ただひたむきに役を生きる俳優として、28歳になったひとりの女性としても恋によって彩られてきた日々がある。酸いも甘いも噛み分けたうえで、「恋は不可欠なもの」とまっすぐ言い切った川口春奈さん。恋と理想の関係についてインタビュー。
「恋は不可欠」だけど…
人生のなかには、家族や仕事、恋愛などいろいろあるけれど、実は今、恋愛の優先度がそんなに高くない。ただ、優先度は高くないけど不可欠なもの。
私の場合は、シンプルに恋愛がモチベーションに繋がります。誰かを好きという気持ちは、表情や気分、考え方や捉え方でさえも無条件に上向きにしてくれるし、いい恋は人生においてすごくプラスになるもの。美意識が高くなって、自分のことを大切にできたりもする。もちろん自分だけではなく相手がいて成立する人間関係なので、いいことばかりじゃないのは承知のうえで。最近は恋愛しない人も増えていると聞きますが、その気持ちもわからなくないです。だってラクですもん、ひとりでいるほうが。
私は恋愛の在り方として、“付き合ってる”っていう関係に囚われすぎず、もっとフレキシブルでいい気がするんです。恋のカタチって、あってないようなもの。お芝居のなかでは、私自身も戦国時代の恋愛観に触れたり、音のない世界で生きる人と恋もした。ほかにも、今は男女だけではなく同性の恋愛が普遍的なものとして描かれていて、恋愛の多様性に触れる機会が多くあります。
どの恋愛についても、ちゃんと共感できる部分がある。障害があるからNOではなく、大変さを覚悟したうえで、一緒にいたい。だから一緒にいると決意した、という人たちが世の中にいることも知っていますし、とても素敵な在り方だなと思います。
出会い方にしてもSNSがきっかけのカップルも増えていますよね。今っぽいというか、ラフでカジュアルな出会いもいいですよね。
実際に、私の周りの友達にもアプリで知り合って、結婚した人がいます。子供が生まれて幸せに暮らしている姿を見ているので、私はそういう出会い方に対しても不安や怖い気持ちはいっさいないです。早く結婚したい人からすれば、お互いの条件をクリアしてから出会えるわけなので、いろんな過程をショートカットできるのは魅力ですよね。この仕事してなかったら、私も活用していたと思いますよ(笑)。
「理想の関係」について
時期や年齢を重ねていくたびに、どんどん変わっていくものだと思うけど、現時点では結婚というカタチにはこだわらないし、恋愛関係にあってもべったり一緒にいるんじゃなくて、会いたいとき、頼りにしたいとき、そういった大事な瞬間に一緒にいられる関係が理想です。夫婦別姓だとか、一緒に住まない別居婚ももはやネガティブではない時代だと思うから、自分の時間をちゃんと持ちながら、でも相手を思いやりながら、それぞれにとっていい距離感で生活できるスタイルにも憧れます。
昔の私は、ずっと一緒にいることが幸せだと信じていて、相手が何をしているか知りたいし、自分が何をしているかも知っていてほしかった。今とは真逆の価値観を持っていたから、この先もまた変わるかもしれない。心のままに変わっていくことをポジティブに捉えていきたいですね。もっと自分を尊重して生きていきたい。時間の使い方や居場所にしても自分の心地よさを大切にして、「あの人、今日は何しているのかな?」とふと思い出すくらいがいい。大切な存在はあえて思い出そうとしなくても、ふとした瞬間に頭をよぎるものだから不安はありません。会ったときに、積もった日々の出来事や感情を共有し合いたい。それは互いの信頼があったうえで成り立つ関係だとも思うんです。
それに“私は私”という軸を自分のなかに据えておけば、いざ頼ったり、頼られたりしても、共倒れすることもなく、お互いを支えられるはず。大切な人がいて、その心が変わらないままであれば、形式的なカタチにこだわる必要もなくて、ふたりにとって心地よいままでいいかなって思うんです。