女性医療ジャーナリストの増田美加さんによる連載。人生の基礎になる“健やかな体”を手に入れるための最新知識をお届けします。
「なかなか眠れない・・・体は疲れていて眠いのに・・・」「眠りが浅くて、しっかり寝た気がしない」「夜中に目が覚めてしまうと、目が冴えて眠れない」。春は睡眠の悩みを訴える女性の声をよく聞きます。睡眠の質も、女性ホルモンのバランスが崩れることが原因のことも。あなたの睡眠トラブルのタイプをチェックしてみましょう。
あなたの睡眠トラブルのタイプをチェック!
女性は、女性ホルモンの変動でさまざまな睡眠トラブルを抱えやすいことがあります。あなたの睡眠トラブルの種類をチェックしてみましょう。
□特に理由も原因もなく、眠れない
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「不眠症」
特に原因がないにもかかわらず、眠れない、眠りの質が悪い、夜中に目覚めるなどの症状が。30代~50代に多い。
□更年期の症状がある
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“更年期に伴う”不眠。女性ホルモンの分泌が低下することで、更年期の症状のひとつとして起こる不眠。不眠だけでなく、ほかにも更年期の症状がある場合をさす。
□うつ、不安など心の不調の症状がある
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「心因性不眠」
不安、落ち込み、うつなど、メンタルの不調があることによって起こる不眠。原因となる心の不調を治療することが大切。
□糖尿病、五十肩、頻尿、睡眠時無呼吸などがある
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“病気の症状に伴う”不眠。これらの病気が背景にあることで起こる、身体因性の不眠。原因となっている病気を治療しつつ、不眠の治療を行うことも必要に。
メラトニンやセロトニン不足が原因
隠れた病気や特に原因が見当らないのに、疲れていても眠れない、睡眠が浅くなる・・・。こんな睡眠トラブルは女性に少なくありません。
睡眠トラブルは、加齢や女性ホルモンの減少によって起こりやすくなります。女性ホルモンのバランスが崩れることで、メラトニンやセロトニンという睡眠にかかわる物質の合成や吸収が不十分になることが背景にあるのです。
セロトニンは、光を浴びることで活発になる神経伝達物質。心と体のバランスを保ち、情緒を安定させる働きがあります。
睡眠物質であるメラトニンは、セロトニンをもとに合成され、朝に日光を感じてから14~16時間後に分泌され始めます。
ふたつの神経伝達物質の体内合成や分泌をバランスよく促すために、日常生活の改善やセルフケアが、質のよい眠りを得るポイントともいえます。
つらいときはクリニックに受診することも大事
日常の生活習慣の改善だけで「即、不眠解消!」といかないことが多いのも事実。不眠は、体にも心にもつらいものです。ほかの病気を誘発しないためにも、早く眠れるようにすることが大切になります。
不眠は生活改善とともに、睡眠薬がよく効きます。精神科、心療内科、睡眠外来では、生活改善のアドバイスに加えて、睡眠薬による治療を行っています。
不眠を多く診ている医師は、不眠のタイプによって薬を使い分けて処方します。
睡眠薬の依存性、習慣性などを不安がる人がいますが、自分にあったものを正しく適量使用すれば、そのような心配はありません。
不眠タイプによって睡眠薬が異なります
①寝つきの悪いタイプ
②夜中に目覚めるタイプ
③朝方、早くに目覚めるタイプ
④熟睡感がないタイプ
など、不眠のタイプによって精神科、心療内科の医師は、お薬を使い分けて処方します。
薬を早くやめたいと焦って、自己判断してしまうと、せっかく改善した症状が再燃することもあります。薬の飲み方は必ず、医師に相談してください。
また、漢方薬を組み合わせて治療することもあります。その人の証(体質、タイプ)を診察して「抑肝散(よくかんさん)」、「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」、「加味帰脾湯(かみきひとう)」、「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」などが処方されることもあります。
次回は、自分でできる不眠改善のための生活改善法をお伝えします。
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