日ごろから“言葉”についてあれこれと思いを巡らせている壇蜜さんの連載『今更言葉で、イマをサラッと』第4回目。言葉選びと言葉遣いが、深く、楽しくなる。そして役に立つお話。どうぞお楽しみください!
その4『いいですね』
相づちのようにの「いいですね」と言われるとどことなく距離を感じてしまうのは、私がヒネクレモノだからだろうか。例えば「明日休みなので、夕方に整体へ行くんですよ。やっと予約がとれましてね」と言ったとき、相手が微笑みながら「いいですね」とだけ返答してきたら、「・・・はて、今の会話のどこの部分が『いい』と感じたのか・・・」と思案しかねない。ここまで己が情報を展開させて相手に伝えたのに、「いいですね」だけなのは、肯定の表現だったとしても何だか寂しい。「いいですね」と言われたところで「・・・うん。・・・やっとなので、楽しみです」くらいの返ししか出来ないだろうという、その後の会話の先細り予測も自動的にしてしまっているのかもしれない。
これがせめて「いいですね。私も行きたいですよ整体~」なんて返してくれたら、「最近行ってませんか」「ええ、ちっとも休めなくて」「あらー。忙しいですか」などと雑談タイムを続けられる。しかし中には集中したいことや考えごとがあり(もしくは私がそれほど好かれていない説も悲しいが入れておく)、どうしても「いいですね」だけでそれ以上続けられない精神状態なのかもしれない。なので、私は「いいですね」を聞いたときは、「気分じゃないのサイン」だと受け止めて少し距離を置くことにしている。これは誰が悪いわけではない。誰だってそんな日はある。
しかし読者の皆様が心身がまあまあ健やかな状態で「いいですね」を使うときには、聞いた相手によってはそんな考え方もされるかもしれないという可能性をどうか知っておいてほしいものだ。「いいですね」の後にはなかなか会話が続かない。そう、「いいですね」は肯定と終焉をはらんだ危険な相づちだったのだ。そこで、いいですねプラスワンの受け答えをおすすめしたい。「いいですね。~なんですか?」という相手の発言内容に沿った疑問文ならモアベターだろう。心身が疲れているときは・・・まぁ、そこは「いいですね。私は~で。活きのいいお話しができず申し訳ないです」などと早めに切り上げて、帰って風呂にでも入ったらいい。