週末の過ごし方で、来週の気分はきっと変わる。だからこそ、観る映画にはちょっとこだわりたい。気分転換にも、インスピレーションにもなる一本をピックアップ。今回は、7月24日(金)公開の映画『隣人たち』をお届け!
完璧な母親を求められて

映画『隣人たち』は、隣人同士の疑念と妄想が交錯するサイコ・スリラー。物語の舞台は1960年代のアメリカ郊外。主人公は、郊外で隣り合って暮らす親友のセリーヌ(役/アン・ハサウェイ)とアリス(役/ジェシカ・チャステイン)。それぞれ一人息子を育てながら穏やかな日々を送っていたが、セリーヌの息子が事故で命を落としたことをきっかけに、ふたりの関係は少しずつ歪み始める。悲しみに沈むセリーヌと、彼女の行動に違和感を覚え始めるアリス。果たしてセリーヌは本当に危険な存在なのか、それともアリスの不安が生み出した妄想なのか。
私たちはアリスと同じように疑い、戸惑いながら物語を追いかけることになる。アカデミー賞俳優であるジェシカとアンは、実際に親友でありながら、互いを疑い、支え合い、傷つけ合う複雑な関係性を見事に体現している。とりわけ、喪失によって崩れていく心の揺らぎや、母としての愛情が別の感情へと変質していく過程には引き込まれる。

また印象的なのが、作品全体を包み込む美しいビジュアル。色彩を抑えた上品な映像、丁寧に再現された1960年代の住宅街、そして当時の中流家庭を思わせる衣装の数々。特にふたりのワードローブは、それぞれの性格や立場を映し出す装置としても機能しており、眺めているだけでも楽しい。舞台となる二軒の家のインテリアや小物まで細やかに作り込まれていて、まるで当時のホームドラマの世界に入り込んだような感覚になる。
ただ、その美しい世界は次第に不穏な色を帯びていく。監督のブノワ・ドゥロームは、ヒッチコック作品を思わせるクラシカルな空気感を取り入れながら、誰を信じればいいのかわからない緊張感を巧みに描き出す。まるで理想のアメリカンドリームにひびが入っていく様子を映しているかのように。

サスペンスとしての緊張感はもちろんだけれど、本作が描いているのは母親であること、妻であること、そして女性として生きることの息苦しさなのかもしれない。合わせ鏡のようなふたりが、あっという間にまったく違う場所へたどり着いてしまう。その残酷さが、『隣人たち』を単なるスリラー以上の作品にしている。
【7月24日公開】映画『隣人たち』

監督・撮影監督/ブノワ・ドゥローム
脚本/サラ・コンラット
出演/ジェシカ・チャステイン、アン・ハサウェイ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ジョシュ・チャールズ
原作/オリヴィエ・マッセ=ドゥパス『母親たち』
配給/ギャガ
※TOHO シネマズ シャンテほか全国順次公開。
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