宝塚歌劇団のトップスターを経て、現在日本のミュージカル界を盛り上げるべく奮闘する柚希礼音さん。常にパワフルに「今」を駆け抜けていく、その原動力に迫る。
死ぬまで変化しながらどこまでも進んでいきたい
宝塚歌劇団で初舞台を踏んだ日から、数々の大舞台を経験。5作品連続で新人公演の主演を務め、入団10年で押しも押されもせぬトップスターとなった柚希礼音さん。
「けれど私はトップスターになりたいと思っていたわけではなく『これを明日までにできるようになろう』と目の前のことをやってきただけなんです。『この子をなんとかせねば』と思ってくださっていたのか、舞台袖に下がった瞬間に、待っていた先輩から毎回ダメ出しの嵐という日々でした(笑)。とにかくその時々で必死、常に『今』だけ見て進んでいました」
退団後は、毎年いくつものミュージカルに出演、日本全国で公演を続けている。そして2019年に上演された主演作『FACTORY GIRLS 〜 私が描く物語〜』は演劇界で権威のある読売演劇大賞の優秀作品賞を受賞、再演も決まった。19世紀半ば、働く女性たちが権利を求めて闘う物語、柚希さんは女性たちのリーダーを演じる。
「私が演じるサラは強い女性ではなく、仲間と一緒に一歩ずつ進んでいきます。私は宝塚時代に、強いリーダーにならなければと張り切っていたことがありますが、そのときは誰もついてきてくれませんでした。けれど弱いところもさらけ出し、みんなに甘えたり、助けてもらったりしているうちに、だんだんと周りが私をリーダーにしてくれた。そんな経験がありますから、とてもしっくりくる役なんです」
もし、過去の自分を永久に保存できるとしたら、いつの時代がいい? そうたずねると、柚希さんは大きく首を横に振った。
「永久保存、絶対したくないです(笑)。私、子供時代はすごくシャイで、人前で話すこともできませんでした。当時の私を知っている人は『あの内気な子が人前に立っている』とそれだけで感動するそうです。そうやって、私自身はこれからも死ぬまで変化して、常にそのときの『今』を大事にしたい。そうやって歳を重ねていきたいです」
柚希礼音に3つのQ&A!
Q. パワフルな柚希さんの元気を永久保存する方法を教えて
A. 自分を甘やかすことが大事です!
大きな仕事が終わったら、思いっきり自分を甘やかします。自分に一番ふさわしいご褒美をあげられるのは自分ですから! ご褒美は、いつも旅行です。公演後はたとえ日帰りでもどこかに行きますよ。国内だと山奥、秘境の温泉なんかが好きですね。以前は海外に行く際は携帯電話が通じないようにして、その期間はお仕事のことは考えないようにしていました。すごくリフレッシュできます。でも最近はそうもいかなくなって、通じるようにしてありますが(笑)、夜まで見ないなんてことが旅行中はしょっちゅうありますね。
Q. 体力を永久保存するとっておきの方法を教えて
A. 短時間で本気のトレーニング!
ミュージカルは動きっぱなし、その公演を何日も続けますから体が資本。私は練習もトレーニングも、短時間で本気でやるタイプです。長時間いっぱいやるよりも、短い時間で負荷をかけてパパッとやるんです。筋トレの場合はストレッチはじっくりやりますが、腹筋を100回やるより、全身に力を入れて、すごくきついのを10回とか。バレエの練習も、だらだらやらず、本番だと思ってガッと本気でやります
Q. 集中力を永久保存する秘密の方法を教えて
A. 外に出て作業する!
集中してセリフを覚えたいときは、車に乗って山や川まで行き、自然のなかで覚えるようにしています。作詞をするときは、バーの席で。とにかく終わらないと帰れない状況をつくるんです。家でやっていると、『あ、掃除しようと思っていたんだ』とか『食器洗おう』とか、ほかのことをしてしまうので。リモートワークされている方は、きっとわかってくださいますよね(笑)。
ミュージカル『FACTORY GIRLS〜私が描く物語〜』
脚本・歌詞・演出/板垣恭一
出演/柚希礼音、ソニン、実咲凜音、清水くるみ/平野綾ほか
6月5日〜13日/東京国際フォーラム ホールC
6月24・25日/福岡キャナルシティ劇場
6月29日〜7月2日/大阪COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
https://musical-fg.com/
柚希礼音(ゆずきれおん)
6月11日生まれ、大阪府出身。1999年宝塚歌劇団の初舞台を踏み、2009年星組トップスターに。’14年には日本武道館で単独コンサートを開催。’15年に退団後は数々のミュージカルに出演し続けている。