女芸人 紺野ぶるまさんによる女観察エッセイ「奥歯に女が詰まってる」。GINGER世代のぶるまさんが、独自の視点で世の女たちの生き様を観察します。
第41回 「うち」から動かない女
「うち」に招きたがる女っている。
とにかく二言目には「またうち来てね」の女だ。
そんなに「うち」に呼ぶのだから、庭にプールがついていたりバーベキューができたりと、当然それなりの豪邸、な訳でもなく、そういう「うち」に限って小金井や川崎など一筋縄ではいかないところに所在していることが多い。
かかった時間に比例しない変わらない街並みに、一度見ただけでは記憶できないような建物の中の一室の、特別片付いているとかでもない玄関で、可愛い子供と「ようこそ」とマンキンで出迎えてくる。彼女たちはありのままの「うち」が大好きなのだ。
もちろん、子供がいると家で遊ぶのが楽なのは理解している。
しかし「久しぶりに会おうよ」の連絡に、必ず「今うちめっちゃキレイだから」とか「明日は旦那いないから」などと添えられていると萎えるのは否めない。
10代や20代前半の時間が無限にあった頃は、むしろ小旅行気分で浮かれて出向いていた。しかし30代に差し掛かかると仕事もそれなりに忙しくなり、そうもいかない。
聞いたことのない駅から聞いたことのない町の二丁目まで行くバスに揺られ、着いたら着いたで「仕事いつまでするの? 子供って可愛いよ」なんて諭された日には「meは何しに西東京へ?」と自問自答したくなる。
子育ての大変さを想像で理解し、都心で待ち合わせするのは申し訳ないと、今までそうしていたが、これを当たり前だと思っている彼女の非常識さを疑わずにはいられない。
「うち」への絶大なる自信やその鈍感さは、時に暴力だ。
「子供が会いたがってるから、早く来てよ~」はこちらにNOを言わせてくれない。
毎回「うち」でないといけない理由は本来ないのだから、何回かに一回は中間地点にするなど提案するべきだ。
行かないことで終わる関係ならそれまでで、そのアットホームな雰囲気で気付きにくいが、呼んだら来る「都合のいい女」にされている可能性が高い。子供部屋完成の写真や歯が抜けましたの口腔内ドアップ写真への返信は、3回に1回くらいで充分なのである。
最後に
“「うち」に招きたがる女”と掛けまして
“算数”と解きます。
その心はどちらも
“それなりに駆け引き(掛け引き)が必要”でしょう。
今日も女たちに幸せが訪れますように。
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