圧巻の展示が話題の『クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ』展をレポート! メゾンのスピリッツを体感しにぜひ足を運んで。【連載「青木貴子のラグジュアリー案内」】
夢のような展覧会『クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ』へ
『クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ』展が東京都現代美術館で開催されています。これはメゾンの70周年を記念して企画された展覧会で、2017年のパリを皮切りに、ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館、上海のロング・ミュージアム(西岸館)、中国の成都当代美術館、ニューヨークのブルックリン美術館、ドーハのM7などを巡り、このたび東京にやってきました。
夢のクチュリエというタイトルの通り、その空間にいる誰もがほんとうに夢見心地でうっとりしてしまう! そんな夢のような展覧会です。
クリスチャン・ディオールの75年以上にわたる素晴らしい創造の数々。それをさまざまな角度から掘り下げ構成した本展覧会は、単に服やバッグなどを年代順に羅列するような回顧展とはまったく違い、心躍る体感を伴った感動を得ることができます。
ディオールの歴代のクリエイションを一挙展示
1947年、クリスチャン・ディオールによる最初のコレクションは大成功を収めファッション界に新風を巻き起こしました。「ニュールック」と呼ばれたそのコレクションを象徴するのが、今なお愛され続け羨望のアイテムである〈バージャケット〉。最初の展示ブースではクリスチャン・ディオールによる〈バージャケット〉だけではなく、歴代のデザイナー、イヴ・サン=ローラン、マルク・ボアン、ジャンフランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノ、ラフ・シモンズ、マリア・グラツィア・キウリによる〈バージャケット〉が並びます。ここでは〈バージャケット〉の普遍的美しさと卓越したフォルムを実感することができます。
「ディオールと日本」のブースでは、日本との意外な接点や結びつきを知ることができます。現在の上皇后陛下美智子さまご成婚時のドレス3着はディオールが制作していたという興味深い史実も。
歴代のデザイナーの作品を展示したブースでは、それぞれの個性が際立ちその魅力をふんだんに味わうことができるルックが並んでいます。当たり前ですが、デザイナーによってディオールも色々な顔を持っていたんだなとあらためて実感。ここではデザイナーと時代によって変わるディオールのエスプリを楽しめます。
注目は「ディオールのアトリエ」と「コロラマ」
たくさんの見応えあるテーマのなかでも、私がとくに素敵!と思ったのは、トワルと呼ばれるコットン生地で作られるドレスの試作品ばかりを一面に展示した「ディオールのアトリエ」というブースと、女性が全身を「クリスチャン ディオール」で着飾ったら…というクチュリエの夢を表現したブース「コロラマ」。
「ディオールのアトリエ」は、ドレスの原型となるトワルが数メートルの高さで所狭しとずらり並べられている圧倒的真っ白な空間。すべてが白だからこそ、アトリエの職人の手腕が伝わる圧巻の展示となっています。
「コロラマ」ではドレスのミニチュアにうっとり。少女の頃に憧れた美がそのまま実現した!と感動を覚えるブース。ドレス、靴、バッグ、アクセサリーなどの装飾品が色ごとにディスプレイされていて、おとぎの国に迷い込んだような気分に。あのミニチュアドレス、1体でいいからお部屋に飾りたい!と本気で思いました。
どのテーマの展示も必見、ディオールの素晴らしい創造物で溢れています。そして、その美しさを際立たせる重松象平氏の手がけた空間デザインが秀逸。空間の切り取り方、光の明暗、鏡の効果的な使い方、どのブースにも感動的な演出が施されてます。
まるでムービーを見終わった後のような満足感と余韻を楽しめる、「見る」というより「感じられる」展覧会。会期は2023年5月28日まで。ディオールの貴重な所蔵品とそのスピリッツを体感できる稀有な機会、ぜひ足を運んでみて下さいませ。
『クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ』
会期/〜2023年5月28日
会場/東京都現代美術館(東京都江東区三好4-1-1)
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/Christian_Dior/