思い立ったらすぐに行ける!都内の“知る人ぞ知る”名美術館

こんばんは。アートテラーのとに~です。 先日、森美術館で開催中の《塩田千春展:魂がふるえる》を訪れてきました。ベルリンを拠点に、世界各国で精力的に活動を続けるアーティスト塩田千春さんの過去最大規模となる個展です。
観終わってから少し経ちますが、塩田さんの代名詞ともいうべき赤や黒の糸が空間全体にびっしりと張り巡らされたインスタレーション作品のあの圧倒的な光景を思い返すたびに、魂がふるえています。いやぁ、スゴい展覧会でした。アートテラーという仕事柄、ボキャブラリーは豊富なほうだと自負しておりますが、本当にスゴいものを観ると「スゴい!」という感想しか出てこないようです(笑)。
なお、会場は基本的に写真撮影OK。ぜひ、皆様にもスマホやカメラを片手に、塩田千春ワールドを体験して欲しいと思っております。 

さてさて、今回のご質問を紹介いたします。あさみさん(商社事務・27歳)からのご質問。
「都内でオススメの美術館は?またその理由も教えてください」
そういえば連載を1年半以上続けていますが、意外と都内の美術館にしぼって紹介したことはなかったですね。もちろん森美術館もオススメなのですが、あえて今回はあまりメディアに露出しない、とっておきの名美術館を紹介いたしましょう。

なぜソコに!? ベラスケスの再来と称された画家の美術館

JR新小岩駅の南口から歩くこと約10分。住宅街のど真ん中に、一見するとただの一軒家にしか思えない美術館があります。その名も、杉山美術館。
“最後の印象派”と呼ばれたスペインの天才画家ホアキン・トレンツ・リャド(1946~1993)の原画作品を常設で観ることの出来る日本で唯一の美術館です。

※館内は写真撮影禁止です。特別に許可をいただいて撮影しています。

リャドに魅了された杉山岳久館長が、その原画をより多くの人に見てもらいたいと2009年に開館させました。北は北海道から南は九州まで、日本中からリャドのファンが集まるリャドの聖地のような美術館です。

ホアキン・トレンツ・リャド《ヴィラヴェルディーの池》

リャドの絵画を語る上で欠かせないのが、「スプラッシング」という技法。作品を至近距離で観ると、かなり荒々しいタッチで描かれているのがわかります。
しかし、そんなにも激しい筆遣いで描かれているのにも関わらず、ある一定の距離を置くとピタッと焦点が合って、おだやかな風景画にしか見えないのです。この不思議な観賞体験は、リャドマジックとしか言い表しようがありません!

ちなみにとっておきの美術館ゆえ、主催するアートツアーで何度か隠し玉のように紹介していますが、約9割の参加者さんがリャドの作品に魅了され、リャドのファンになって帰っていきます。
リャドのファンが集まる美術館は、リャドのファンを生み出す美術館でもあるのです。

全女子必見のミュージアム!

祐天寺の駅から歩くこと約5分。杉山美術館と同じく、住宅街のど真ん中にあるのが、アクセサリーミュージアム。
コスチュームジュエリー研究の第一人者である田中元子氏の自宅を改装した、世界でも類を見ないアクセサリー専門のミュージアムです。館内には、アクセサリー(コスチュームジュエリー)がみっちりと展示されています。その数は、実に、約3000点以上!

※館内は写真撮影禁止です。特別に許可をいただいて撮影しています。

アールデコ・アールヌーボーの時代から始まり、ビクトリアン、オートクチュール、プレタポルテ、そして、現代に至るまで、アクセサリーの歴史と変遷がわかるように展示されています。思わずため息をもらしてしまうようなゴージャスなアクセサリーが数多く展示されているのはもちろんのこと、昭和40年代に流行ったお手頃価格なアクセサリーやドルチェ&ガッバーナのアバンギャルドなアクセサリーなど、実に多種多様なアクセサリーが展示されています。

※館内は写真撮影禁止です。特別に許可をいただいて撮影しています。

また、ミュージアムに併設されているショップには、田中館長が国内外を飛び回って手に入れた今では入手が難しいヴィンデージコスチュームジュエリーや新作トレンドコスチュームジュエリーが多数取り揃えられています。

自分は男なので、その相場がよくわかっていないのですが、アートツアーで紹介した際、女性の参加者さんたちは口を揃えて「えっ、こんな値段でいいんですか?!」と驚かれていました。

なお、展示を観ずにショップだけを無料で利用することも可能。意外な掘り出し物に出合えるかも。
ちなみに8月はまるまる夏休みなので要注意です。

美術品よりも〇〇をオススメする美術館

つくばエクスプレス六町駅のほど近くにある六町ミュージアム・フローラ。2012年にオープンした美術館です。
まず目を惹くのが、そのユニークな建物。外観もインパクトがありますが、中に入るとさらに驚かされます。

すり鉢状の建物の屋根は緑化屋根となっており、そしてその屋根が中庭と一体化しているのです(←この説明で伝わる気がしないので、写真を見てください!)。
設計したのは、横河健さん。日本を代表する建築家の一人です。

そんな建物以上に驚かされるのが、入館料。たった¥300と驚異のコスパです。もちろん入館料が安いからといって、作品がショボいなんてことはありません。コレクションは主に日本美術。伊藤若冲や葛飾北斎といった江戸美術作品から現在日本画壇の第一線で活躍する画家の作品まで、幅広く取り揃えられています。

ちなみに、初めて訪問した時にもっとも驚かされたのが、館主の口から飛び出したこんな発言。「うちの美術館の一番のウリは、2階の休憩スペースで飲めるセルフコーヒー(¥100)なんです」なんでも、かなり良いコーヒーマシンを購入したとのこと(笑)。「で、二番目のウリが居心地で、美術品は・・・三番目くらいですかね」
美術よりも素晴らしい(?)コーヒーと居心地を、ぜひ味わってみてください。

皆さまからの質問大募集!

「デートにピッタリの美術館は?」「カフェがオススメの美術館って?」という具体的な質問から、「現代アートって、何が面白いの?」「何であんなに美術品って高いの?」「ピカソってすごいの?」という誰にも聞けなかった質問まで。GINGERwebの問い合わせフォームから何でもお寄せくださいませ。わかりやすく、お答えします。


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美術の魅力をわかりやすく、面白く伝える、世界でただひとりの”アートテラー”。よしもと芸人時代に培った話力と笑いのセンスで、アートを語ります。日本を代表する数々の美術館で、公式トークガイドを担当。著書『東京のレトロ美術館』(株式会社エクスナレッジ)『ようこそ! 西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社)が好評発売中。
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