37歳の俳優・佐津川愛美さんによる連載「いつまで自分でせいいっぱい?」が『今日も、自分を生きる練習』とタイトルを変え、書籍になりました。
佐津川愛美さんインタビュー vol.2

連載回数100回を超えるなかから厳選した文章に加え、連載時には明かされていなかった2年間にわたるホテル暮らしについてなどの書き下ろしも多く収録された『今日も、自分を生きる練習』。
制作作業が終わったばかりの5月24日、しずおか映画祭の直後に静岡市内のカフェで本書籍の担当編集者が佐津川さんにお話を伺いました。3回にわけてお届けします(写真は、『今日も、自分を生きる練習』収録のものを一部転載しています)。
見知らぬ人への想像力
――佐津川さんの文章を最初に読ませてもらったときから、周りも、自分の感情もよく見ている方だなと思っています。まっすぐに見て、感じて、文章で表現されている。
佐津川 自分では、まっすぐ見ることしかできないと思っています(笑)。
――街の中で出会った知らない人に対しても想像力がありますよね。
佐津川 今回読んで、私は一人が好きな人間なんだけど、人がたくさん登場しているなと思いました。
――本当に。渋谷で一緒に横断歩道を渡ったおばあさん、マクドナルドで隣に座ったおつねさん。ウィーンの一人旅で知り合ったご夫妻や、フランスでお部屋を借りたリリー。知り合いではない方の登場が多いですね。

佐津川 昨日、静岡に来るとき、隣の席のおばあさんが話しかけてくれて、気づいたら着いていました。話しかけてもらえることが多くて、海外でもいつも話しかけてもらっています。
私は一人が好きなつもりで、一人時間のことも書いているけど、全部通して見たときにすごく人と関わっていて、不思議でした。本来の性質と仕事を始めてそうなった部分が重なっているのかもしれません。
――今日のしずおか映画祭でも、中学生のときに参加した最初の映画『蟬しぐれ』の現場で、みんなで作るのが好きだと思ったということをおっしゃっていたから、一人が好きというのと、みんなで何かやりたいというのが共存しているんでしょうね。
佐津川 だから家に帰ったら一人がいいと思うのかも。
――一人といえば、一人旅のことも本にはたくさん入っています。一人で出かけても、旅先では心を開いて、人と交流されていますね。
佐津川 たしかに。面白いな。
――一人旅が好きなのは、旅行の添乗員でいらっしゃった、お父様の影響もありますか?
佐津川 子どもの頃に一人で海外に行きたいと思っていたかといったら、思ってはいないです。ただ、父が出張に行って海外のTシャツを買ってきてくれたりすることがあって、「英語を話せるといいよ」と言っていたのはすごく記憶に残っています。勉強については全く何も言わない人だったんですけど、世界が広がるから、ツールとして英語を話せるといいよ、って。「世界が広がるのがいいことだ」というのが根本にあるのかもしれないですね。
十代のとき、思い立って一人で電車に乗って山みたいなところに行ったことがあって。那須だったかな。なんとなく決めた場所に行ったんですけど、電車に乗っている時間のほうが長くて、着いて、緑もない砂と岩の山みたいなところを登って、時刻表みたいなのを見て、「次の電車に乗らないと帰れなくなる」と、写真を撮って降りてくる。そういう旅が異様に好きでした。
あるときは、「灯台を見に行こう」と思って、また電車に乗って、千葉のほうに行ったこともあります。誰もいない海を見て歩いて、帰ってくる。目的地で何をするわけでもなく、そこで写真を撮ったらもう帰る、という旅をしてました。一人で行く、あてのない旅。移動が好きなんだと思っていたんですけど、今思うとなんだろう……。ドキドキやワクワクを感じたいのかな? 全然知らないところに行くっていうのが好きなんだと思います。

※インタビューvol.3は6月27日に公開予定です。

映画『蟬しぐれ』でスクリーンデビュー以来、数々の作品で印象的な役を演じてきた佐津川愛美さん。本書は、30代後半を迎えた佐津川さんが、「演じる」ことと「生きる」ことのあいだで揺れながら、自分自身の輪郭を見つめ直した軌跡を綴った一冊です。映画という仕事場、一人旅での出会い、2年間のホテル暮らし、俳優以外への挑戦――。悩み、迷い、揺らぐ気持ちをまっすぐに見つめる誠実な言葉が胸を打つ、共感必至の初エッセイ。
※この記事は幻冬舎plusからの転載です。

