連載『プロジェクトS』 コクヨの新スポット「THINK OF THINGS」が提案する、暮らしのヒントとは?(前編)

商品やサービスを通じてSpark(ときめき&ひらめき)を発信している、働く女性をクローズ アップする連載『 プロジェクトS 』。“S”はもちろん“Spark”の頭文字です。商品制作の舞台裏や仕事に対する想いなどをインタビューしていきます。企画や研究開発に携わる同世代の彼女たちから、仕事を楽しむヒントやコツが得られるはず!
今回は、オフィス家具・文具メーカーとしておなじみのコクヨ株式会社のおふたりをインタビュー。話題のショップ&カフェ「THINK OF THINGS」のプロジェクトメンバーである、北川真衣さん(写真右)と三上由貴さん(写真左)にお話を伺いました。コクヨの直営店誕生の秘話に迫ります。

撮影/山越翔太郎

自分らしさを積極的に表現できる時代だから…!

ショップ&カフェ「THINK OF THINGS」とは?

5月末に千駄ヶ谷にオープンしたコクヨ直営の複合施設。開放的なエントランスを抜けると、1階は広々としたカフェスペースとショップスペース、そして奥には100年もののオリーブの木が植えられたパティオが。ショップはオリジナル商品とセレクト商品で構成され、カフェは三軒茶屋で焙煎を行うコーヒーロースター<OBSCURA COFFEE ROASTERS>のプロデュース。2階には多目的スペースを設け、3階にはオフィスを併設。平日は近隣の人々が集う憩いの場所になり、休日は噂を聞きつけた文房具ファンが遠方からも訪れ、観光客も多い千駄ヶ谷の新名所。

―早速ですが、「THINK OF THINGS」の誕生の経緯(いきさつ)とコンセプトを教えていただけますか?

〈 三上 〉今年でコクヨは創業112年になりますが、長年オフィス用品や文具を手がけてきました。そんななかで今感じているのが、日々の生活と働くシーンの境界が曖昧になってきているということです。そこで私たちもさらに視野を広げて、日々の“暮らし”に対しての提案をしなければいけないと感じたのがきっかけです。そのためにお客様と直接コミュニケーションが取れる場所の必要性を感じて、それがこのショップの誕生へとつながりました。

〈 北川 〉そんな流れで「ワークとライフの境界線を超える」がコンセプトになりました。制服やオフィス雑貨のように、かつては会社支給だったファッションやモノも、プライベートとの境目が緩くなって、だいぶ自由になりましたよね。その変化をなるべくポジティブに捉えて見渡してみると、自分らしさを積極的に表現できる時代になってきているといえます。そういった点を踏まえ、業務用でも生活と仕事の双方で、違和感なく取り入れられるアイテムで構成することを考えました。

―このプロジェクト立ち上げの話を聞いたとき、驚きはありましたか?

〈 北川 〉最初に話を聞いて、まずは驚きよりもすごくやりたい!と思いました。お得意先やお客様に対してさまざまなアウトプットを試行錯誤するなかで、ちょうど自分の引き出し不足を感じていた時期だったので。これは何かを得られるチャンスだと思い、自分から手を上げました。

〈 三上 〉私の担当は文具の売り場提案なのですが、このプロジェクトは家具部門のメンバーと一緒に取り組むと聞いて、コクヨの持ち合わせている技術をかけ算したらどんなものが生まれるかをみてみたくて。考えただけで、アドレナリンが出たといいますか(笑)。未知数のところに挑むので、すごくワクワクしましたね。

考えるきっかけが生まれる場所

―「THINK OF THINGS」というネーミングはどのように決まったのでしょうか?

〈 三上 〉まずはコクヨとして何をしたいのか、何ができるのかをとことん話し合い、コンセプトを練り上げていきました。その上で、ショップコンセプトを体現できる名前に辿り着くまでに、半年以上悩みました。

〈 北川 〉「THINK OF THINGS」には、“モノやコトについて考えられる場所“という意味があります。ただ雑貨を扱う店ということだけではなく、自分らしさを考えるきっかけの場所でありたいと。“考える場所”というのは、コンセプトにも合致するのではないかという話になりました。

THINK ABOUTではなく、あえてTHINK OFにすることによって、真面目な感じがコクヨらしさを醸し出せているのではないかと思っています。

〈 三上 〉物販や飲食の館というだけでなく、お客さまと出会う“場所”らしい余白を残すようなネーミングにしようということも意識しました。お客様にとって考える場であり、コクヨにとっても考える場でありたいと思っています。

―昨年6月にコンセプトが出てからオープンまで約1年、スピーディに進めることも必要だったようですね。

〈 北川 〉そうなんです。でも実は…スタートして半年は、10名ちょっとのプロジェクトメンバーのなかで共通の思いはあるものの、進め方や進む方向について、なかなかバシッと結論が出ませんでした。でもオリジナル商品を制作するとなると、かなり時間が必要です。商品づくりの部分は大切なので、そこで時間に追われるわけにはいかない。どのタイミングで何をどう進めるかという問題にも直面しました。

オープンまでにここまでしなくてはいけないから、逆算してこなしていく、というわけにはいきません。あくまでもショップオープンはスタートでしかないので、自分たちが出来ることをどう着地させて、そこからどう継続していくかまでを最初から考えておかないと、ということで。

〈 三上 〉「コクヨがこういうものを作ります」ということに対するお客様の期待と、このプロジェクトの行く末を見守る社員の期待があります。それぞれに対して、期待を超えるアウトプットがオープン日までに出来ているか。何をもって成功といえるのかが、正直悩みどころでしたね。

ショップオープンを迎え、ここからがスタート

―完成までに苦労されたこと、そしてどんなところに喜びを感じましたか?

〈 北川 〉苦労というよりも、悩めるって幸せだなと思いました。こういう場所や新しいことにチャレンジできる機会をもらえて、普段なら顔を合わせることのないようなメンバーからの刺激ももらえて、不安はあるものの、嬉しさのほうが大きかったです。

プレオープン日のレセプションパーティーは、店内がぎゅうぎゅうになるほど多くの人に来ていただきました。その光景を見て、オープン前にも関わらずテンションが上がってしまって(笑)。「私たち以外の皆さんも楽しんでくださっている!」と肌で感じた瞬間、嬉しい気持ちがこみ上げてきました。

〈 三上 〉レセプションパーティーの時に初めて「この仮説は正しかったのかもしれない」と思いました。パーティーが終わった後、メンバーで乾杯した瞬間が最高でした。

ずっとコクヨが提供し続けてきたモノと、オリジナル品やセレクト品の融合を好意的に受け止めていただいた感覚があり「今までやってきたことを否定するわけではなく、その上に地に足が着いた状態で新たなステップを踏んだよね」という評価をいただけたことが、安堵と同時に嬉しかったです。でもまた翌日から、次のことを考えねばと不安にかられました(笑)。

―オープンから少し経った現在はどのような心境ですか

〈 北川 〉個人的には、お客様がSNSで拡散していただいているのを見かけると、すごく嬉しいですね。仕事としては、次にまた来店いただいた時に“何かが変わっている!”という喜びを感じていただきたいので、引き続き準備をしていかないと!という感じです。

〈 三上 〉お客様が楽しんでいただいている姿は、とにかく素直に嬉しいです。自分が思っている以上にコクヨに対してご期待いただいているんだなと感じています。ですが、ゴール感を味わったのはレセプションパーティーの直後だけで、本当は“スタートを切った”という感覚ですね。お店は鮮度が命ですし、そもそも物販だけが目的ではないので、お客様と融合して何かを生み出していくという大きな目的のためには、立ち止まっていられません。

これまで培ってきた技術を新たな形へ

―ショップスペースには、魅力的なオリジナル商品が並んでいますよね。

〈 三上 〉ミーティングを重ねて最終的に行きついたのは、コクヨが今まで作ってきたスタンダードを否定する必要はないし、それをきちんとふまえた上で、新たなモノ・コトを検証していこうということでした。約1万点の文具や家具が掲載されている総合カタログを見直して、測量野帳のようにそのまま使えるもの、あるいは現代の暮らしに合うように仕立て直したものもあります。文具と家具の技術を融合するというコンセプトで、紙と鉄を使用したボックスのシリーズも生まれました。

あまりこちらでアイテムの用途を決めつけず、良い意味で曖昧な状態で提供して、お客様の価値観で使い方を見つけていただくのが理想です。それから、ある用途に作られたものだけど、別の形で暮らしに取り入れられるのではないかという提案も出来たら、と考えています。その一方でロングセラー商品は社会が変わっても支持されるものだと思うので、それはそれで今ある良さをちゃんと見せていきたいですね。

―何かと何かを組み合わせるってまさに実験ですね!

〈 三上 〉見立てをお客さまに委ねることもあります。小学校の図工室で使用されている椅子は、お客様が最終加工をできる要素を残しています。また、クリップのつめ放題のように、遊び心のある商品もあります。

―店内の商品ラインナップはどのように決めていますか?

〈 北川 〉今後は、より季節感を意識しないといけないなと思っているところです。たとえば毎日ショップを覗いてくださるお客様にとっても、来るたびに居心地が良いと感じる空間を目指したい。毎回同じものが並んでいるという安心感も良いのですが、お店に置いてあるアイテムで刺激も与えたいですね。

〈 三上 〉コクヨオリジナル品だけでなく、「ワークとライフの境界を超える」というコンセプトを強めたり、補強してくれるアイテムもセレクトしています。例えばハリオさんの理科学用のビーカーは、もともとは実験用ですが、ショットグラスとして応用したり、コーヒーのドリップに使用する方もいたり。そんな新しい広がりが、とても面白いですよね。

働く女性におすすめのアイテムを教えていただきました!

●測量野帳

測量法の施行により、ニーズが増大した測量業務の現場の声を反映させて、1959年コクヨが開発した商品。立ったままでも筆記がしやすい厚手の樹脂製表紙、水や汚れに強い耐水性のある中紙など測量士の要望を詰め込んだ小さめのノート。

〈 三上 〉もともとは測量士向けですが、プロユースにも生活シーンでも使える商品で、これはまさしくショップコンセプトを体現するアイテムだと思います。

このほどよい厚さや機能性は観察ノートやスケッチブックとしても評価されていて、最近ではこの手帳の愛用者は“ヤチョラー”と呼ばれているんですよ。携帯に便利なサイズなので、いつも持ち歩いて気軽にアイデアを書き留められるのがすごくいいんです。

グリーン ¥200、レッド・ホワイト・ブルー 各¥380、オリーブ・ベージュ 各¥540(すべて税抜)

―取材の際に便利そうです!

〈 三上 〉まさしく編集者の方にも使用していただいています。愛用者のひとりである、柴田隆寛さんには、この店舗だけの限定カラーのオリーブとベージュを考案していただきました。

●fourrouf(フォアルボル) HOLDALLシリーズのポーチ

セレクト商品のひとつ。薄いコットン生地に特殊なのりでコーティング加工した「ペーパークロス」で、雑貨やバッグなどオリジナルプロダクトを展開。

〈 北川 〉使い始めは張りと硬さがありますが、使ううちに少しずつ馴染んできて、色が浅くなったり、くしゃっとしたシワが出てきて、いいかんじの風合いに。軽くて、丈夫なので、社内移動のときなど持ち運びにも便利です。

ポーチ ¥2,500(税抜)

●ANYBOX

店舗開発のテーマのひとつ、「BRIDGE(異分野の組み合わせ)」を形にした、THINK OF THINGSオリジナルシリーズのひとつ「ANY BOX」。ベースは紙製のファイルボックスで取手に金属を採用。

〈 三上 〉持ち手が付いたタイプは、会議室への移動時もPCなどを入れてこのまま持ち運べるので便利です。色の組み合わせも選べます。オプションで取手以外にフレームをつけると収納家具としても活用できるんです!

〈右〉ANY BOX TROLLEY L set ¥54,300(税抜き)〜

〈中・左〉ANY BOX TROLLEY S set ¥32,800(税抜)〜

物語のあるモノづくり

―商品すべてにしっかりとしたストーリーがありますね!

〈 北川 〉語れるものでないと、セレクトするに至らないというか。私たち自身もその商品で心が動くかどうかも重要でした。

〈 三上 〉このアイテムは新しいショップのコンセプトに合致するかどうか、商品リストを何回チェックしたことか(笑)。30回くらいは見返したと思います。かつては会社から支給された文具を当たり前のように使っていた、という時代でしたが、今はオフィスでも自分が好きなものに囲まれて働きたいよねという意識が高まっていますので、その流れを根底に置きつつ、商品を選びました。


キャンパスノートのように、幼少期も大人になってからも、私たちの生活に常に寄り添ってくれるコクヨの商品たち。これまでの誠実なモノづくりが新しい形で表現された場所「THINK OF THINGS」は、私たちの暮らしに新たな発見を与えてくれます。

「社名を前面に打ち出していないので、コクヨと知らずに来店されるお客様も多いと思います」と話す北川さんと三上さん。ブランド名がなくても、誰かの目に止まる魅力がある。それこそ、長い歴史のなかで、コクヨというブランドが“人の心を動かす”アイテムを着実に育ててきた証なのかもしれません。

次回は新プロジェクトに挑んだおふたりに、お仕事ライフをお聞きします!

『THINK OF THINGS』
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-62-1
営業時間:10:00-20:00
定休日:第3水曜日
http://think-of-things.com/

GINGERweb取材班
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