愛想笑いで受け流す日々にもうウンザリ――そんなあなたへ贈る虎の巻! 作家のアルテイシアさんにセクシュアル・ハラスメントへの対処法を聞きました。全5回の短期集中連載でお届けします。
体験談1:男性上司にしつこく迫られて困っています
読者アンケートを実施したところ、職場で「セクハラを受けたことがある」「セクハラと言えるか不明だが嫌な思いをしたことがある」と答えた人の合計は回答者全体の85%(※)。体験談のなかでも多かったのが、勘違い上司によるありがた迷惑なアプローチ。
「仕事終わりに食事に誘われ、やんわりと断ったのですが、そのあと待ち伏せまでされて。とても怖かったです…」(26歳/公務員)
「上司に通勤途中で待ち伏せされたり、しつこく食事に誘われたり、LINEを聞かれたりしました」(27歳/金融)
本人は悪気がないのかもしれないけれど…待ち伏せなんて怖すぎます!
〈初級編〉“ハシビロコウ顔”で塩対応を心がけよう
アルテイシアさんによると、セクハラ対応においてまず何より大事なのは「つい笑顔を出すクセ」を封印すること。
「いつもにこにこ感じよく、と教えられて育った人も多いと思います。でもそれを好意と勘違いする人もいるのが現実。反射的に笑顔を出すのをやめて、塩対応でいきましょう」
お手本は、ハシビロコウ!
「表情の動かなさ、そして威厳のある感じ…まさに理想の“真顔”です」
この表情をキープしながら、スパッと断る一言を。相手が明らかに恋愛感情を出してきている場合、一番簡単なのは「彼氏に悪いので」。この場合の「彼氏」は“脳内彼氏”でOK、つまり本当は彼氏がいなくても、いるテイで返してしまえばよいとアルテイシアさん。
「ホラを吹くのも大事です。これはあくまで護身術の一つですから」
あるいは新型コロナの感染状況を踏まえた「家族に高齢者がいるので」「医療関係者がいるので」や、「祖母が危篤で…」といった返し方も有効。
「ポイントは、ビジネスモードで返すこと。“大変恐縮ですが…”と前置きすれば完璧ですね」
〈上級編〉普段から“セクハラ撲滅ガチ勢”アピールをしよう
セクハラへの対処において、難しいのは相手との関係性。仕事上重要な相手に、嫌なことを嫌と伝えるのは難しいもの。読者アンケートでも「職場の雰囲気を壊したくない」「気まずくなったら働きにくい」といった理由で、セクハラを受け流しているという声が多数寄せられました。
「その場でスパッと断るのが難しいようであれば、日頃から予防線を張っておくのもいいと思います。例えば『友人が上司にしつこく誘われてるらしいんですけど、セクハラですよね〜』『力関係を利用するなんて許せない』と話題にするのはいかがでしょうか」
相手が年の離れた上司の場合「おじさんは恋愛対象外」アピールも必要かも。「軽々しく誘ってはいけない人」になれたらひとまず安心。そして、そんな女性が増えていけば…いつしか勘違いおじさんは撲滅されるはず!
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それでは復習です。男性上司からのしつこいお誘いには、
・“ハシビロコウ顔”で塩対応
・普段から“セクハラ撲滅ガチ勢”アピール
この2ステップを心がけましょう。
嫌なものは嫌。自意識過剰と思わなくていい
とはいえ、「たまには腹を割って話そう」「仕事の話をじっくり聞かせて」――そんな言葉で飲みに誘われると、これも必要なコミュニケーションなのかな? セクハラと決めつけるのは悪いかも? と感じることもあるかもしれません。アンケートでは、「自意識過剰なだけかもと思い、断れない」という声も。でも、嫌なら我慢する必要はないとアルテイシアさん。
「部下の女性と一対一のコミュニケーションが必要と感じたとして、まともな上司なら、普通に会議室を使ったり、食事であればランチにしたり、複数人を誘ったりといった気遣いをするでしょう。それがない時点で、アウトなんです」
悪いのは、あなたを悩ませる側。さあ、鏡の前で、ハシビロコウ顔の練習を!
アルテイシア
作家。神戸生まれ。近著に『モヤる言葉、ヤバイ人~自尊心を削る人から心を守る「言葉の護身術」』(大和書房)、『フェミニズムに出会って長生きしたくなった。』(幻冬舎文庫) など。フェミニズムにまつわる軽快な語り口のエッセイが人気で、「モヤモヤがすっきりした」「ハラスメントにNOを言えるようになった」など救われる人が続出!
※ アンケートはGINGERサポーターを対象に実施。55名から回答を得ました。「職場でセクハラを受けた経験はありますか?」という設問に対し、20名が「ある」、26名が「セクハラと言えるか不明だが嫌な思いをしたことがある」と回答しました。