小説から漫画までジャンルを問わず、本好きとして知られる女優 多部未華子さんの連載「多部未華子がBOOKコンシェルジュ!」。読者からの本選びの相談や質問に応えて、オススメ本をご紹介します。
vol.40 裁判もの、法廷が舞台の小説を読んで、ハラハラしたいです
《読者からのリクエスト》
最近、法廷を舞台にしたドラマにハマっています。これを機に、法廷ジャンルの本にも挑戦したいと思っています。多部さんのオススメ本を教えてほしいです。
《多部さんのオススメは…》
“目の前が明るくなる感覚は新鮮!
読書の幅を広げてくれたミステリー”
小泉喜美子さんの『弁護側の証人』を読んでみました。ヌードダンサーの漣(なみ)子は財閥の御曹司・杉彦と結婚し玉の輿に乗るが、義理の父である龍之助が何者かによって殺害される。一体真犯人は誰なのか・・・!? そんなミステリー小説です。
これは正直・・・ものすごく難しかったです・・・。難しすぎて最後の解説まで読んで知ったのですが、どうやらこの小説は昭和三十年代に書かれたもので、年配のファンがたくさんいる隠れた名作だったのです。少し前の小説だからというわけではないですが、私にとってはなんとも文体に馴染みがありませんで・・・。真犯人を暴く以前に難しい文章がなかなか頭に入ってこないということが一番にあり、かなり苦労しながら読みました。
こういう難しそうな小説を通ってこなかったというか、避けてきた部分があるので、今回ばかりはよし!と挑戦心を持ち気合を入れて読み始めたのですが、とにっかく難しい・・・。時間がかかりました。
本の帯に、「騙しの名作!」と書かれていたので、最後の最後にどんでん返しか、はたまた何か文章の中でトリックがあるのだろうと、性格が捻くれている私は、「絶対騙されるものか! 気付いてやるぞ!」と思いながら読み進めていたのですが、内容を理解していくことに必死でそれどころではありませんでした(笑)。
がしかし、終盤にきて個人的にはさらにややこしい文章と、どこか少し不思議な気持ちと違和感に苛まれたんです。苦悩しながら読んでいると・・・「あーー・・・そういうことだったのね・・・」と、ふわっと目の前が明るくなる感覚になりました(笑)。小説を読んでいて、目の前が明るくなるなんてなかなか味わえない感覚です(笑)。
いい女の漣子に対して、杉彦が救いようのないクズで、その親族が嫌な人ばかりだったり・・・登場人物も印象的でした。
ミステリー小説って、最後まで読み切るとまた序章を読みたくなってしまうというか、答え合わせをしたくなってしまいますよね。この小説も見事にそんな本でした。
今回は難しくて苦労しながら読みましたが、ふわっと明るくなる感覚ってすごくいいなと思ったので、これから私も読書のジャンルの幅を広げて、難解な本にも前向きに手を伸ばしていきたいなと思います!!
今回のオススメ本はこちら!
財閥の放蕩息子に見初められ結婚した漣子は、慣れない生活に息苦しさを感じていた。そんな折、財閥当主が殺される。殺人罪の裁判の行方は? 驚愕のどんでん返し! 日本のミステリー史に燦然と輝く、伝説の名作。
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