今を大切に、一緒にいる時間を愛情たっぷりに ~多部未華子の読書案内

小説から漫画までジャンルを問わず、本好きとして知られる女優の多部未華子さん。アラサーの彼女が、同世代女子からの本選びの相談や質問に応えて、オススメ本を紹介します。  

Q. アラサー女子からのリクエスト    

動物が出てくる小説に癒やされたいです

ひとり暮らしで、在宅ワーク中です。孤独感が募り、実家の愛犬に会いたい気持ちが高まりますが、他県なので移動もままならず。せめて小説のなかで、動物に癒やされたいのですが、おすすめ本はありますか?


本当に何があるか分からないご時世、
愛犬との今も大切にしたい

動物に癒やしを求めるのなら、動物関連の本を読むよりも動物を飼った方がいい!と言いたいところですが、どんなに小さな生き物でも大切なひとつの命。そんなに簡単に飼えない方もいますよね。

学生の頃に、実家近くのスーパーで見つけ飼い始めたトイプードルのあっぽくんはもう13歳で、目が見えなくなり、耳も遠くなってしまい、よぼよぼのおじいちゃんですが、今も元気一杯で変わらず癒やしの存在です。実家に帰った時はぎゅーっと抱きしめています。

以前は私のことを認識して、実家に帰る度にわーっと駆け寄ってくれていましたが、今はもう分かっていないように思います。誰だろうと思いながら近寄ってきている感じがとても寂しいですが、それはもう飼う時から覚悟していること。寂しがっているだけではいけません。

私は基本的に、動物を題材としている映画や小説にはあまり触れないようにしています。よほどのことがない限り、観ないし、読まない。なぜなら、触れてしまうと、どうしても、自分の家で飼っているトイプードルの華ちゃん、実家のあっぽくん、そして最近仲間入りしたキャバリアのぺんくんに重ねてしまうからです。

江國香織さんの『つめたいよるに』という短編集の中にある「デューク」というお話は、江國さんの作品の中でも有名でしょう。デュークという牧羊犬が亡くなってしまい悲しみに暮れている女の子が、ある少年と出会ってデートをするお話で、皆さんもタイトルを耳にしたことがあるかもしれません。

解釈は人それぞれでしょうが、もし自分の愛犬が亡くなってしまって、私にもこういう奇跡のようなことが起きたら、心が落ち着いたりするのかなぁと思いました。

動物を飼う時は、最期の最期までしっかり面倒を見ることが当たり前ですし、その覚悟で家に迎えるものですが、愛犬達の最期を想像するだけで、無条件にうぅと涙がじんわり滲んでしまいます。

本当に何があるか分からないご時世ですから、今を大切に、一緒にいる時間を愛情たっぷりに過ごしたい、と思わずにはいられません。

あっという間に読み終わってしまう本当に短い物語ですが、目に水分がジワッときて、心がほわっとするお話です。

文/多部未華子


今回のオススメ本はこちら!

               江國香織 著  ¥460(税別)/新潮文庫 

 『つめたいよるに』  

キスのうまい犬のデュークが死んだ。翌日に乗った電車で、私はハンサムな男の子に巡り合った・・・。出会いと別れの不思議な一日を綴った「デューク」を含む、珠玉の21編を収録した短編集。

多部未華子
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多部未華子
1989年東京都生まれ。女優。2005年に映画『HINOKIO』と『青空のゆくえ』で第48回ブルーリボン賞新人賞を受賞するなど、10代から存在感のある演技で幅広く活躍。その後、NHK連続テレビ小説「つばさ」主演をはじめ、さまざまな作品に主演。主演ドラマ「私の家政夫ナギサさん」(TBS)が放送中。
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