美容家・神崎恵さんの心の機微を綴る連載「Megumi’s Mirror」。今回は「推し活」について。
vol.4 “推し活”がしたい。
オタクか、オタクでないかと言えば、私は昔から、かなりオタク気質だと思います。気になったことはとことん調べるし、一度ハマったら徹底的に追っかけます。
考えてみれば、愛してやまないコスメたちも、シーズンごとにたくさんの新作や新色が登場して、そのたびに心ときめいています。何十年と追いかけ続けていますが、いまだに夢中。まったく飽きることはありません。むしろ、コスメ愛は深まるばかり。
ですが、ふと思うのです。
「私のオタク心、最近、ちょっと錆びてきてない?」と。
コスメへのオタク心は別として、特に、人へのオタク心、つまり、今流行りの言葉でいうと“推し活”ですね。
私には今、“推し”がいない…。
大人気の韓国アーティストに、絶賛・推し活中の同世代の友人は、なかなか取れない貴重なライヴのチケットを苦労して手に入れたところ、なんと最前列! そんなプラチナチケットなのに「こんなに前だと、近すぎて、目が合いすぎて、ドキドキしすぎて、ライヴに集中できない」という理由で、後ろのほうの席に変えてもらったとか!
それを聞いて、ハッとしました。
「私、ときめいてない…」
人への関心がないわけではなくて(むしろめちゃくちゃあります)、たとえばアイドルだったり、俳優だったり、ドラマやアニメの主人公だったり。ステージや画面の向こうでキラキラしている存在に、ときめいたり、恋したり、応援したり。
そんな“推し心”が枯れているんじゃないか。かつては(といっても小学生や中学生時代ですが)、私にも“推し”がいました。チェッカーズの藤井フミヤさんや俳優の仲村トオルさん、「ルビーの指輪」の寺尾聰さんやジャイアンツの中畑清さんなど。アイドルから渋〜い大人の男性まで、今でいう、推し活をしていたわけです。
「なぜ今、私には推しがいないんだろう」
と考えるに、今の私の推しは、3人の息子たち。応援して、キュンとして、時には背中を推す。私にとっては、「子育てが推し活」だったんですね。
とはいえ、そろそろ、息子たち以外にも“推し”が欲しくなってきました。
ときめきたい!
まっさらな気持ちで応援するとともに、もっともっと知りたいと、好奇心や探求心をくすぐられる存在が、欲しい。
40代ともなると、ひととおりのことは経験済みです。知識や経験を積み重ねた結果「はいはい、それね」と感じることが増え、「わあ!」と心躍るような初体験、という機会はぐんと減ってきました。 それはそれで、落ち着くけれど、ザワザワしない。心の脳みそも沸騰して、ワクワク、ドキドキ、ときめく存在を見つけて、今一度、かつての自分の“オタク心”を取り戻したい。
そういえば、最近、ドラマや映画をあまり観なくなりました。もちろん、ハマっている作品もありますが、好んで観るのは、ドキュメンタリー番組。登場人物のいきざまがリアルに味わえて、涙したり共感したりするとともに、「私の人生も相当、ジェットコースターだな…」と振り返ったりしています。
まずは、キュンキュンしそうなドラマや映画鑑賞から始めようかな。
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