35歳の夏を目前に、田中みな実さんがお仕事を調整して1週間のお休みを取り、親知らずを抜くことに。タフさが磨かれたという体験の一部始終をご紹介。【連載「田中みな実のここだけ話」】
今回のテーマ:親知らず
「いつかは抜きましょうね〜」
どこの歯医者さんに行ってもレントゲンを撮るとそう言われるので、いつかいつかとは思っていたけど、遂にそのときがやってきた! 仕事が一段落したタイミングでマネージャーさんがあれこれ調整してくれて1週間の休みを設けてくれた。親知らずを抜くのって、一大イベントじゃない?
抜くことが決まってからというもの黙ってはいられず方々に宣言して回った。馴染みの鮮魚店、お花屋さん、たまに行くケーキ屋さん、果ては美容機器のイベントの質疑応答で(この夏楽しみにしていることを聞かれ、何も浮かばず「親知らずを抜くこと」と口走った)世間様にまでご報告をば(笑)。
皆一様に「腫れるよ〜」「覚悟しておいた方がいいよ」と脅かすものだから、恐怖心を煽られる一方、怖いもの見たさで心待ちにしてしまう。上の1本は既に抜いていたから残るは3本。どうせやるなら一気に抜いちゃおう! と息巻いていると、事前のチェックで2本は骨に埋もれているから無理して引っこ抜くことはないし、もう1本も埋まっているから今すぐどうこうという感じでもないとの診断に拍子抜け。
休みをいただいて、各所に言いふらしたからには後戻りできず、「先生、恰好がつかないので1本でもいいから抜いてください!」と頼み込み、左下の1本を処置することに。
当日は暫く固形物を食べられなくなることを想定してりんごやら玄米、煎餅など噛み応えのある物をしっかりお腹に入れて、万全の状態で治療に向かう。しかし、いざ椅子に座って麻酔を打つと、途端に恐ろしくなり「先生、痛いですか? 今の麻酔の注射が限界です」と涙が込み上げる。「やめます? やめるなら今ですよ」先生、苦笑い。「う〜ん、う〜ん」バンジージャンプで直前まではしゃいでいたのに急に怖気づいて半べそをかくお調子者みたいでカッコ悪過ぎる。3本一気にやっちゃいます〜?なんてどの口が言った? しかし、歯茎をメスで切り開いて砕いて引きずり出すなんて怖くてたまらなくない? 万が一、大手術になっても待合い室で私を迎えてくれる人は誰もいない。お母さん…。孤独と恐怖に押し潰されそうになりながら処置が始まる。
複雑な形でおかしな生え方をした私の親知らずを抜くのは骨が折れる作業だったに違いないけど、腕のいい先生のおかげでドンドンドンドンギリギリぐいぐいぐいぃぃー―っと僅か5分ほどでするんと出てきてくれた。2針縫って30分もかからず終了。
止血のために綿を噛みしめておかなければならず、この嫌な感じを紛らわせたくて、帰りにいつものヘアサロンに駆け込み、頭皮とお顔の幹細胞ケアでリフレッシュ。帰宅すると、痛みも和らいでいたからお中元でいただいた冷凍のウナギを湯煎してあっつあつのご飯にのっけて食べてみる。たっぷり出血しながらウナギを頬張ると、縫い口にウナギの小骨が突き刺さって青ざめた。
腫れも痛みも少ないし、ラッキーだったと楽観し、ぐっすり眠った翌朝、左頬がしっかりと腫れていて笑ってしまう。夕方になるといっそう腫れ、リスなんて可愛いもんじゃない、四角! で、夜になるにつれ肥大し台形に。明日には少し治まっているかしら。そんなことをぼんやり考えながら、楽しみにしていた手毬寿司(前々から予約していた)を小さくカットして無理くり口におさめる。35歳の夏を目前にまた少し逞しくなってしまった気がした。
▼こちらの記事もおすすめ!
【田中みな実のここだけ話】をもっと読む。