レトロものが気になる! by ジョバンナ洋子

世の中の気になる動きを、誠実モットーでお伝えするコラム「ま、一杯飲んでベッラ ヴィータよ」。舞台は南麻布の架空のバー「Bar D’Amore(バール ディアモーレ)」。ジョバンナ洋子ママの鋭くも優しいトークは、昨今深めに進行中。
第23夜のお客様は、アナログ派のアラサー女子。さて、今宵はどんな話で盛り上がることやら。

【第二十三夜】教養があなたを救う

ボナセ〜ラ。皆さん、お元気かしら? ま、元気もなにも、いま世界中がそれどころじゃないって話よね。一ヵ月前は、不寛容で閉塞感のある時代のリフレッシュ法をお届けしたわけだけど、今度は疫病よ。本当に想像もしなかったような事態になっているわよね。もちろんウイルスから身を守ることが最優先だけど、経済的な打撃を考えると、今まで以上に先行き不透明。特に私のようにファッションっていう生き死に関係ない業種、あとは観光や飲食、娯楽なんかはどう考えても影響が大きいと思うわ。

「こんばんは。おじゃましていいですか。やっぱり静かですね・・・・・・」

ま、ウチなんて、そもそもボチボチやってるから、そんなに変わらないけど。周辺の飲食業の方たちは大口イベントがキャンセルになったり、結構大変そうね。

「そういえば、ジョバンナさん、インスタをのぞいたらNYに行かれてましたよね?」    

そうね、取材で。寒さを覚悟してたんだけど、今年は向こうも暖冬で助かったわ。    

「NYではコロナはどんな感じでした?」

3週間くらい前だから、まだそこまで本格的になってなくて不安度も低かったせいか、ウーバーのドライバーにキャンセルされたって人はいたけど、特に平常だったわ。でもその後のミラノではレストランで入店拒否されたり、エレベーターで一緒になったら露骨に息を止められた、なんて話も聞いてるわよ。    

「でももうアジア人だから、とか言ってる場合じゃないですよね、イタリアも」    

そうよ、今度はヨーロッパのなかで、逆にイタリアの人たちが差別を受けないことを祈るわ。    

「コロナに関しては、いろいろな説をネットでも読みますが、世の中が人間のエゴで発展しすぎてしまったことへの警鐘なのでしょうか」

ようやく環境保護やサステナビリティの精神が、一般にも浸透し始めたところだったけれど、「ほら、またトレンドとしてそんなことを言ってやしないか?」って、きっとそれを含めた何かメッセージなのかもしれないわね。    

心落ち着く、レトロな味わい

「こんな状況なので、週末出かけるのも微妙で・・・・・・」

確かにこういう不安があると、なんだか物欲もわかないものよね。    

「そうなんです。なんとなくリラックス系の施設でくつろぐのも心配だし」    

私は最近、今まで以上に昭和レトロなものが気になって。特に70年代後半から80年代頭のあたりが好きだから、妄想トリップを楽しんでるわ。    

「わかります! 私も最近VHS風の動画が撮れるアプリ入れちゃいました」    

カフェじゃなくて喫茶店に行くのよ。落ち着くから〜。そこであのちょっと苦さのあるカラメルソースがかかったプリンをオーダーするの。クリームブリュレは苦手。食事でも大好きなイタリアンさえ、最先端より何十年も街で愛されているようなオーセンティックな店に行くことが多いわ。    

「なんでしょうね、私もあのピカピカで威圧感のある最新ものより、レトロなほうが気分です」

まあね、私は実体験してるんで、反芻してる感(笑)。ノスタルジーでもあるんだけど、懐かしくて新しいのよね。マニアックな人が、そういう時代の建築で現存しているものをブログで紹介してるんだけど、ぐっとくる意匠があったりするの。    

「ヴィンテージのジュエリーも素敵ですよね。服はモード上級者って感じで難しいけど、アクセサリーは取り入れやすいし」    

そういえば、私もNYのヴィンテージショップで買い物したわ。犬型のとぼけたソルト&ペッパーがあって、思わず連れて帰ってきたんだけど、東京に戻ってきてよくよく見たら、50年代の日本のものだったっていうオチ(笑)。    

「ホントなんでも新しければいいっていう一辺倒の価値観だけじゃないですよね、正直、私は渋谷より清澄白河のほうが落ち着きます」    

今日は良かったわ、意見が合って。とにかくこんなときだからこそ、昔の本を読んだり、映画を観たり、過去を見つめ直すいい機会にしなくちゃね。そこから見えてくるものがあるはずだから、めげずに頑張りましょ!  

古きを温めて新しきを知る 

なんていうか価値観って年齢では区切れないのよね。今日の子羊もだけど、この前も仕事でたまたま20歳の若手俳優の男の子とディナーをご一緒したんだけど、その子もやっぱりヴィンテージに興味があって、新しすぎるものより古いものを大切に考えてたわ。

温故知新っていうのかしらね、戦争の時代を生き抜いてきた先人の話に耳を傾けたり、偉業を成し遂げた人の伝記を読んだり、こういう苦境を乗り越えるための知恵は、必ず歴史のなかにヒントがあるはずよ。そんな古めかしい話、なんて思わずに、こんなことでもなければ意味もなくフラフラ出かけてた時間を有効に使いたいわね。

【今宵の一杯】
ピエロパン アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ

今回ご紹介するのは、白ワインのソアーヴェで知られるヴェネト州ヴェローナ近郊で、1860年から家族経営を続ける老舗ピエロパン家の一本。当然のことながらソアーヴェ クラシコでは他の追随を許さない最高峰の味わいを作り続けるワイナリーが、満を持して手がけた赤ワインが、この「ピエロパン アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ」です。    

アマローネとは、ヴェローナ近郊ヴァルポリチェッラ地区で陰干ししたぶどうを使用してつくる伝統的な赤ワイン。十分に熟したぶどうを手摘みで収穫し陰干ししてから使うため、水分が凝縮されるため生産量が少なく、手間もかかるそう。その希少性ゆえ、古くは王族や貴族しか味わうことができなかったのだとか。    

濃いルビーレッド色で、ブラックチェリーやブラックベリー、プラムを思わせる豊かな芳香を放ちます。食後にも向いているリッチでまろやかな赤ワインを、歴史をひも解きつつ頂くというのも格別な時間になりそうです。    

●Pieropan Amarone della Valpolicella
ヴェネト州
コルヴィーナ60% コルヴィノーネ、ロンディネッラ、クロアティーナ30% 、その他10%
 750ml ¥7,500(参考小売価格)

お問い合わせ先
フードライナー TEL:078・858・2043

文/ジョバンナ洋子
イラスト/ユリコフ・カワヒロ

ジョバンナ洋子
ナビゲーター
ジョバンナ洋子
移ろいゆく世の中を見守る、元お叱りバー(架空)のママ。本業はファッションエディター。 GINGER Webでの連載も3年目に突入しリニューアル。各地で遭遇する日常の事件をきっかけに感じる新しい価値観を、ユニークに伝えていく。
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