2023年2月現在〜2023年3月上旬公開のおすすめ映画を映画ライター渥美志保さんが3つご紹介!
価値観が逆転した社会は理想の社会か?
トップモデルのヤヤと落ち目のカールはモデルのカップルだ。彼女のショーに同行したカールは、「今日は驕る」というヤヤに連れられて高級レストランへ。だがいざ会計となるとヤヤは現金も使えるカードも持っておらず、仕方なくカードを取り出したカールに「ごちそうさま」と微笑み財布をしまう。上手く操られたカールはひとこと言わずにはおれず――その夜の喧嘩は絶妙な前フリだ。本題は二人が招待された豪華クルーズから始まる。
強者はその力で弱者を操りながら、「それを選んだのはあなた」とうそぶく。例えば船の乗客の大富豪は、格差社会を嘆く風で「乗組員も優雅に楽しむべき!」と命じれば、クルーたちは金のために喜んで海に飛び込む。映画はそんな強者たちの力――金、権力、美しさ、性別、人種――を痛烈に皮肉った後、価値観の逆転を用意する。だが既存のシステムが崩壊しても、そこに新たな強者が生まれるだけかもしれないし、「立場が変わって心を入れ替えた」風の人間を信じていいのかもわからない。映画のラストであなたは何を選ぶだろうか。
『逆転のトライアングル』
監督・脚本/リューベン・オストルンド
出演/ハリス・ディキンソン、チャールビ・ディーン、ウディ・ハレルソンほか
2月23日(木・祝)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
https://gaga.ne.jp/triangle/
女子の欲望を叶える伝説の男性ストリッパー
全てを失いバーテンダーとして働く、元ストリップダンサーのマイクは、資産家の女性マックスと出会い、ロンドンで人生をかけた最後の挑戦をすることに。チャニング・テイタムの自伝的大ヒット作『マジック・マイク』の最終章は、同作品の舞台化の実話をベースに恋とサクセスを描く。ファッション企業「ケリング」の社長夫人でハリウッドのフェミニストのサルマ・ハエックが、女子の全欲望をセクシー&パワフルに体現し、圧倒的存在感。チャニングを筆頭にダンスシーンのカッコよさは言わずもがな。女子グループで最高に盛り上がれる作品。
『マジック・マイク ラストダンス』
監督/スティーブン・ソダーバーグ
出演/チャニング・テイタム、サルマ・ハエックほか
3月3日(金)全国公開
https://wwws.warnerbros.co.jp/magicmike-lastdance/
とにかく爆笑したい奇想天外の大娯楽SF
さまざまな家族問題を抱えながら、目下は経営するランドリーの納税問題に頭を悩ませる中華系移民のエヴリン。ところが訪れた国税庁で突如気が遠くなり……。無数のマルチバースを舞台に、強烈な力で全宇宙を混沌に陥れんとするジョブ・トゥパキと、どうやら救世主だったらしい普通のおばちゃんエヴリンのバトルを、奇想天外な映像と爆笑に次ぐ爆笑で描くSFエンタテインメント。ホームドラマだったんか!というラストにはうっかり泣かされたりもする。『クレイジー・リッチ!』の怖いお母さん、ミシェル・ヨー本来のカッコいいアクションも必見!
『エブリシング・ エブリウェア・オール・アット・ワンス』
監督/ダニエルズ
出演/ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン、ジェイミー・リー・カーティスほか
3月3日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
https://gaga.ne.jp/eeaao/