スタイリスト青木貴子さんによる、素敵な人に一歩近づく生き方指南。こんな時代だからこそ、前を向いて歩いていくためのヒントをお届けします。
何かに憧れる気持ちが、私を育む

とある雑誌から「これが似合う大人になりたい! 憧れアイテムと年月を重ねる」というテーマで取材を受けました。大人になったら欲しいと思っていたもの、大人になる前に憧れていたものなどについて、またそれは現在手に入れていますか?——そんなお話を伺わせて頂きたいという趣旨でした。んーーっと、若い頃の自分の記憶にフォーカスを当ててそれを思い起こそうと試みた。私は何に憧れていたんだったっけ…。
トレンチコート、赤い口紅とかそういったアイテムは10代の頃はなんだか大人の象徴のような気がしていた。でもそれらは大人になりきる前に手に入れてしまったし(いま思うとトレンチなんて当時はぜったい格好良く着こなせてなかったように思うけど)、いつの間にか憧れというよりかはすっかり日常のものになってしまっていた。そういう意味ではトレンチも赤い口紅も(いまは滅多につけないけど)それらが似合う大人にはなっているのかも。
そういえばダイヤのピアスも綺麗なレースアップの靴もいつかは欲しいって思っていた。憧れていたものって手に入れたら日常に溶けこんんじゃうから何に憧れていたのかがわからなくなりがち。これはなんだかトキメキが減ったみたいでつまらないなぁ。だからいつまでも新しく「似合うようになりたいもの」は探し行ったほうがキラキラと楽しい気分になれる!ってあらためて思いました。
今回私が憧れアイテムとして紹介したのは和包丁。実はずーっと魚を捌きたいって思っていたのです。お料理は好きでほぼ毎日何かしら作りますが、良い丸魚(丸ごと一匹)がなかなか手に入りにくかったこともあり、ずっとそれこそ憧れていました。魚をなんでも捌けるって格好いいなって。そこで一念発起してすし学校に入学。一年間魚と向き合いました(本業はあくまでスタイリストなので仕事しながらです、笑)。そこで和包丁を扱えるようになり、いまではちゃんと研いだりも出来るように。
鋼の包丁って、ちゃんと扱わないと使っている側から錆が出てくるんです! さっき切って、ちょっと置いていたら「え?もう?!」ってスピードで。だからとっても丁寧に仕事をする癖がつきました。丁寧ってワードも私のなかでは大人っぽいあり方だなって思い、和包丁をちゃんと扱えるのは大人ならではって勝手に思っています(笑)。
そもそも大人っていうのは何なんじゃろとあらためて今回取材を受けて考えました。一般的には成人(いまは18歳)、これは法律上の大人という区切り。あとは経済的に自立している、自分の行動に責任を持っている、多様な価値観を受け入れられる、などなどが大人の定義って感じのようです。子供の頃、同級生とかで何があってもまったく動じないクールな子がいて、彼女は大人っぽいなぁって思ってました。他者を受け入れ、または受け流せるのって精神的に成熟している=大人なのかな。だから本当は年齢では大人かどうかって判断できないですよね、歳とれば大人になれるってわけでもないしシチュエーションによっても変わっちゃう気がする。
私自身は小さい頃に思っていた大人にはなれていないような気がしますが、きっとみんな大人にはなりきらないような気がします。たとえば親も結構頑張って親でいてくれてたんだなって、ある年齢を越えてからは思うように。親の役割を担ってくれていることには感謝の気持ちでいっぱいです。
自分が憧れていたことを思い起こしたり、大人とは何ぞやって考えたり、たまに問うてみるのは良いことだなって思いました。忘れていたキラキラの感情を思い出したり、やりたいことが新たに見つかったり。自分との答え合わせをしてみたら、意外と大人になってて素敵じゃんってところを見つけられたり。なんだか楽しい機会でした。
大人になるって楽しいことなんだなって。きっとそう思えるのはいま現在もいろいろなことを経験して積み上げていってるのと、いまも何かを欲してるからなのかもと急にいまの自分の子供っぽさを愛おしく思えたり。
さてあなたが「これが似合うようになりたいと、憧れていたもの」は何ですか?

