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TIMELESSPERSON

2025.12.30

私もまた来年も頑張ります【いとうあさこ】

タレント・芸人として活躍するいとうあさこさんが日々のあれこれ、想いを綴るエッセイ。【連載「あぁ、だから一人はいやなんだ。】

働いて働いて2025

今年の「新語・流行語大賞」の年間大賞が“働いて働いて働いて働いて働いてまいります”でした。最近、すぐ疲れちゃう55歳。休めるものなら休もうぜ、と思いつつも、なんだかんだ今年も1年、働かせていただきました。見守っていただいた皆々様には心から感謝でございます。とは言え、わたくしなんぞは関西弁で言うところの“ぼちぼちでんな”なくらいですが、2025年に限らず人生、“働いて働いて”働き倒した女性が一人、今年4月にいなくなりました。大宮エリー。その彼女の“働いた”痕跡を見に、先日、大宮エリー回顧展「生きているということ」に行ってきました。この回顧展は、あと半年ちょっと生きていたら、迎えたはずの50歳の誕生日、11月21日から10日間、3カ所で行われました。私は一人、イヤホンを片耳だけ入れ、音楽と共に3カ所巡ることにしました。

まずは三宿にあるCAPSULE。ここはちょっと距離があるけれど、歩いていくことに。音楽はランダム再生。誰の曲がどの順番でかかるかはアプリ次第。オフコース「Yes-No」や欅坂46「二人セゾン」など、どこか物悲しい曲に包まれながら、CAPSULEのある建物に到着。しばらく見つからずウロウロしながらも、階段を一つ降りて、その階段の後ろっ側の一部屋にポスターを発見。こじんまりしたその部屋には、エリーの遺作となった襖絵や陶器が並べられていた。色鮮やかでかわいらしいけれど、襖絵で大きい作品というのもあってか、そのエネルギーの凄さよ。エリーが全身で描いているその姿が目に浮かぶようで、グッと胸にきた。

次は六本木へ。道中、中村一義「歓喜のうた」やTOMOVSKY「SKIP」など、劇団・山田ジャパンで使った名曲たちが流れてきた。命や生きることを考える歌詞。電車のドアに寄りかかって、まあ地下鉄なので何も風景はありませんが、ちょっとぼんやりと。小山登美夫ギャラリー六本木に到着。ここにはオーナー小山さんが選んだ作品が並んでいた。海や花など優しい作品が多い。間の通路みたいなところに、ドローイングが50枚ほど。ふと見ると、いくつか作品の下に小さな赤いシールが貼られている。あれ? もしかして買える? よく見ると一覧表みたいなファイルを見ながらご覧になっている方がいらして。受付のお姉さんに伺うと、販売しているとのこと。私もお値段の書かれたそのファイルを受け取り、絵を眺めた。直感でいこう。だいぶ迷いましたが、2つまで絞りました。一枚は「2つの手」。18.9㎝×13.1㎝の白い紙の真ん中に今にも繋ぎそうな、もしくは離れたばかりの? 手が2つ。もう一枚は「冷蔵庫と女」。同じ大きさの作品で、左下の方に冷蔵庫とそこに寄りかかる女性。なんかその女性がどこかエリーみたいでね。どっちにしようか迷って迷って、結局二枚とも購入。回顧展が終わって1か月後くらいに送られてくるとのこと。その手続き中、一人でいらしていた女性に声をかけられた。「絵、買われたんですか? いいなぁ……え!? いとうあさこさん!?」なんでしょうね、ああいう時、お互い“エリー仲間”みたいな感じがして。あっという間に馴染んで、しばらくお喋りした。聞くと彼女も私と同じで今日3カ所を巡る旅をしていて。ただ周り方は逆で最初代官山行って、六本木に来て、この後三宿に行くとのこと。エリーの魅力や、私が買った二枚のどこに惹かれたかなど話をして別れた。六本木駅に向かう時、何度もギャラリーに戻って彼女に「ちょっと飲みませんか?」と声かけようか迷った。あ、“飲む”はお茶でもお酒でも。なんか、もう少しお話したかったんですよね。何度も道を進んだり戻ったりしながら、結局そのまま次に向かった。

最後は中目黒。BGMは嵐「Happiness」やボーイズ・タウン・ギャング「君の瞳に恋してる」など。なんだか元気に進める曲ばかり。それにしても本当に不思議なのが、ランダムのはずなのにどの移動も何か共通するような空気感のプレイリストになる。エリーの仕業? おかげで前向きに坂を上り、ラスト、DAIKANYAMA GARAGEに到着。今回の3カ所の中ではグッズ販売もあって一番大規模。1階2階の展示には、絵はもちろんのこと、オブジェや写真、エリーの私物までズラリ。モニターもあって、バイオリンを弾いたり、歌っている姿などが流れていて。その前に置かれた椅子に座ってしばらく映像を見た。あとエリーの著書がずらーっと並んで読めるようになっていて。たくさんの方がそれぞれの場所で、立ったり座ったり、で本に目を通していた。

途中、2階に向かう階段にいろんな方から贈られたお花があった。以前エリーが亡くなってすぐ開催した、作品を展示したギャラリーでの「お別れ会」はお花NGだったので、なんとなく今回も出してなかったのですが、OKならば是非出したいと思い、グッズ売り場にいらしたスタッフさんにお声がけしてその旨を伝えると、エリーのスタッフさんの中の“長”っぽい、ちゃきちゃきした女性を呼んできてくださった。「いとうさん! お花ぜひ!」と。続けて「2階見た? エリーの部屋にあったエリーのアクセサリー、形見分け。持ってって!」と。親しい人が来た時にそうしているとのこと。なんでかわからないですが、堰を切ったようにエグエグ泣いてしまった。ずっと我慢してたんですけどね。大量のアクセサリーの中から小花をあしらった指輪と、イチゴをかぶったドクロのブローチをいただいた。どちらも身につけられて、そしてエリーっぽいもの。ありがとうございました。大切にします。後日、エリーがお花大好きだったから、あえて明るく華やかなお花を贈った。

先日、購入した二枚の絵が届いた。その前にポストに入っていた不在表に着払いとあったので、すっかり忘れていた私は、普段着払いにしないので、以前テレビで観た、異国から送られてきた謎の種、とかか? と。ただ荷物の処分は一度受け取ってからじゃないとダメらしく、再配達していただきまして。送付表を見たら六本木のギャラリーの名前が。そうだ、あの時、「送料は着払いで」って言われたっけ。恥ずかし。エリー、ごめんね。さあ、どこに飾ろうかな。

エリーの本当に多くの、しかも多方面にわたる作品たちにパワーもらい、私もまた来年も頑張ります。今年もありがとうございました。どうぞよいお年を。

【本日の乾杯】ニンジンのマリネ。年末でバタバタしている時はスーパーのお惣菜さまさま。特にこういう野菜系は嬉しい。まろやかな酸っぱさで疲労回復。

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:あぁ、だから一人はいやなんだ。
いとうあさこ

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