伝えたい想いがあるとき、人は手紙を書きたくなる。女優の山口乃々華さんが、“あのひと”に向けて今の気持ちをしたためる連載。今回は、電車で見かけた男の子への手紙。【連載「〒ののポスト」】
ムスッとした君へ

あまり気乗りがしない場所へ、これから行くのかな?
5歳くらいのムスッとした君。お母さんの横にぼてぇーっと座っていましたね。小さなリュックの中には、ふわふわなぬいぐるみが。ムスッとしながらも、ちょっと出しては見つめて、飽きたらしまって、またちょっとしたら出して見つめて。
その様子があまりに君と不釣り合いで、どうしようもなくかわいくて、ついついお手紙を書きたくなりました。
私もぬいぐるみが好きだったなぁと、君を見て思い出しました。
夏休みに祖父母のお家へ遊びに行った帰りのサービスエリアで、気に入ったぬいぐるみを毎年ひとつだけ買ってもらい、その子と遊び終えたら、実家の棚に並べていました。どこかへ遠出をするときは、そのなかの"誰か"をいつも持って歩いていました。知らない場所に出かけても、そのぬいぐるみを触れば安心するし、見るだけでワクワクするし、なにより、このかわいいかわいいぬいぐるみを誰かに自慢したくて。
でも、いつからか―—私のカバンの中身は実用的なものばかりになりました。無駄なものをどんどん省いて、"なるべく軽く"がモットーに。
大事なものがどんどん変わっていって、いつからかぬいぐるみなんてどっか行っちゃって、私は君からしたらきっと、ひとつもワクワクしない、つまんないバッグを肩にかけています。
私も何か持っているだけでワクワクするような物を持ち歩きたいな。なんて君のおかげで思い始めました。
今の私がワクワクする物ってなんだろう。
パッと思いつかないことが少し悲しい。
なんだろうなぁ。私も持ち物でワクワクしたいよ。
そうだなぁ、可愛い文房具でも持ち歩いてみようかな。文房具ならよく使うし、メモを取るだけのボールペンが可愛ければ気分が上がりそう。
それに、ただ可愛いだけじゃなくて、ちょっとふざけたペンがいいな。ふふふと笑えるような。
よし、探してみようと思います。
仕事現場の人にムスッとしている人がいたら、その可愛くてふざけたボールペンを貸してあげたいです。(私ほうがムスッとしていたら、貸してあげられないけどね。笑)
山口乃々華より
山口乃々華(やまぐちののか)
3月8日生まれ、埼玉県出身。2020年末までE-girlsとして活動後、2021年より女優として本格的にキャリアをスタートさせる。映画『イタズラなKiss THE MOVIE』シリーズ、ドラマ・映画『HiGH & LOW』シリーズ、Hulu版『崖っぷちホテル!』などに出演し、映画『私がモテてどうすんだ』ではヒロイン役を務めた。2022年にはミュージカル『SERI〜ひとつのいのち』で初主演を果たし、以降「SPY×FAMILY」、a new musical『ヴァグラント』、『ラフへスト~残されたもの』、『ピーター・パン』と、ミュージカル作品を中心に舞台での評価を着実に高めている。2026年2月にはミュージカル『SERI~ひとつのいのち』2026では再び主演を務め、7月からは昨年に引き続き、
ミュージカル『ピーター・パン』でウェンディ役として出演。近年は舞台に加え、縦型ショートドラマへの出演や音楽ライブなど、表現のフィールドをさらに広げている。
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