・・・。
しかし、マザー・テレサもナイチンゲールも世界を変えた他の女性たちも、ただ単純に讃えられていただけではないことがこの本を読むとわかります。評価される裏では必ず批難もあるということです。
マザー・テレサは、“中絶は母親自身が手を下す殺人である”とノーベル平和賞授賞式のときに述べます。それにより、世界の女性が置かれている現状を理解していないと批難を浴びることになるのです。
たしかに、それぞれの国でそれぞれ違う価値観があります。文化も違えば環境も違う。どこかで許されることがどこかでは許されない。まかり通ることが通らない。常識というものは、世界レベルで見ればあってないようなものです。
マザー・テレサが素晴らしいことをしたということには変わりありませんが、批判的な意見が全くなかったわけではないということを知りました。そう考えると、どんなに偉人と呼ばれていても、1人の人間なんだなぁと思います。
池上さんは側面からではなく、多方面から物事を捉えて、考えさせようとする。
偉人について、小学生以来久しぶりに改めて知ることができて、私も生徒の1人になった気分で読み進めました。
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