『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』の公開が控える俳優の広瀬すずさん。特別な存在感と表現力で多くの人を惹きつけている彼女に、愛してやまない役者という仕事のほか、今、心奪われるモノやコトをインタビュー。
好きや憧れによって、突き動かされることもある
『ネメシス』シリーズで私が演じてきた探偵助手の美神アンナという女のコは、私からするとうらやましさや憧れの存在かもしれません。私は特に趣味があったり行動力があるわけでもないので、アンナが本能的に動いて、自分の過去と対峙し、立ち向かっていく姿を見ると、眩しいものを見るような感覚になります。また、彼女を演じることで自分では知り得なかった多くの感情を共有してもらえました。
この映画では本格的なアクションシーンに初挑戦したのですが、とても贅沢な現場。相手が魔裟斗さんで、さらに素晴らしい技術スタッフさんに最新技術を駆使したセット。共演の(櫻井)翔さんからも「うらやましい!」って言われるほど。撮影前に、魔裟斗さんの現役時代の動画を見ていたのですが、だんだんとメラメラしちゃって(笑)。
いざ本番を迎えると、実際にキックが当たることはないとわかっていても怖かったです。でも、負けちゃダメだと思って、魔裟斗さんをガッと見つめて自分を奮い立たせました。
普段、キックボクシングで体を動かしているけど、アクションシーンは別物で苦戦続き。瞬発的に動く方が得意なので、決められた型に沿って、臨場感を持って動いていくアクションはもっと勉強が必要だなと。反省はありますが、見応えのあるシーンになっているのでぜひ注目していただきたいです。
その瞬間に生まれたものを嘘なく演じられたら
「こういう作品、やりたかった」と思っていた現場に入るとウハウハしがち。最近、プライベートで感情が動くことが少なくなっているのは、お仕事のために喜怒哀楽をとっておきたいから。そういう思考になっています。うれしいとか楽しい、悔しさも悲しさも、自分のなかにしまっておいて、お芝居のなかで発散する。きっと人生のなかで仕事の優先順位がとても高いんだと思います。
お芝居にしても、セリフを覚えるのは本番前日の夜。台本を読んだときの直感的な感情が色濃く残るタイプで、どんなお芝居をするかは本番になってみないと自分でもわからない部分があります。まったく考えないわけじゃなくて、考えすぎてしまうと、現場で臨機応変に動けない。例えば悲しみで準備をしていったのに、現場で憎しみを求められると、私は悲しみから抜け出せなくなります。なのでリハーサルをしてみて、そこで生まれた感情を頼りに本番に向かう。
長回しの掛け合いシーンも、一連の流れのなかで一気に撮ってもらうと感情が途切れることがないので、すごく好きです。何度も同じシーンを繰り返して行くと、どんどん感情や臨場感が薄れてしまうのが自分でもわかります。作中でも、江口洋介さんと掛け合いのシーンがありますが、それも1カット。全力を出して、撮り終わったときの清々しさが最高でした。疲れているけど、心地よい。それはお芝居が好きだから得られる特別な感情です。
『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』
天才的なひらめきを持つ探偵助手のアンナ(広瀬すず)と、ポンコツな自称天才探偵の風真(櫻井翔)がさまざまな謎を解決するドラマ「ネメシス」の劇場版。本作では、謎を解くたびに誰かが死ぬという“黄金螺旋の謎”に挑む。
監督/入江悠
脚本/秦建日子
出演/広瀬すず 櫻井翔/江口洋介ほか
3月31日(金)全国公開
nemesis-movie.jp
広瀬すず(ひろせすず)
1998年6月19日生まれ。静岡県出身。主な出演作に、映画『海街diary』『ちはやふる』シリーズ、『怒り』『流浪の月』、連続テレビ小説「なつぞら」、ドラマ「anone」「ネメシス」「夕暮れに、手をつなぐ」など。主演映画『水は海に向かって流れる』が今年6月公開予定。