『GINGER』の連載「KARINA’S GARDEN」のアーカイブを順番に振り返りながら、“あのころ”と“今”、ときには“これから”を語る「香里奈のひとりごと」。写真好きの香里奈が、連載用に撮り下ろしてきた思い出のショットも紹介します。
日本人に生まれてよかった
今まで、仕事やプライベートで幾つもの海外の街を旅してきました。かつては、外国のカルチャーに触れることばかりに夢中だったけれど、回を重ねるうちに日本と比較する視点も持つようになって、日本の良さとか好きな部分を感じることができるようになったことも事実。
日本の公共施設の清潔さとか、日本人の礼儀正しさとか、ごはんの美味しさを再認識。逆に、日本人のこういうところってどうなんだろう?という意識も生まれてくるし、引きで見ることで視野を広げることの大切さを実感することも。
そんななかで、四季の移り変わりが生み出す美しさは、私がこの国に生まれてよかったなぁと思うことのひとつでもある。
この連載で風鈴づくりを体験したときにも、風の動きを音で愛(め)でる日本人のロマンティックさに気付かされました。江戸風鈴の涼を誘う音色は、ノスタルジックだし、とっても癒やされる。このとき絵付けした風鈴は、今も大切に持っています。
10代のころは夏祭りも花火も、友だちと集まっていくこと自体が楽しくて、毎年出かけていたけれど。本当は人混みが苦手なので、このごろは季節のイベント的なものに出かける機会は少なくなったかな。
むしろ今は、日常生活のなかで四季を感じる時間と心の余裕を持つようにしています。たとえば、自転車で買い物に出かけたときに、あ、桜が咲きそう!とか、紅葉が始まってる!なんてことをキャッチしたり。日差しの強まり具合で夏を感じたり、肌寒いからもう夏が終わりそうとか。
雨の気配、風の匂い、空の色・・・それは、自分が実際に外に出て、自分自身で出歩くようになったから体感できること。移動する車窓からではわからない。
時間に余裕がないときは、家の近くにどんな木があって、どんな花が咲いているのかなんてことも、まったく知らなかったから。わざわざイベントに行かなくなったけれど、むしろ今のほうが、何だかとっても日本の四季を楽しめている気がします。
そして自転車は、私の生活圏を広げてくれて、楽しみを増やしてくれるツール。スーパーマーケットへも、自転車に乗って気軽に出かけています。
2012年の夏に、連載で外苑前のバイクショールームを訪ねたときも、すでに自転車の素晴らしさを綴っていました。
(自転車は)今まで見慣れたと思っていた
景色のなかにも 新たな気付きや
発見をもたらしてくれるから。
自転車という気分転換ツールがあれば、
これからの季節を
さらに心地よく楽しめそうだ。
自転車に乗ることは、単に目的地に行くための手段ではなくて、乗っていること自体も楽しみたい。食材の買い物で近所に出かけた帰り道は、ちょっといつもと違うコースを通ってみようかな、とか。新しい店ができているけど、何だろう?と覗いてみたり。住んでいる街の景色の変化にも、敏感になれるのです。
気が付かずに通り過ぎてしまうこと、その季節その時間にしか出合えないこと。日常生活のなかで、ささやかかもしれないけれど、大切なことをひとつひとつ感じて、見て、触れて。豊かな毎日を過ごすことができたら、と思います。