今こそ思う。嘘がないことは、もっとも大事な誠意

13年間レギュラー出演していたテレビ番組を3月末に卒業し、現在は医師としてのキャリアにウエイトを置いている西川史子さん。コメンテーターとして活躍してきたが故に、自分の思いを伝えることに関して、決めていることがあるといいます。その、今どきの「気遣い」事情について、西川さんに今回は伺ってみます。

嘘がないことはもっとも大事な誠意。
そして間違ったら謝罪も必要

自分の意見や気持ちを人にどう伝えるか、これは意外と難しい。特に、コロナ禍の今、人と直接会って話すことが以前よりも減り、メールやSNSでの書き込み、オンラインでのコミュニケーションも多くなるなかで、思わぬ誤解も生じがちだ。「そんなつもりで言ったわけではなかったのに・・・」「プラスの意味で言った言葉だったのに・・・」と、思っていた意図とは違う受け取り方をされてしまったり、逆に「なんだか攻撃されている気がする・・・」と、こちら側が傷ついてしまうこともある。

医師であり、タレントでもあり、3月までレギュラー番組でコメンテーターを務めていた西川史子さん。歯に衣着せぬ発言が人気を集めていたが、番組内でどう発言するか悩むことも多かったという。

「もともとタレントではなく、医師として仕事をしていたので、喋りのプロでも何でもありませんでした。そんな状況で番組に参加し、自分の発言がいい意味でも悪い意味でも話題になってしまう怖さを感じることは、正直多かったですね。私には歯に衣着せぬ発言を求められているのもわかるので、そのあたりのバランス感はちょっと難しかったですね。でも、1つだけ決めていたことがありました。それは、“嘘はつかない”ということです。少し声を張るような言い方になることはあったにせよ、内容に関しては、自分のなかで嘘がない、これは絶対守ろうと思っていました。何か意見を言うときに、嘘があると、そこに信頼は生まれません。万が一、批判が起きてもその発言に自ら説明ができないことは言わない、と決めていました。たとえ、気遣いのためであっても、嘘はなるべくないように、と思いながら発言をしていました。これは、プライベートでも同じスタンスですね」

そんな真摯な姿勢で臨んでも、意見の相違などから、批判を受けることもあったという。そんなとき、西川さんが重要視していたのは、自分の意見を客観的に見ること。自分の発言が客観的に見て、間違っていたときには、無条件に非を認める、“謝る”と決めていたという。

「時事ネタだと、事件が発生したときと時間が経過していろんなことがわかってきてからでは、真実が変わってくることがありますよね。そういう場合は、前に言った発言を撤回して非を認めるというか、“間違っていました! ごめんなさい”と謝ることを忘れない、と決めていました。自分の発言って一度してしまうと、引くに引けない状態になりがち。でも、そこで意地を張ってしまうと事態はどんどん悪化してしまう。非を認めるのは勇気がいるかもしれませんが、いい関係を築くためには必要なことだと思うのです」

自己満足になりがちな気遣い。本当に相手が望んでいるかを考えることも必要

西川さんは今、本業の医師としての仕事にウエイトを置いているという。

「普通にクリニックで診察をしています。タレントのお仕事も好きですが、医療も進化していて、もう一度現場できちんと向き合いたいな、学びたいなという気持ちが芽生えました。あと、昨年胃腸炎になって、自分の体をいたわることも大事だなと思い知らされるシーンがたくさんあって。私自身、今まで大きな病気をしてきたことがなかったので、自分の体を過信していたんですね。でも、胃腸炎を経験したことで、健康っていろんなところに働きかけるんだということを実感したんです。例えば体調が悪いだけで、出会う人に余計な気遣いをさせてしまうんですよね。食事をしていても、あまり食べられない人と一緒だと、気を遣ってしまいますよね。健康って、人間関係を円滑にするためにも大事なことなんだな、って本当にしみじみ思いました」

今は、体重も体調も以前の状態に戻り、いい健康状態をキープできているという西川さん。

「周囲の対応にも、学びがたくさんたくさんありました。なかでもうれしかったのは、いい距離感を保ってくれたこと。胃腸炎だったので、具合が悪いときは気持ち悪くて話ができないこともあったのですが、そんな状況を察知し、お見舞いなどもこちらの様子を見て、“今はやめておこう”と考えてくれる友人がとても多かったのです。気遣いでお見舞いしなくちゃと思いがちですが、患者側は体調が悪かったり、いつもと違う見た目で人に会いたい気分でないときもある。そんなときに、いい距離感で接することって本当にありがたいことなんだと、心の底から思いました」

自分が考える思いやりや気遣い=相手が望んでいることとは限らない。だからこそ、アクションを起こす前に、相手はどう感じるのか、というひと呼吸が重要なのかもしれない。
「例えば、今の喫煙事情もそうですよね。医師の立場としては推奨はできませんが、でも、吸われている方は肩身が狭い思いもして、配慮をしているケースが多い。単に非難するのではなく、そこに思いやる気持ち、気遣いが、存在しているかが大事だと思うのです。人とのコミュニケーションが殺伐としがちなコロナ禍だからこそ、その部分を大事にしていきたいと思いますね」


インタビュー/伊藤まなび
イラスト/IORI KIKUCHI

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