NY在住のエディターライター山田ヒロミさんが、気になるトピックスをレポート。今回は、注目のスポットをフィーチャーします。
6月に入るとすっかり夏模様のNY
去年の今頃は、コロナで緊迫した空気が漂っていましたが...今年は、すでにワクチン接種完了者は屋外でマスク着用が不要になったうえ、レストラン、博物館、美術館、ショップやオフィスなどでの収容人数制限もなくなったことで、人々が街に繰り出し活気が戻りつつあります。むしろ、公園やバーなどはふだんより賑わっていて、ちょっとコロナバブルが始まっているような?
そんななか、NYでは観光業の復興に向けた「ワクチン・ツーリズム」という試みも。なんと、一部の外国人観光客もワクチンの接種が可能というものなのです。
早速、私の周りでも、日本から旅行の予約を入れた人や、すでに接種しに来た人もいたり...。さすがに観光気分で浮かれるにはまだ少し早いかもしれませんが、でもせっかくNYに来る機会があるなら、ぜひチェックしていただきたい新スポットをご紹介したいと思います。まだしばらく旅行はちょっと...と躊躇している人も、そう遠くはない“いつか”にNYを旅する妄想を膨らませていただければ!
ハドソンリバーに浮かぶ緑豊かな公園
NYの観光スポットといえば、マンハッタンの西側に位置するハイライン(高架鉄道跡地を再開発した空中庭園)や商業施設のハドソン・ヤードがすっかりお馴染み。今回ご紹介するのは、そんな2ヵ所ともほど近いウエストチェルシー、ミートパッキンエリアを抜けたあたり(13丁目と14丁目の間のあたり)のハドソンリバーに出現した水上公園、その名も「Little Island」(リトルアイランド)。名前のまんま(笑)小さな島のような公園です。
コロナ禍でも着々と工事を進め、コロナに対する規制の緩まった先月5月21日に満を持して一般公開! オープンしたばかりの最新スポットです。
この公園の設計は、イギリス人デザイナーのトーマス・ヘザウィック(Thomas Heatherwick)と造園建築家のマシュー・ネルソン(Mathews Nielsen)が率いるMNLA。ヘザウィック氏は、ハドソンヤードにある巨大なインスタレーション「ベッセル」を設計したデザイナーで、MNLAは過去にもご紹介したことのあるガバナーズアイランドや、リンカーンセンターのパブリックスペース、最近ではJFKにできたブティックホテルTWA Hotel などで数々の賞をとっている有名な造園建築事務所です。(どうりでオシャレなはず)
2012年に構想されたこの公園の建設資金は、主に億万長者のバリー・ディラー(Barry Diller)とその妻でデザイナーのダイアン・フォン・ファステンバーグが設立した財団の寄付金によるもの。
このエリア一帯のハドソンリバー沿いには「ハドソンリバーパーク」と呼ばれる公園があって、ピアにナンバーがついた埠頭や桟橋が点在しているのですが、2013年のハリケーンサンデーによって歴史的建造物だったピア54を含むこのエリアもダメージをを受けたため、ピア55にリトルアイランドを造ることは、その復興事業でもあるのです。
かつては橋脚だった、海から突き出た木造杭をそのまま増強してその上に公園を造ることによって、水に浮かぶ葉っぱのように見えるよう設計デザインされたそうです。既存のものを維持することによって、水中生物の生息地も守るという、これまた環境にも配慮しているわけですね。
さらに、この島(公園)の魅力は、水と緑が豊かなことでもあります。2020年のロックダウン前から植栽をはじめ、現在は350種以上の花、樹木、低木が植えられ、いくつかの木は高さが50~60フィート(約18メートル)くらいまで成長するそうです。春にはチューリップ、秋には紅葉と、四季も味わえるという、まさに都会のオアシス、癒しのスポットですね~。
野外ステージでは劇場鑑賞も
そして、この島のもう一つのウリは、いくつかのパフォーマンススペース。なかでも一番大きいのは、687席のアリーナになっている野外ステージ「The Amph」。有名な芸術団体やアーティストが手がけるイベントが催されるそう。
オン&オフブロードウェイで活躍した俳優が率いるショー「ブロードウェイインスピレーションボイス」や、「アメリカンバレエシアター」のプログラムなども上演予定。水辺で見るパフォーマンスとはどんなものなのか、私もぜひ鑑賞してみたいと思っています。リハーサル風景も観れるそうですよ。
チケットの通常価格は65ドルで、ウエブサイトから購入できます(TKTSでのディスカウントチケットも発売される予定だそうで、そちらで買えばお得な25ドル)。プログラムによっては、無料のものもあるので、ウェブサイトでご確認を!
なんだか秘密の庭園のような雰囲気の「The Glade」。ここでは、小さめのパフォーマンス、トークショーや演劇、ダンスや音楽のワークショップなども行われるそうです。小さなステージとベンチと芝生があり200人ほどが座れ、丘のような芝生の斜面では日光浴もできそう。南側から見えるひと味違った街の景観もお楽しみの一つ。
遊び場感覚のフリースペースはフードも充実
こちらは、公園に入ってまず到着するエリアで、誰もが通過することになる「The Play Ground」。ここには、ローカルフードを扱う屋台とカラフルなテーブル&チェアが並びます。ちゃんと日陰になっているところも、これからのシーズンは気が利いてますよね。
フードを堪能できるだけではなく、ソロミュージシャンやオペラ歌手、バブルアーティストなどのパフォーマンスや、子供向けのアートカートが出ていたり、ビンゴゲームから深夜のDJまでと盛りだくさん。しかも、ここでのパフォーマンス鑑賞はすべて無料!
さて、気になるフードですが、プレイグラウンドにはローカル発の屋台が3つほど出店。朝7時から夜11時まで、あらゆる年齢層向けのメニューが味わえます。もちろん食材もすべて地元からの調達。
リトルアイランドの訪問者専用につくられたワイン、ビール、ハードセルツァー、ワインまたはビールベースのカクテルメニューもあり。もちろん、サステナビリティやエコについても、きちんと考えられています。
前出の「The Grade」では、フードイベントなどもキュレートして、NYを拠点とする業者、農家、シェフたちをバックアップ、応援していく予定だそう。
朝に散歩がてら立ち寄って、上の写真のようなヘルシーな朝ごはんをとるもよし。カクテルやビールなども揃うので、仕事帰りに夕日を見ながら一杯飲むもよし。
6月現在のNYの日没は20時20分ごろ、夜のライティングもロマンティックで素敵です。混雑を避けるため、昼12時~夜20時までの入場は予約制ですが、午前中と20時以降は自由に入れます。公園に入るだけなら無料。夏が終わったら、ひとまずクローズして、さらに増築してパワーアップするようですよ。常に進化するNYの魅力は尽きることがありません。
Little Island
https://littleisland.org/
ワクチンを打ったとはいえ100%プロテクトされるわけではないので、なるべくマスクは着用していたいと思っています。アジア人へのヘイトクライムや、不況により以前より治安が悪くなってきていることも残念ながら事実なので、安全対策もしっかりして、健康的なアクティビティでNYの夏を楽しみたいですね。
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