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2025.12.07

お風呂の正解|いつまで自分でせいいっぱい?【佐津川愛美】

自分と向き合ったり向き合えなかったり、ここまで頑張って生きてきた。30歳を過ぎてだいぶ楽にはなったけど、いまだに自分との付き合い方に悩む日もある。なるべく自分に優しくと思い始めた、役者、独身、女、一人が好き、でも人も好きな、俳優 佐津川愛美さんが綴るリアルな日常。【連載「いつまで自分でせいいっぱい?」】

その人が落ち着く流れがあればそれでいい

お風呂に入るたびに思う。お風呂の入り方って、どうやって身についたのだろう?何が正解なのだろう?

メイクを落として、湯船に浸かって、髪を洗って、身体を洗って、顔を洗う。気づいたら自分の中でいつもの順番ができていた。たぶん毎日の積み重ねの中で、体のほうが先に覚えてしまったのだと思う。洗う順番だって、勉強したわけでも暗記したわけでもないのに、一度染みつくと変わらない。不思議な習慣だ。

 

私の場合、1人でお風呂に入ることが、楽しみな時間となっている。洗う時間より、湯船に浸かっている時間のほうが圧倒的に長い。翌朝仕事がなければ、だいたい2〜3時間。元々長風呂派ではあったけれど、特にこの家に引っ越してきてから、安定して長くなった。湯船で動画を観たり、終わらない仕事をスマホでポチポチしたりしていると、あっという間に時間が経っている。それから体を洗う。確かテレビか何かで、湯船に浸かって汗をかいてからのほうが毛穴の汚れが落ちやすいと見たからこの順番になったはず。でも子どもの頃は、家族と住んでいたから、洗ってからでなければ、湯船には入れないルールだった。

一人暮らしになって、そのルールは守らなくてもよくなった。勿論、妹の家に泊まりに行くときは、ちゃんと洗ってから湯船に浸かるマナーは守っている。そして、そんな日はほぼ姪っ子めーたんとお風呂に入ることが多いので、1人とは別の楽しいがありつつ、だいたいがそろそろお風呂上がってーというママの声になるべく早く対応しなければならない使命がある。なかなか上がってくれない姪っ子めーたんを、上がる気持ちに導かなければいけない。となると、効率と計算が必要になるから、サッと上がる戦いが必要となる。

【喜】楽屋からの景色に開放感があるからここに来ると嬉しい。

1人のお風呂は、秘密基地のような感覚だ。温かさや浮遊感に癒されているのか、それとも秘密基地感が好きなのかはわからないが、私の生活の一部となっている以上、長風呂という癖は簡単には抜けない。

習慣って、誰かに言われて身につくものより、自分が心地よいと思ったことのほうが長持ちする。お風呂での洗い方が自然に染みつくのと同じように、「長く浸かる」という私の習慣も、気づかないうちに体に定着してしまったのだろう。
お風呂の入り方の正解は、きっと人の数だけある。

短時間で出るのが好きな人もいれば、私みたいに長すぎる人もきっと居る。洗う順番に正しいも間違いもなくて、その人が落ち着く流れがあればそれでいいはず。

今日も湯船に浸かりながら仕事をしていたら、気づけば2時間。そろそろ眠気が近づいてきた。私のお風呂から上がる合図は、「眠気がきた」瞬間なのだ。

この感覚的な基準が、私の入浴ルールの中心にある。時計でもなく、温度計でもなく、自分の体のスイッチで決める。多分それが出来る唯一の場なのかもしれない。普段は家でも外でも、仕事が多すぎて何かに追われている。お風呂でも仕事をするけれど、なぜか、焦る気持ちが抑えられる気がするのだ。だからお風呂は私にとって、すごく重要なのだろう。

もしかすると、数年後の自分は違う入り方をしているかもしれない。もっと短くなる日も来るかもしれないし、逆に今よりさらに長く浮かんでいる未来もあるかもしれない。けれど、「自分が心地よいと思う入り方を選ぶ」という軸だけは、きっと変わらず残る。

今の私のお風呂の正解は、多分、これで合っている。

そしてその正解は、これからも私と一緒にゆっくり形を変えていくものなのだと思う。

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:いつまで自分でせいいっぱい?
佐津川愛美

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