女芸人 紺野ぶるまさんによる女観察エッセイ「奥歯に女が詰まってる」。GINGER世代のぶるまさんが、独自の視点で世の女たちの生き様を観察します。
第44回 面白い女とつまらない女
男女関係なく相手から一緒にいて楽しい、面白いと言われる女の共通点は「腹を割っている」ところにあると思う。
“ベシャリ”を生業にしているなら、それだけではもちろんダメだけど、ベローチェや串カツ田中でモテるのはそんな人だ。
日常会話での面白いとはいわゆる“隙”で、軽い悩みを口に出すだけでもそれはすぐに生まれたりする。
例えば、「自分の話がつまらなくて悩んでいる」とか、「自分の顔が好きじゃない」とか。
打ち明けられるだけで相手は結構嬉しいものだし、「そんなことないよ」と上から目線で元気付けるのは楽しいし、「いや私の方が…」と同調するのも悪くない。
自分の酒の失敗や、恋愛や仕事のゴシップがあれば一番いいけど、「最近リボ払いしてる」とか、「鼻にヒアルロン酸入れたい」とか、YouTubeのサムネにするには弱いくらいのトッピクスでも、十分に人は「こいつおもろ」となるものだ。
それもないなら、「元気ないとき、○○の動画ばっかり見てる」の○○に、アザラシなど猫や犬以外の動物を入れるか、荒川静香が優勝した時のイナバウワーとか、10年前くらいの話題を入れるだけでなんとなく情緒が溢れて面白くなる。
たまに「私(または俺)お笑いめっちゃ詳しいし、まじマニアックだから」とその場を牛耳ろうとするヤツがいるが、そういうヤツほど面白くない。まず、その自信がしらける。自らハードルを上げてしまっていることに気づいていないセンスのなさが、もうイヤだ。お笑いに詳しいからといって、お笑いができるわけではないのに。それに詳しいと言ったって、たかが知れている。
芸人の私からしたら、じゃあ松竹芸能の隠れた天才、あひるちゃんスポンジクラブって知ってる?って話なのだ。そこで「元もりかずきの?」と返ってきたら、私は土下座して謝ろう。
しかし大体は、その年のM-1ファイナリストの名前を出しておけば成立する会話しかしてこない。
そのとき重要なのは「私は、このコンビがいいと思った」と自分の好みを断言することで、これはお笑いの話題以外にも言える。自分の意見を言うのは、否定されたり、少数派になる恐れもあって、少し怖いしリスクがあるが、それを背負っている潔さは好感度が高い。
腹を割るというのは、そういうことだと思う。
話がつまらない女の共通点は、自分の意見がないことだ。とくに誰かの名前を借りて話すようなことはしてはいけない。
「元芸人の友達が言ってたんだけど、芸人からするとあのネタはずるいらしいよ」
「○○さんが言ってたんだけど、あの子はプライドが高いからってめっちゃ嫌われてるらしいよ」
「この前紹介された社長曰く、あの店は○○系列だから危ないらしいよ」
出す名前も少し有名人だったり、目上の人だったり、とにかくネームバリューで説得力を持たすと、もれなくつまらないと思われる。たとえ皿回しができたとしても、「面白い」とはならない。
リスクを背負わずして会話する人は信用されない。
そういう女に限って、プロレス観戦とか、一人で落語を観にいくとか、少し渋い趣味を押し出して自分のブレ度合いを補強している。
しかし結局は「レスラーと付き合ってた友達も言ってたんだけど…」と、会話のリングから逃げるような物言いしかしないのだ。
最後に
“会話”とかけまして
“在宅勤務で妻に邪魔もの扱いされている旦那”と解きます。
その心はどちらも
“たまには打ち明ける(うち空ける)ことが大事”でしょう。
今日も女たちに幸せが訪れますように。
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