2022年12月後半〜2023年1月公開のおすすめ映画を映画ライター渥美志保さんが3つご紹介!
巨大団地に住む猫250匹の引っ越し大作戦
1980年当時、アジア最大規模だったソウルのトゥンチョン団地。再開発のため取り壊し目前のその場所に、棲み着いていた250匹の猫の運命は!? ドキュメンタリー映画が追うのは「猫たちの安全な移住」のために立ち上がった「トゥンチョン猫の会」の活動だ。猫たちを個体識別し、必要なら去勢し、里親を探し……だが果たしてそれが猫たちの幸せなのか? 時に引っ掻かれ時に癒やされながら、猫のために奔走する人間たちの姿は、おかしいやら切ないやら。ぷくぷくもふもふな個性豊かな野良猫たちの、愛嬌たっぷりだけど気まぐれで自由な姿も魅力的。
『猫たちのアパートメント』
監督/チョン・ジェウン
出演/遁村(トゥンチョン)団地に暮らす猫たち、キム・ポド、イ・インギュ
2022年12月23日(金)渋谷・ユーロスペース、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか公開
http://www.pan-dora.co.jp/catsapartment/
「#MeToo」の世界を作った二人の女性記者
10年前まで、性暴力被害を実名告発する女性はほとんどいなかった。「女が悪い」と非難されるのがオチだったからだ。そういう状況はなくなってはいないが、今は被害者への共感を示し支える人々もいる。潮目が変わったのは2017年、ハリウッドの超大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインによる数多の性暴力被害が明るみに出たこと。映画は、最初にそれを記事にした二人の女性記者、ジョディ・カンターとミーガン・トゥーイーの粘り強い調査を描いてゆく。
どこの国でも同じだが、権力者の悪行は明らかにバレバレであっても闇に葬られがちだ。それを見過ごしてきた積み重ねが今の世の中のダメさに繋がっている。逆に世界が女性にとって以前よりちょっとはマシになっていたとすれば、それと対峙し戦った人たちがいたから、そして被害者たちの連帯があったからだ。キャリー・マリガンとゾーイ・カザンが演じる主人公の二人が、何しろカッコよすぎる。悲観も楽観もせず、だが屈しない。どれもこれも若い世代の女子にこそ見てもらいたい。
『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』
監督/マリア・シュラーダー
出演/キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン、パトリシア・クラークソンほか
2023年1月13日(金) 全国公開
https://shesaid-sononawoabake.jp/
映画が終わり、本当の人生が始まる
映画が大好きな少年サマイは、忍び込んだ劇場で映写技師ファザルと出会う。母親の手作り弁当と引き換えに映写室で映画を見るようになった彼は、やがて映画作りを夢見るように。空き箱から覗く世界をスクリーンに見立てた映像作り、劇場から拝借したフィルムを太陽光で映写し、音のない映像に家にあるもので音響をつけ……サマイのアイディア満点の「映画作り」が楽しすぎ。映画館でかかるインド映画をはじめ、あらゆるものがキラキラして色とりどり。前向きにまっすぐに夢に向かう少年の強さ、彼の背中を押す家族や仲間たちの姿が感動的な1本。
『エンドロールのつづき』
監督/パン・ナリン
出演/バヴィン・ラバリ、バヴェーシュ・シュリマリほか
2023年1月20日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋ほか全国公開
https://movies.shochiku.co.jp/endroll/