「男が惚れる男」は、ほかの男と何が違うのか――この人の佇まいに答えがあるかもしれない。モデルから人気俳優となり、今や日本の映画界になくてはならない存在となった、竹野内豊さん。誰もが一目置く名優が語る「男が惚れる男」とは。
最初はダサくてもいい。努力して本物に近づきたい
23歳で俳優デビュー、ずっと第一線で活躍し、現在51歳。年齢を重ねた男性ならではの円熟味。そしてどこか清らかな無垢さ。その両方を併せ持つ稀有な存在。女性のみならず、男性からも支持される彼自身は「男が惚れる男」と聞いて、どんなことを思い浮かべるのだろう。
「先日、駅で目の前を年配のご夫婦が並んで歩いていて、おじいさんが『危ないよ』と、おばあさんの背中にサッと手を回していたのが微笑ましくて、何だか粋だな〜と思ったんです。人混みのなかでも、自分より大切な人に心が向いている。そういうさり気ない心遣いに憧れる自分がいます」
2023年、人気を博した連続ドラマ『イチケイのカラス』が映画化。主人公である型破りな裁判官・入間みちおを演じている。
「みちおは、ユーモラスでお茶目なところと、物事を誰よりも客観視できる冷静さと、その二面性を備えた男です。一見、飄々としているけれど、真実を追求するためには国家が相手でも怯むことはない。逃げない、曲げない、動じない。強い信念を持ち、本質を捉えるために奔走する。演じ甲斐のある人物でした」
竹野内さん自身、いろんな場面で「それが本物かどうか」ということを意識しているそう。
「表面的なことはどうでもいい。例えば趣味でも形から入る人がいるけど、自分はそれが少し苦手。中身が伴ってないと恥ずかしいと思うタイプです。最初はみんな初心者なのだからダサくてもいい。それより本物に近づくための志や努力のほうが重要だと思うんですよね。見た目よりも、まずは心意気。それらが積み重なると生き様になり、やがて周囲が惚れてしまうオーラとなって人を輝かせるのではないでしょうか」
どんな価値観で生きているのか。人の内面は顔に出ると思う
竹野内さんが最近、強く感じていることがある。それが「自分の頭で考えることの重要性」。
「何でもネットで検索でき、SNSも盛んな今は、ふと湧いた疑問もすぐに答えが得られる、そんな時代。でも安易な情報や人の意見だけで知ったつもりになってしまうのは本当に怖いこと。もっと内面を見つめて、自分はどう感じるのか、何を求めているのか、そこから広がる豊かな世界の方をもっと大切にしたいんです」
そう語ってひと息ついたあと、「顔はキャンバスですからね」と続けた。
「情報や他人の意見に振り回されていると、自分の軸がわからなくなってしまう。僕自身、人生を振り返ったとき、うまくいったことより、そうでなかったことのほうが多かったように思います。でもそこで内面を見つめたことで心が成長し、自分の軸が育ったことだけは確か。結局、人の顔はキャンバスのようなもの。生き方、考え方…人生観すべてが人相になって表れてしまう。だからこそ僕は、内側に意識を向け、本質を追い求めることをあきらめたくない。独自の強い芯を持つ本物志向な人。男女問わず、僕はそんな人に惚れてしまうのだと思います」
映画『イチケイのカラス』
ユニークな裁判官を描いた人気ドラマが映画化。今回、竹野内さん演じる入間みちおが挑むのは国家機密。それは開けてはならないパンドラの箱だった……。ちぐはぐコンビの坂間千鶴(黒木華)との掛け合いも健在!
監督/田中亮
原作/浅見理都『イチケイのカラス』(講談社モーニングKC)
出演/竹野内豊、黒木華、斎藤工、向井理ほか
2023年1月13日(金)全国東宝系にて公開
竹野内豊(たけのうちゆたか)
1971年1月2日生まれ、東京都出身。モデルを経て、’94年、俳優デビュー。以降、ドラマ、映画、CMと幅広く活躍。2012年、映画『太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-』で第54回ブルーリボン賞主演男優賞受賞。