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TIMELESSPERSON

2022.11.13

この人を心底愛した人がいる、という保証はでかい。紺野ぶるまの元カノ論

「私が知らない頃の彼を知っていることが許せない」? 元カノに嫉妬しがちなあなたへ。芸人 紺野ぶるまさんによる女観察エッセイ「奥歯に女が詰まってる」。

アルバム

第50回 元カノを許さない女

どうしてこうも私たちは元カノに反応してしまうのだろうか。
女友達が憤慨してるのをみて改めて疑問に思った。

「元カノにもらったものが部屋に残ってた」
「LINEの履歴に残ってた」
「たまに集まりで顔を合わせてるらしい」

10代20代のわたしは親の仇のように元カノを嫌っていた。いや恐れていた。
当時はSNSというよりプリクラ帳やmixiの足跡から(懐かしい!)その存在を感じとり、

「まだ好きなんでしょ」

といじけたり、

「あんなくそみたいな女と付き合ってたなんて馬鹿じゃないの?」

と攻め立てたりした。
内側から燃えてしまうんじゃないかというくらい嫉妬し、実際よく知恵熱を出していた。

この辛さから逃れるために「別れたい」と申し出たこともある。最初の頃は引き留めてもらえるが、繰り返していくともういいよと拒絶され最終的にわたしが未練タラタラという地獄みたいな結末になったことが二回くらいある。

あの頃の自分はどうしても過去の女がこわかった。私が知らない頃の彼を知っていることが許せなかった。

しかし今にして思えば元カノって必ずしも悪い存在ではないのだ。

それは夫とまだ彼氏と彼女の頃。

彼の部屋で元カノからもらった思い出アルバムを見つけてしまった。
開いた瞬間は嫉妬で心がミディアムレアくらいには焼けたが、二年間にわたる初々しい二人の写真とそれに添えられた思い出のメッセージに気付くと違う意味で胸が熱くなっていた。

初めて遊んだ地元の駅、次第に本音を言い合えるようになった花火大会、初めて手料理を振る舞うも失敗したクリスマス。防寒ばっちりの初詣、そこで絵馬に込めた願い。
あなたの好きなところ10個、人前で携帯をいじらないところ、人の悪口を言わないところ…責任感が強いところ…

誰がどう見ても二人はいい恋愛をしていた。

まるで「結果わたしは別れることになってしまったけど彼は良い人です」とプレゼンされてるような気持ちになった。

「あれ彼のこと前より好きかも」

たまに「男にバツがついている方が安心する」という女性がいるがそれに近い。
「この人を心底愛した人がいる」という保証はでかい。

元カノはリスキーではあるが、彼を知るには一番早いツールなのかもしれない。
やはりいい男はいい女と付き合ってるわけだから。

アルバムの存在を忘れてるであろう彼にさりげなくその引き出しを開けさせた。

「捨てなくて良いよ、素敵なものだから」

と優しく微笑む…はずもなく、

実際はコントばりの「あれ?なにこれ?元カノとのアルバム?こんなところに?ああ…全然、全然!」を決め込んだ。

「ごめん、忘れてた。捨てるね」

「え〜いいのに〜」と言いながら彼がゴミ箱に入れる手を止めなかった。

望んでいたことなはずなのに数分経つとどうも心地悪い。あの時代を感じるキャミソールを着た女性の笑顔が頭から離れないのだ。

「やっぱりさすがによくないよ」とゴミ箱から取り出し、ここぞという時のために取っておいたCHANELの紙袋に入れた。
そして「ありがとうございました」と心の中で唱え、もう一度捨てたのだった。

最後に
思い出の写真とかけまして
恋愛中の心模様と解きます。

その心はどちらも
いつでもピース(peace)でありたいでしょう。

今日も女たちに幸せが訪れますように。

紺野ぶるまの【奥歯に女が詰まってる】をもっと読む。

TEXT=紺野ぶるま

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