本格的に俳優の道を進み始めた田中みな実さん。今の心境とは。【連載「田中みな実のここだけ話」】
今回のテーマ:酷評
酷評だった。
SNSの類をやっていない私のところにまで続々入ってくる批判の声はドラマが回を重ねる毎に勢いを増した。現場スタッフはいつも変わらずにあたたかく迎え入れてくれたし、知っていたとしてもそんなことはおくびにも出さない。私の演技が作品の邪魔をしているとの視聴者の声はきっとその通りで反論の仕様もなく、情けない。街で「ドラマ観てます!」と声をかけられても「すみません…」と俯くことしかできず、スタッフ、共演者、ご覧いただいている方々に対して、ただただ申し訳なくて、不甲斐なかった。これは謙遜でも自虐でもない。
芝居への自信なんて元々ない。数年前、ご縁があって連続ドラマをやらせていただいてから、特に訓練を受けることもなく続けてきたこの仕事。このまま感覚的に俳優業を続けていくことに不安を覚え、今作に入るにあたり初めて演技のレッスンをつけることにした。人物のキャラクターについて十分に考え、台本にない部分を想像し、丁寧に丁寧に作り上げていく。ここまでしっかり準備をしてから臨むのは初めてのことだったから、クランクイン当日は自分に対してほんのり期待のようなものはあったと思う。多少なりとも手応えを感じていたはずだったのに、このありさま。芝居に携わるようになって初めて、悔しくてたまらなかった。元来根っからのドラマ好きで、今クール一番面白いと断言できるほどの名作にかかわらせてもらえたのに放送日が少し憂鬱だった。しかし画面からは沢山の問題点がみて取れて、落ち込んでいる暇はなかった。
試行錯誤するうちに張りつめていた何かがふわりと解け、中盤からは息ができるようになっていたものの、それでも最後まで達成感を得ることはできなかった。いつの日か、胸を張って私は「俳優です」と名乗れる日がくるのだろうか。道のりは果てしなく遠く、険しいことを思い知らされた。
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