長く続けていた番組とお別れし、新たな道を歩くことになった田中みな実さん。今の心境とは。【連載「田中みな実のここだけ話」】
今回のテーマ:大切な番組を手放す日
この3月でTBSアナウンサーの頃から続けてきた2つの番組を退くことになった。8年以上もかかわってきた番組を去るのは想像を絶するほどの喪失感で、しばらく気持ちの整理がつかず年甲斐もなくワンワン泣いた。本来であれば退社のタイミングで後輩の局アナに明け渡さなければならなかったポジションを、番組の厚意で続けさせてもらっていた。これが本来のあるべきカタチ。新しい環境に身を置いたからには、あらゆる変化を受け容れなければ!と、何度も自分に言い聞かせては、失うものの大きさにまた涙した。
番組内にもじわじわとその噂が広まって、どこかの週刊誌が記事にした。『バラエティー降板。女優へ本格始動』…。気持ちが追い付かない。仲の良いスタッフから「やめちゃうの?」と声をかけられる度、どんな顔をしていいのかわからず苦しくなった。そんな私の様子を見かねた制作スタッフからある夜、電話がかかってきた。
「俺らみたいなバラエティー畑の人間が言うことじゃないんだけどさ、本当にお前のことを想ったら、今そっち(役者)に進むのは賢明なのかもしれないなって。俺らは人気者をキャスティングするし、そういう人たちと仕事をしていくじゃん。お前もよくわかってると思うけど、バラエティーに出続けるって本当に難しいことなんだよな。役者の道で地道に経験を積めばさ、ひょっとしたらこの世界でもっと長くみな実が活躍できるかもしれないじゃん? そう思ったら、俺らも受け容れて応援するしかねえよな~」って。私がまだ何者でもない新人アナウンサーの頃から仕事をしてきた彼の言葉は温かく、心のゴワつきをじんわり溶かしてくれるようだった。
無論、役者の世界が甘いものだとは思っていない。でも、局アナをやめた私はもはやアナウンサーではなく芸人さんやタレントさんのように才能があるわけでもない。自分の身を切り売りするような仕事の仕方がいつまでも続くことはないと当人が一番よくわかっている。手に職をつけて何者かになりたい。手放すことには、きっと意味がある。
大切なことに気付かされて景色が晴れた。大好きな番組、大好きな人たち、今まで本当にありがとう。
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