美術を面白おかしく、わかりやすく解説する“アートテラー”として活躍するとに~さんによる連載。今回は、アートな足元事情について。
こんばんは。アートテラーのとに~です。美術館に関わる仕事に携わったときから、いつかはやってみたいと思っていた仕事がありました。それは、音声ガイド。おかげさまで、ラジオもレギュラー出演させていただいていますし、Podcast番組もそこそこ好調ですし、“どこかからお声がかからないかなぁ”と淡い期待をしていたところ、福島県にある諸橋近代美術館さんからオファーをいただきました。「これまでにない音声ガイドにしてみたいので」とのこと。さすが、世界3大ダリ美術館の1つに数えられる諸橋近代美術館。考えることが奇才です。僕が担当しているのは、美術館の6人のキュレーターが部屋の住人となり、コレクションを6つの部屋にわけて紹介するという斬新な展覧会『コレクションをめぐる6つの部屋 ルームス』の音声ガイド。6人のキュレーターさんからお便りが届いて、それを読み上げる。架空のラジオ番組風の音声ガイドとなっています。もし、美術館を訪れた際には、ぜひご視聴いただけましたら幸いです。こちらの音声ガイドは無料ですので!
さてさて、話は変わりまして。美術館を訪れた際のもう1つのお楽しみ、ミュージアムショップ。そこでは美術館のオリジナルグッズがズラリと並んでいます。一昔前は、ポストカードやクリアファイル、一筆箋が主流でしたが、ちょっと前からTシャツやスマホカバー、トートバッグなどが増えました。そして、今年に入って、ちらほらと見かけるようになったのが、オリジナルソックス。もしかしたら、これからアートなソックスは主流になるのか?ということで、ぜひチェックしておきましょう。
ダリがチラリ
僕を音声ガイドに起用するくらいに、チャレンジ精神に富んだ諸橋近代美術館。オリジナルグッズでも、チャレンジ精神をいかんなく発揮しており、これまでに、ダリがよくモチーフにするアリがびっしり描かれたマグカップや、ダリをオマージュした「ひげこけし」、会津の郷土玩具・赤べこに着想を得て生まれた「ひげべこ」など、独創的なグッズを次々に制作しています。
そんな諸橋近代美術館の2022年最新グッズが、ダリ刺繍靴下。ダリの肖像の刺繍がワンポイントとなっています。履いてみると、ダリの顔はくるぶしのあたりに。歩くたびに、パンツの裾からダリがこんにちは。実にシュールな光景です。
諸橋近代美術館
https://dali.jp/
選べるアートソックス
この夏、六本木の国立新美術館で開催されている話題の展覧会『ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション』。ドイツ第4の都市であるケルン市が運営するルートヴィヒ美術館のコレクションから、珠玉の名品の数々が来日しています。日本でこそあまり知られていない美術館ではありますが、そのコレクションの質は高く、美術界では一目置かれる存在です。特にピカソコレクションは、世界で3本の指に入るコレクションと称されるほど。展覧会には、その中から厳選された8点のピカソ作品が来日しています。
さて、この展覧会の数あるオリジナルグッズのなかでオススメなのが、会場でしか買えないアートソックス。全4種。
ロシアアヴァンギャルドを代表するカジミール・マレーヴィチの《スプレスム 38番》や、ジャクソン・ポロック《黒と白 No.15》、モーリス・ルイス《夜明けの柱》がデザインされたものは普段使いできそうな気がしますが、マックス・ベックマンの《恋人たち》は、う~ん……(注:個人の感想です)。レディースとメンズ、両サイズあるので、ペアで買って恋人たちで履くのもいいかもしれませんね。
国立新美術館
https://www.nact.jp/
足元にはにわを
最後に紹介したいのは、ミュージアムソックス界(?)のロングセラー商品。2014年から東京国立博物館(通称トーハク)で発売されているはにわソックスです。モチーフとなっているのは、トーハクの膨大な所蔵品のなかでも特に人気の高い《埴輪 踊る人々》です。一足、なんと¥440。販売当初は茶・赤・緑の3色でしたが、今では青・オレンジ・黒・からし色も増え、7色展開に! 財布に優しく、そして、カラーバリエーションも豊富ということもあって、ある年は6,000足以上売り上げたというトーハクの隠れた人気商品です。
見た目はとても可愛らしい靴下なのですが、履いた瞬間に、はにわに見えなくなるのが玉に瑕です。何だチミは?
東京国立博物館
https://www.tnm.jp/
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