トレンドのインナーカラー、やってみたくなったことありませんか? 芸人 紺野ぶるまさんもその一人――。【連載「奥歯に女が詰まってる」】
第53回 インナーカラーを入れる女
無性に髪の毛にインナーカラーを入れたくなる時がある。
耳に髪の毛をかけた時に見える位置と前髪に、“さりげなく”と“大胆に”の間くらいをほどこしたい。ブリーチをガッツリ二回してシルバーやブルーのカラーを入れたい。そんな願望が時々、睡眠欲とタメをはるくらいに襲ってくる。
コロナ禍でしばらく自粛していた頃もこんな気持ちになって、美容室に行った。
「誰に会う予定もないのにどうしてもやりたくなっちゃって」
と話すと美容師さんは「いまそういう人多いです」と教えてくれた。
「こういう時ってなにか変えたいって思うみたいですよ」
言われて注目してみたのもあるが、仕事で会う女性のインナーカラー率の高いことにおどろいた。流行もあるが、それまでずっと黒髪だった人も内側だけガッツリ色を抜いてたり、はたまた、そのままそこを刈り上げたり。
全頭カラーすると取り返しがつかない感じがするが、インナーカラーとはなんともその辺りが絶妙である。
私自身もそのとき耳の後ろだけブリーチして、アッシュを入れたが確かに新しい扉が開いたような、だけども隠そうと思えばなんとかなる過ごしやすさに痺れた。
今を変えたいけど、またすぐに日常に戻れるように。
そんな心境がまんま映し出されているのがこのインナーカラーなのかもしれない。
再度インナーカラーを入れたいと思ったのはここ数ヶ月のことだ。
最近、無性に顔のたるみが気になる。
前みたいな、寝不足とか二日酔いの時に起こるものとは訳が違う気がする。
気を抜けばいくらでもくすむことができるし、正直前とは違ってどうでもいいと思える瞬間もある。
その怖さと心地よさが混同して、インナーカラーを入れたくなったのだと思う。
大人にも似合うデザインとカラーをとインスタを見ていたのも束の間。
後輩と楽しく恋バナしているつもりだったのに「最近結構年上が好きで、相手28の人なんですけど…」と言われて、あんぐりした。
お母さんの歳を聞くとそっちの方が近くて、明らかに面白くなる瞬間なはずなのに「ちょっと! ちょっと!」が出なかった。出なかったのが恥ずかしかった。
わたしはインナーカラーに何を求めていたのだろうか。20代のような輝きだとしたら、それはそれは痛々しいインナーカラーになるのでは…?と、一旦中止した。
昔を思い出すのは自然の摂理だが、あの頃を取り戻そうともがくのは目も当てられない。
いつかみた駅前にいるコギャル姿のおばちゃんを思い出した。
今の自分を愛し、大事にできた時に初めて、インナーカラーや、奇抜なヘアスタイルが似合う大人になれるのかもしれない。
自分にはまだ難しいと、とりあえずトリートメントをオーダーするのであった。
最後に
インナーカラーとかけまして
自信ない人と解きます。
その心はどちらも変化(変か)を気にするでしょう。
今日も女たちに幸せが訪れますように。