伝えたい想いがあるとき、人は手紙を書きたくなる。女優の山口乃々華さんが、“あのひと”に向けて今の気持ちをしたためる連載。今回は、一緒に暮らす可愛いコに宛てたメッセージです。【連載「〒ののポスト」】
とらへ
私の家族になって3年と半年が過ぎましたが、私との暮らしはどうですか。 満足してもらえていますか。
この間あなたははじめてお腹を壊してしまいましたね。夏バテだったのでしょうか。原因はわかりませんが、部屋のあちこちにうんちがついていて、私は驚きました。拭いてどうにかなるものでもなかったので、私は汚れてしまった枕カバーやマットレスカバー、ラグ、いろいろと捨てたり変えたりしました。
おかげで、部屋のそこらじゅうの匂いが変わり居心地が悪かったでしょう。ごめんね。はじめは落ち着かない様子でウロウロしたり、鼻をヒクヒクさせて匂いを嗅いだりしていましたが、あっという間に慣れ、新品のものたちに大胆に体を擦り付けてゴロゴロ転がったりしていたあなた。その様子を見て安心しました。繊細な子だったら、またお腹を壊してしまったかもしれないけれど、なーんにも気にしてないでーす。と言わんばかりの態度。あーよかった。さすがうちの子。
ところで、最近またご飯を食べませんね？ 飽きましたか？ 私はこんなにもご飯を食べることが好きだというのに。そこは似ていないですね。 はじめの食いつきの良さはピカイチだったので、好きな味に違いない。まったく最近のあなたといったら、ご飯を余らせています。そんな子はおやつ禁止です！ それに、あんまりコロコロとご飯の種類を変えるのはよくないと聞きます。だから、ちゃんと食べてね。
まぁきっと、ご飯よりも、遊ぶことのほうが好きなのですよね。猫じゃらしで遊ぶことが大好きなあなた。あとは階段を駆け上がるのも好きらしいですね。実家にあなたが行ったとき、楽しそうに遊んでいたと母から聞きました。うちにも階段があったらいいのにね。いつか思い切り駆け上がれる階段のある部屋に引っ越せるよう頑張ります。
秋へと季節が変わり外の空気を網戸からスンスン吸っているあなたを見ていると、いつかピョーンと飛び出て、東京も飛び越えて、どっかの山に帰ってしまうんじゃないか？と心配になります。山猫だから…。
いろいろ愚痴っぽいことも言ったけれど、あなたと家族になれて本当に良かったと私は思っているのです。 家に帰れば、もふもふのあなたが出迎えてくれて、眠りから目覚めれば鼻を擦りつけ挨拶をしにきてくれる。ちいさな温かいをいつもいつもくれるおかげで、心がシーンとする瞬間を感じずに生きていられます。
とら、あなたのおかげで、優しい気持ちになれることが増えました。 生活の真ん中を作ってくれた。そんなふうに感じています。 何があっても私はあなたを愛していますから、そしてあなたの家は山ではなく、この緑色のソファーのある部屋ですので、どこにも行かないでください。そして、お願いだから、長生きしてね。 ずっとずっと一緒にいたいです。
あなたの家族、乃々華より
山口乃々華（やまぐちののか）
3月8日生まれ、埼玉県出身。2020年末まで E-girlsとしての活動を経て、2021年から女優として本格的に活動を開始。 映画『イタズラなKiss THE MOVIE』シリーズ、ドラマ・映画「HiGH ＆ LOW」シリーズやHulu版「崖っぷちホテル！」などに出演、『私がモテてどうすんだ』ではヒロイン役を務めた。近年ではミュージカルにも活動の幅を広げ、2022年には「SERI〜ひとつのいのち」でミュージカル初主演を務め、2023年は「SPY×FAMILY」ではフィオナ・フロスト役、a new musical「ヴァグラント」ではヒロイン（W）役を好演。12月15日～上演する舞台「呪術廻戦」-京都姉妹校交流会・起首雷同-では、釘崎野薔薇役を務める。
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