女性医療ジャーナリストの増田美加さんによる連載。人生の基礎になる“健やかな体”を手に入れるための最新知識をお届けします。
花粉症の人にはつらい季節。日本気象協会によると、スギ花粉の飛散開始はそろそろ九州や四国、東海、関東地方の一部でスタート。花粉の飛散量は例年より多いとの予測も! 「今年こそ、もしかしたら治っているかも・・・」と淡い期待を抱き、薬を飲まずギリギリまで我慢しているという人も。でも残念ながら、花粉症をはじめアレルギーの病気は、発症すると治療しない限り、放っておいて治ることはありません。今すぐ行うべき、今年の花粉症対策をお伝えします!
まずは花粉の要注意日をチェック!
□ 天気が晴れ、または曇り
□ 最高気温が高い
□ 湿度が低い
□ やや強い南風が吹き、その後北風に変化したとき
□ 前日が雨
前日、または当日の未明まで雨で、その後、天気が急に回復して晴れ、南風が吹いて気温が高くなる日が要注意日です。(日本気象協会より)
ポイントは本格飛散が始まる前に、薬を飲み始めること
花粉症は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった症状のほかにも、眠気、イライラ、思考力低下といった症状もあるため、放っておかずに対策を行いたいもの。
10年以上花粉症に悩んでいる人が全体の5割以上という調査もあります。一度花粉症になると、体質だから仕方がないと諦めている人も多いようですが、日常生活に差し支えると感じている人は、治療することをおすすめします。
ポイントは、花粉が本格的に飛び始める前から、薬を飲み始めることです。これは西洋薬でも漢方薬でも同じ。
花粉が大量に飛散して、クシャミ、鼻水、目のかゆみなどのつらい症状が“出始める前”に対処する、ということ。ですから、今すぐ服用開始です!
「薬はできるだけ飲みたくない」「薬はギリギリまで我慢して、どうしようもなくなったら飲む」という気持ちはわかりますが、それは間違いです。症状が出る前から飲み始めれば、薬は少量で、あるいは弱い薬で効きます。
症状がひどくなると、少量では薬が効かなくなり、よりたくさんの量の薬やより強い薬を飲むことになり、かえって逆効果です。
眠気などの副作用が少ない、抗ヒスタミン薬が登場!
花粉症の対症療法の薬も、私たちにとって使い勝手のよいものが出てきています。
病院で処方されるスギ花粉症治療薬としては、「抗ヒスタミン薬」と「ステロイド鼻噴霧薬」が中心です。
‘90年以降に発売開始された抗ヒスタミン薬は、眠気や口の乾きなどの副作用がかなり少なくなっています。
一方で、病院によっては、それ以前からある眠気の出る抗ヒスタミン薬が処方されるケースもまだあります。市販薬にも眠気の出るものがまだ売られています。
病院で処方してもらうときや市販薬を購入する際は、「運転することがあるので眠くならない抗ヒスタミン薬を」と言って選ぶことが大事。
日本の鼻アレルギー診療ガイドラインで“理想的な抗ヒスタミン薬”は、「速効性があり効果が持続する。眠気や作業効率低下などの副作用が少ない。安全性が高く長期使用が可能。投与回数が1日1~2回で使い勝手がよい」ものとなっています。
“理想的な抗ヒスタミン薬”がありますので、ぜひそれを医師や薬剤師に伝えて、選んでください。
また、新しく医師処方薬で、貼るアレルギー性鼻炎薬(経皮吸収型アレルギー性鼻炎治療剤「アレサガテープ」)ができました。この薬は、血中濃度が安定し持続性があり、眠気の副作用も減るという意味でも期待できます。使用方法は、1回4mgの貼付剤を胸部、上腕部、背中、腹部のいずれかに貼って、24時間ごとに貼り替えるという使い方です。
大事なのは、治療開始のタイミング。花粉が飛ぶ数日前から薬の使用を開始すること。新たな治療の選択肢が増えたので、医師と適切な治療対策を早めに相談しておきましょう。
マスクとメガネは意外と有効!
花粉の飛散が始まってからのセルフケアで大切なのは、まずはピッタリとマスクをすることです。マスクは、すき間をあけず装着するのがポイント。塗れマスクなら密閉効果や乾燥予防にもなり、おすすめです。
メガネも有効な花粉対策になります。
また、目や口を洗うときは、塩素を含む水道水で洗うと粘膜を傷つけやすいもの。体液に近い生理食塩水(約0.9%の食塩水)や専用の洗浄液で洗いましょう。
ほかにも日常生活での対策は思っている以上に効果があります。ぜひ取り組んでみてください。
セルフケアは想像以上に効果があります
花粉症の症状を軽くするためには、治療とともに花粉が体内に入ってこないようにする注意や工夫が大切です。
外出時の対策とともに、花粉が家の中にできるだけ入らないようにすることも心がけます。
テレビやインターネットで気象情報や花粉情報をチェックして、花粉の飛散が多い日は、特に念入りに対策をしましょう。
1. 帽子、マフラー、メガネ、マスクを着用する
外出時は完全防備。帽子、マフラーも効果的。コンタクトレンズの人もメガネを。マスクも隙間がないようにピッタリと。
2. 花粉のつきにくいコートを選ぶ
コートも花粉の付きにくい表面に凹凸がない、ツルツルした素材を選びます。ウール素材などのコートは避けて。
3. 外出から帰ったら玄関外で花粉をよく払い落す
家の中に花粉を持ち込まないために、玄関前で、コートの花粉をよく払い落します。帽子やマフラーもよく払うのを忘れずに。
4. 帰宅後はうがい、洗顔、目を洗う
体についた花粉は、洗い流します。毎日の習慣として帰宅後はすぐに、うがい、洗顔、目を洗うことを心がけましょう。
5. 洗濯もの、シーツ、布団などは外に干さない
花粉の季節は、洗濯物は家干しが原則。特に、シーツ、枕カバーなどの寝具はまめに洗濯し、外に干さないこと。
6. 空気清浄機を玄関に使う
空気清浄機をできれば玄関にも置いて花粉を入れないようにします。また、乾燥すると花粉が舞いやすいので加湿器も効果的です。
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