GINGER2022年8月号に登場した中山優馬さんの主演舞台『ダディ』が東京グローブ座にて開幕。ニューヨーク、ロンドンで上演された話題作が日本に初上陸し、日本版として進化を遂げる。中山優馬さん、大場泰正さん、原嘉孝さん、前島亜美さんのキャスト4名と、作者のジェレミー・O・ハリス氏が出席した囲み取材を含む、ゲネプロの様子をお届け。
「誰もが感じる痛み、飢え、愛が舞台上に息づいている」カンパニー全員で丁寧に咀嚼した刺激的な作品
無邪気でピュアな若いアフリカ系アメリカ人のアーティスト・フランクリンを演じる中山さんと、大場さん演じるロサンゼルスに住む包容力のある初老アートコレクター・アンドレが出会い、熱い関係を築くところから物語がスタート。
人種、宗教、同性愛といったテーマを背景に描かれた作品で、好きな人に向ける愛のあり方、誰もが一度は経験したことのある痛みなど、共感できるポイントは多い。「セクシュアリティ的な問題に取り組んだ感じは全くなくて、自分が欲しい愛はどこにあるかというアプローチを今も続けている。自分が好きな相手にどう思われたいか、何をしたいかというところですね」と中山さんも語った。強いメッセージ性に溢れた約2時間半の上演は、とても充実している。
生き生きとした演技の裏に、セリフに潜む意味や背景を探り続けた“約2週間の本読み”が存在
繊細な作品だけに、稽古では通しよりもセリフの深掘り作業を重点的に行ってきたそう。本読みの段階からひとつひとつの意味を理解し、それぞれが感じた疑問を解消。約2週間の本読み期間を経て、作品に対する理解を深めたという。
また翻訳作品という理由も大きい。マックス役を演じた原さんは「言葉のニュアンスひとつで(意味が)変わってしまうので、そのすり合わせをずっとやっていました。このセリフをどういう言葉で伝えたら、日本人に分かりやすく伝わるか」と、日本用に言い回しがブラッシュアップされたことにも触れ、「今日のゲネプロも新鮮に、目の前の人のセリフで刺さるものがたくさんあった」と答えた。
キャスト陣が次々と“飛び込む”。前代未聞の派手なプール演出
ストーリーを支える重要な役割を担うのが、舞台上に設置された本物のプール。キャストは水の中への出入りを繰り返し、ときにはしぶきを上げて飛び込む。ベラミー役の前島さんは「演出の小川絵梨子さんとともに、とにかく飛び込んでみるをテーマに挑戦し続けた」とこれまでを振り返り、全体を通しても“飛び込む”という言葉がキーになった。
稽古中は水なしのプールセットを使っていたそうで、実際に水が張ったプールを前に中山さんは「すごく刺激的。舞台上で濡れて水が滴ることで、その時間を生きていることをリアルにしてくれる。助かっている部分もあります」と語った。
アンドレ役の大場さんからは、スタッフが空調との兼ね合いを年密に計算した上で水温を調節している裏話が飛び出し、手厚いフォローに改めて感謝した。原さんが「ただ単に楽しんでます! コロナ禍でプールに入れていないけど、ここでは毎日入れるんですよ」とコメントすると、中山さんも「今日の天気なんかも、ばっちりですよね!」とかぶせた。プールが完成するまでの貴重な設営動画は公式サイト、公式YouTubeで確認できる。
中山さん&原さんのジャニーズコンビは筋トレ仲間に
同じジャニーズ事務所所属の中山さん&原さん。2人の関係性について聞かれると、「今回が初共演ではないですし、プライベートでもわりと仲が良いので怖さが半減されるというか。安心感がありました」と中山さん。原さんも「信頼感がすごくて、もう委ねてました」と回答。また中山さんの体作りについて、「筋トレだけは僕が先輩になって、いろいろ教えました!」と、普段から筋トレに励む後輩の原さんが先輩の中山さんをサポートしたというエピソードも。2人で仕上げてきた『ダディ』仕様のビジュアルにも注目が集まる。
来日した作者のジェレミー氏、主演の中山さんが今作を通して伝えたいメッセージとは
開口一番に「こんにちは! ジャパン」と日本語で挨拶した、作者のジェレミー・O・ハリス氏。日本人キャストが原作をうまく変容させて役を演じたことに感謝の言葉を述べ、「自分と違う世界を見てほしい」とこれから観劇するお客さんに対してメッセージを送った。個人的なストーリーとして思い入れのある作品だけに、舞台を見て涙したそう。
最後に明日からの意気込みを求められた中山さんは「文化や人種の違いと聞くと日本人にとって遠い問題に感じられがちですが、目を向けるところはそこではなくて、人間なら誰もが感じる痛み、飢え、愛が舞台上に息づいているということなんです。作品のタイトル『ダディ』がどういう意味合いを持つのか、劇場で見届けてほしいです」と語り、「皆さん濡れる覚悟をしてきてください!…冗談ですよ(笑)」と笑いも誘った。
発売中の8月号の取材は、今作の稽古前に敢行。スタジオで手渡されたまっさらで分厚い台本を前に「こんな分厚い台本久々ですよ」と語っていた中山さん。何ページにもわたるであろう長回しのセリフを完璧にこなし、ほとんどはけることなく舞台に立ち続ける姿が印象的だった。キャストが全身全霊で息を吹き込んだキャラクター、作品の世界観に没入させる演出、丁寧に描かれた複雑な人間模様。最初から最後まで心を揺さぶられる迫力の舞台だけに、一秒たりとも目が離せない。
『ダディ』
作/ジェレミー・O・ハリス
演出/小川絵梨子
出演/中山優馬、大場泰正、原嘉孝、前島亜美、神野美鈴ほか
東京公演:東京グローブ座にて7月9日(土)〜27日(水)
大阪公演:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて8月5日(金)〜7日(日)
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