美術を面白おかしく、わかりやすく解説する“アートテラー”として活躍するとに~さんによる連載。読者の皆さまからの質問も随時受け付けています! 今回は、某有名テレビ番組のナレーションの声で脳内再生しながらお読みください。
こんばんは。アートテラーのとに~です。
9月になりました。季節は秋。いよいよ芸術の秋到来です。
…あれ、同じことを、ついこないだにも言っていたような?? 昨年の「芸術の秋」から、もう1年経つのですね。時が経つのは早いものです。
さて、本日は美術に関するトリビアをご紹介。「生きていく上で何の役にも立たない無駄なアート知識、しかし、つい人に教えたくなってしまうようなトリビア」の数々を紹介いたします。
掛軸の上から垂れ下がっている2本の細い布は、
「掛軸の上から垂れ下がっている2本の細い布は、ただの飾り」
掛軸にはたいてい、上のほうから2本の細い布が垂れ下がっていますね。あれは「風帯(ふうたい)」と呼ばれています。くるくると巻いた掛軸を縛って保管するためのものと思い込んでいる人が多いのですが、実はあれは単なる飾り。結ぶための紐はほかにあります。
風帯が生まれた理由には諸説ありますが、もっとも知られているのは、ツバメ除けだったという説です。その昔、中国では屋外で掛軸を鑑賞する風習がありました。そこにツバメがやってきて、巣を作ってしまうことも。それを防ぐため、ひらひらするモノを恐れて近寄らないというツバメの習性を活かして、2本の細い布を取り付けるようになったのだとか。やがて掛軸は中国から日本に伝わりますが、風帯はその名残として、装飾の意味合いで付けられています。
意味はありませんが、これからも風帯をよろしくお願いいたします。
板橋区立美術館には、
「板橋区立美術館には、山田孝之にそっくりな作品がある」
その作品とは、江戸時代に描かれた作者不詳の《蘭人少年像》(歸空庵コレクション・寄託)。オランダ人の少年の肖像と、帆船、馬に乗る人が組み合わされた掛け軸です。
どんな作品なのか、実際にご覧ください。
確かに、想像していたよりも山田孝之に似ていました。似すぎていたかもしれません。
ちなみに、ここまでに紹介した2点の掛軸は、板橋区立美術館『館蔵品展 はじめまして、かけじくです』(2021年6月5日~7月4日)の出展作品。現在、当館では『館蔵品展 目力展 見る/見られるの関係性』(2021年8月28日~10月3日)が絶賛開催中です。
陶芸家が着る服は、
「陶芸家が着る服は、綿製品が多い」
800~1,500度の高温になった窯に近づくことが多いため、化学繊維の服を着ていると、火の粉が飛び移り、燃えてしまうことが少なくないのだそう。そのため自然と、化学繊維を避け、服を選ぶ際には綿製品を選びがちな傾向があるそうです。
ちなみに、最近聞いたばかりの“陶芸家あるある”でまだデータ数は少ないのですが、「陶芸家は、眉毛やまつ毛が燃えがち」なのだそう。これもやはり火に近づく機会が多いゆえ。
陶芸家の皆さまは常に火と闘っている。
日本で初めて人間ドックを受けたのは、
「日本で初めて人間ドックを受けたのは、日本画家の東山魁夷」
東山魁夷といえば、《道》や《緑響く》といった作品で知られる国民的風景画家です。
そんな東山魁夷が、なぜ人間ドックを受けることとなったのか。その経緯は、1954年に人間ドックと名付けた健康診断システムを国立東京第一病院(現・国立国際医療センター)と共同で開発し、定着させた保健同人社の公式サイト内『人間ドック誕生秘話』に記載されています。
それによると、人間ドックの試運転に参加したのは、政治評論家の細川隆元氏、ロイター通信記者の恒川真氏、そして『保健同人』の表紙絵を担当していた東山魁夷の3人。この3人が「その後の健康管理に役立つ貴重な収穫が得られた」と高評価を下したことが、人間ドックという医療システムの誕生に繋がったのだそうです。
東山魁夷は検査風景にも大きな影響を与えていた。
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