動いてるときはもちろん、一瞬を写真で切り取っても絵になり華がある。それは技と精神を鍛え抜いた人だけが持つドラマティックな肉体美。表現者・大貫勇輔さんの哲学が刻まれたからだの秘密について、じっくりと伺いました。
からだそのものの在り方を常に意識する
ダンサーにとって使いやすいのは筋トレで鍛えた筋肉より、パフォーマンスによって自然に身についたしなやかな筋肉。そして、肉体を自在に動かすための絶対条件は体幹の強さです。
例えばジャンプをして写真を撮るときって、手先足先の末端をギュッと緊張させながら、ほかの部分はふっと力を抜いていく。これは浮遊感を出すテクニックで、その状態をキープするためにはやっぱり体幹を重点的に鍛えないといけないんですね。
また舞台でも映像でも、役を演じる場合は役によってどう動くか理由づけを考える。ラスボス的な役ならからだの重心を下げるとか、怒って威圧したいときは顎から動くとか、筋肉だけでなく骨格を含めた、からだそのものの在り方を意識しています。
食事は我慢という意識ではなく、ストレスを溜めないこと
今回、肉体を見せる撮影だったのでファスティングをしました。それで、改めて気付いたのは自分がいかに食欲の塊だったかってこと。
仕事柄、夜はなるべく炭水化物を摂らないとか食べすぎた日の翌日は量を減らすとか気をつけてはいたけど、思っていた以上に僕は食べることが好きだって実感したんです。だからこそ節制中は「我慢して食べない」ではなく「撮影があるから食べたくない」ってマインドにシフトしてストレスを溜めないことが大事。それができると本当にお腹が空かなくなる。つまり空腹は「内臓」じゃなく「脳」が感じているってこと。これは断食中の大発見でした(笑)。
好きなパーツは大きな「手」
自分のからだで好きなパーツを挙げるなら大きな「手」。昔は大きすぎてダンスや芝居の邪魔をしていると言われたのですが、それから「手」の在り方を考えるようになって。
例えば舞台で正面から手を見せるとき、小指が上に上がっているか下に下がっているかでエネルギーの伝わり方はまったく変わる。また、手をほんの少し動かすだけである種の「間」が生まれ、人の目を集めることができるんです。これはからだの不思議トリック。要はパントマイムのテクニックですが、それを計算して構築するようになってから「大きな手」は自分の武器になりました。
——ダンサーならではの“しなやかなからだ作り”の秘密、いかがでしたか? 今一度自身のからだと向き合って、自分らしいボディを目指しましょう。