歯に衣着せぬ発言が痛快と評判のジョバンナ洋子ママによるピリ辛連載「ま、一杯飲んでベッラ ヴィータよ」。南麻布の架空のバー「Bar D’Amore(バール ディアモーレ)」を舞台に、ポーカーフェイスながら、やる気満々なママが繰り広げるトークは旬ネタが満載。第七夜は体育会系の子羊に、気負わないアートの楽しみ方をレクチャー。今宵もイタリアワイン片手に、トークに花を咲かせましょ!
【第七夜】アートを深めたいなら・・・・・・
11月ともなると、さすがに秋めいてきたわね。私もね、毎年この時期になると本業も一段落するから、なんだか心なしかゆったりした気分。ほ〜んとに、この夏もよく働いたわ。年々忙しくなっている気がするのに、別にお財布が膨らんでいるわけでもないのはなぜかしらね。え? 集中力と年齢は反比例って、そんなわかりきってること・・・・・・失礼ねッ!
「おっじゃましま〜す!」
まあ、威勢のいい女子だこと。しかも、もう秋なのに、夏みたいに日焼けしちゃって。
「テニスに、サーフィンに、ゴルフに、って忙しくて、気づいたら通年こんな感じなんです」
快活な感じで嫌いじゃないわよ。私もそろそろ何か始めようかしら? 球技が好きなのよね〜。ただ走るとか、ストイックなのは苦手。かといっていくらサッカー好きだからって、こんな随分な大人になってフットサルの仲間に入れてってわけにもいかないし。
趣味の不一致で、アラサー夫婦にまさかの・・・・・・
「実は私、そんなこんなで日々仕事もレジャーも目一杯予定入れすぎて、今、離婚の危機なんです。週末も夫とはほとんど過ごしていなかったので、昨日大爆発が起きてしまいました・・・・・・」
あらあら、穏やかじゃない話ね。
「彼は真逆の人で、アートとか文化系なんです。だから私も少しそっち方面も嗜んで、趣味を近づけてみようかと」
なるほど。昨晩は相当やり込められたのね、そこまで歩み寄ろうなんて(笑)。
「そうなんです。でもアートってなんか小難しくないですか? しかも夫もですけどアート好きな人って、スポーツ好きを単細胞風に下に見てないです? でもジョバンナさんなら、どう触れ合うべきか、教えてもらえるかと思って」
よくわかってるじゃない、本業でも“難しいことを易しく伝える”のが私の使命と思っているのよ。そうね、アートとひと言で言っても、ピカソ、モネみたいな本格的な絵画もあれば、商業寄りのデザイン系、現代アートもあるわね。細かいことはさておき、アートもファッションと同じで、まず好き嫌いから入ればいいの。
「そんな直感でいいんですか?」
身近なところにも存在するアート
そうよ、例えば私もこの間、里帰りしたミラノでリチャード・ジノリのプレートに引き込まれて手に入れたの。そのアーカイブを作ったジオ・ポンティというアーティストに急に興味が湧いたわけ。そこから調べ出したら、どうやらイタリア建築、デザインの父と言われるレジェンドだったの。それを知っただけで、ちょっと知識レベルが上がった気がしたわ。今、パリの装飾美術博物館で彼の回顧展をやっていて、行ってみたいのよね〜。
「確かに。身近なものから入るのも手ですね」
そう、普段の生活のなかにも自然とアートは溶け込んでいるのよ。展覧会に行くなら高尚だとか、敷居が高いと決めつけずに、話題のイベントとして捉えるのも手ね。ただ話題ものは行くタイミングに気をつけて。前にエラいめにあったの。会期の終わり間際に行ったらなんと150分待ちよ!
「フェルメール展」とルイ・ヴィトンの秘話
「え〜、その待ちは厳しいですね。この秋は上野の森美術館で始まった『フェルメール展』が話題ですよね。これは気になってました! 35点しか現存しない作品のうち、9点が展示されるってテレビで観て」
そうなのよ。私もまだ行けてないんだけれど、あれは必見ね。日本初公開の「ワイングラス」はこの店の主人としては見逃せないわ。そしてフェルメールの傑作「牛乳を注ぐ女」は所蔵元のアムステルダム美術館からの依頼で、ルイ・ヴィトンが製作した特性トランクでオランダから日本へはるばる旅してきたのよ。
リニューアルしたばかりの日本橋三越本店で11月は展示されてるらしいから、銀座線で上野→日本橋流れの休日デート、夫婦仲も改善できそうじゃない?
「そうですよね、彼も喜びそう! しかも事前予約制だから、ジョバンナさんの失敗みたいに並ばなくていいみたいですね。石原さとみさんナレーションのイヤホンガイドも無料って初心者には嬉しい配慮です」
そうやって一緒に楽しめれば、ワイン片手にアート談義もできるし、老後まで夫婦円満ね!
知識レベルを上げれば、自信につながる
大人になるに連れて、知らないと恥ずかしいことが増えるわよね。だけど、いまさら聞けないことをそのまま放置していたら、どんどん自信がなくなって、「私なんて・・・・・・」と自己卑下してしまうという悪循環が起きるでしょ。学びは慣れでもあるから、ひとつ知識を得てそれが自信になったら、どんどん吸収する喜びが生まれるのよ。私も年齢とともに知識欲が増して、学ぶ楽しさに目覚めたわ。ワインも同じ。今宵はアート気分を盛り上げる、名家のスペシャルな一本を紹介するわね。
【今宵の一杯】
ヴィエッティ バローロ カスティリオーネ
白トリュフの産地として知られるピエモンテ州。その南部に位置するバローロ村で作られる土着品種のぶどう、ネッビオーロから生まれる赤ワインが「バローロ」。“ワインの王様”と呼ばれ、その深く熟した味わいは多くのワイン好きを虜にしています。なかでもぶどう栽培に非常に適した地域、カスティリオーネ・ファッレットで、1800年代後半から4代にわたりワイン醸造を行っているのがヴィエッティ家。現在では当たり前となった、ある一区画の畑のぶどうだけで作る単一畑のワイン醸造の先駆けで、クオリティの高さはお墨付きです。
この「ヴィエッティ バローロ カスティリオーネ」は、完熟したチェリーやザクロ、野花やスパイスが混ざり合った官能的な香りに魅了される仕上がり。グラスに注ぎ、時間の経過とともに香り立つバローロは、秋の夜長を豊かなものにしてくれるでしょう。
Barolo DOCG Castiglione
ピエモンテ州
ネッビオーロ100%
750ml ¥8,500(参考小売価格)
フードライナー
078-858-2043